台風が直撃した朝、強風の中を出社しようとして転倒した。飛来物にぶつかった。電車が止まってタクシーに乗り換えたら事故に遭った——こういうケースで「これって労災になるの?」と疑問に思う人は多い。
出典:Yahoo!ニュースによると、台風通過後に通勤中の負傷者が相次いでいることが報告されています。
結論から言う。台風による通勤中のケガは、労災として認定される可能性がある。
現役社労士として、認定の条件・会社の義務・申請手順を順番に解説する。
台風通勤中のケガが労災になる条件
まず「通勤災害」とは何かを押さえておく。
労働者災害補償保険法では、住居と就業場所の往復を「通勤」と定義している。この経路上で起きた負傷は、原則として通勤災害の対象になる。台風という自然現象が原因であっても、その点は変わらない。
通常の通勤経路で台風によって負傷した場合、労災認定の対象になり得る。
認定されやすいケース
以下のケースは、認定される可能性が高い。
- 通常の通勤経路を歩いていて転倒・負傷した
- 台風による飛来物に当たってケガをした
- 強風で転倒して骨折などした
- 道路冠水などで迂回せざるを得ず、その経路でケガをした
迂回については「合理的な経路」かどうかがポイントになる。大回りでも、通常の経路が使えない状況だったと説明できれば問題ない。
認定が難しいケース
一方、以下の場合は認定が困難になる。
- 会社から明確に「出社禁止」の指示が出ていた
- 通勤とは無関係の場所・目的地でのケガ
- 本人の重大な過失によるもの(信号無視など)
「出社禁止の指示があったのに来た」という状況は、そもそも「通勤」に該当するかどうか自体が問われることになる。
会社には安全配慮義務がある
台風時に「とにかく来い」と言える会社は存在しない。法律上、会社は労働者に対して安全配慮義務を負っている(労働契約法5条)。
危険な状況での出社を強要することは、この義務に反する。
会社が取るべき対応
まともな会社なら、台風接近時に以下を検討する。
- 早めの休業・休校判断
- 在宅勤務への切り替え
- 出勤時間の繰り下げ
- 早退・直帰の許可
これらの対応を取らずに「来い」と言い続けた結果として労働者がケガをした場合、会社は損害賠償責任を問われることもある。
労働者の側にも権利がある
気象警報が出ているような状況では、出社を断ることも選択肢に入る。
ただし「無断で行かなかった」は別の話だ。会社への事前連絡は必ずする。状況を説明したうえで「危険なので行けない」と伝えること。その通話やメッセージ自体も証拠になる。
実際にケガをした場合の労災申請手順
「転んだ」「ぶつかった」——まずやることは一つだ。
病院で治療を受けること。それが最優先。
その後、以下の流れで申請を進める。
必要書類と手続き
通勤災害の申請に必要なものは主に以下のとおりだ。
- 通勤災害用の請求書(様式第16号の3・16号の4など)
- 通勤経路を示す地図(自宅〜会社の経路)
- 医師の診断書
- 目撃者がいれば証言・連絡先
会社の人事・総務に相談するのが一般的なルートだが、会社が非協力的な場合は直接動ける。
会社が申請書類に判を押してくれない、協力してもらえない——そういうケースも実際にある。その場合でも、労働者は労働基準監督署に直接申請できる。会社のハンコがなければ申請できない、は誤解だ。
よくある疑問 Q&A
- Q: 会社が「台風でも出社しろ」と言った場合はどうすべきですか?
- A: 身の安全を最優先してください。気象警報が出ている場合は、出社を断ることも可能です。ただし、事前連絡は必須です。
- Q: 台風で電車が止まり、タクシーでケガをした場合も労災になりますか?
- A: 通勤のための合理的な経路変更であれば、労災認定の可能性があります。領収書などの証拠を保管しておきましょう。
- Q: 労災認定されると、どんな補償が受けられますか?
- A: 治療費の全額、休業補償(給料の約8割)、障害が残った場合の障害補償などが受けられます。
すぐやること 3つ
- ケガをした場合は、まず病院で治療を受ける
- 発生状況を詳しくメモに残す(時間・場所・原因など)
- 会社の人事部門または労働基準監督署に相談する
まとめ
- 台風通勤中のケガは、通常の経路上であれば労災認定される可能性が高い
- 会社には安全配慮義務がある。危険な出社の強要は違法になり得る
- 身の安全を優先して出社を断ることは可能。ただし事前連絡は必須
- 会社が非協力的でも、労働基準監督署に直接申請できる
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