飲食を辞めたいのに人がいない…辞めていい?

紛争解決・権利行使

深夜0時、閉店作業を終えながら「明日も6連勤か」と頭をよぎった。辞めたい。でも、言い出せない。「自分が抜けたら店が回らない」——その罪悪感が、ずっとのどに刺さったままだ。

結論から言います。人がいなくても、辞めていい。飲食店の人手不足は、あなたが背負うべき問題ではない。

  • 人手不足でも2週間で辞められる法的根拠
  • 「損害賠償する」「迷惑だ」という引き止めへの対処法
  • 今日からできる退職への具体的な動き方

飲食の人手不足は、あなたのせいじゃない

人員を確保するのは使用者(経営者)の責任だ。労働基準法にも労働契約法にも「従業員は職場の人員を維持する義務がある」とは一切書いていない。

「自分が辞めたら店が回らない」という状況は、雇用計画の失敗だ。それは経営側の問題であり、あなたの問題ではない。

厚生労働省の雇用動向調査(2023年)によると、宿泊業・飲食サービス業の離職率は約24%。4人に1人が1年以内に辞めている業界だ。人がいなくなることは、その職場の構造問題だ。1人の従業員が抱える責任ではない。

【実践メモ】「自分が辞めたら迷惑」という気持ちは分かる。でもここだけは認識してほしい。人員配置に責任を持つのは経営者だ。あなたではない。

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民法627条:2週間前に告げれば辞められる

これは動かしようのない法律だ。

民法627条1項は「雇用の期間を定めなかったときは、いつでも解約の申入れをすることができる」と定めている。申し出から2週間が経過すれば、雇用は終了する。これが法律の答えだ。

「うちの就業規則は1ヶ月前に申告が必要」と言う店長がいる。ただし、予告期間が民法の定める2週間を著しく超える場合は公序良俗(民法90条)に反する可能性がある。実務では、2週間前の申し出は法的に有効と判断される。

つまり、引き止められても2週間後には辞められる。これは権利だ。

【実践メモ】辞意を伝えるのは口頭より書面が確実だ。内容証明郵便で「令和○年○月○日付けで退職を申し出ます」と送れば、申し出日が記録に残る。費用は1,000円程度だ。

「損害賠償する」という脅しは、ほぼ機能しない

「急に辞めたら損害賠償請求する」と言ってくる店長がいる。結論から言う。通常の退職では、ほぼ機能しない。

退職による損害賠償が認められるのは、予告なし・代替不可能な特殊技能・競業他社への即日転職・業務妨害というような極限の事例に限られる。「人手不足の中で2週間前に辞めます」と告げて退職したスタッフへの損害賠償が認容された裁判例は見当たらない。

ただし、有期雇用(契約社員・パートの期間設定あり)の場合は扱いが異なる。やむを得ない事由がない限り、契約期間中の退職は民法628条のリスクが生じる。自分の契約形態は必ず確認すること。

【実践メモ】脅しに怯える必要はない。ただし退職日・申し出日・やり取りの内容は記録を残すこと。スマホのメモアプリで日付と内容を書いておくだけでいい。

どうしても言い出せないなら、退職代行という選択肢がある

「直接言えない」「上司が怒鳴る」「ハラスメントが怖い」——そういう場合は、退職代行サービスを使う方法がある。

選ぶなら「弁護士監修」か「労働組合運営」のサービスにすること。労働組合系は団体交渉権を持つため、有給消化や未払い賃金の交渉まで行える。費用は2〜5万円程度だ。

「お金がもったいない」と思うかもしれない。でも、辞めることで得られるもの——体の回復、睡眠、次のキャリア——の価値と比べてほしい。

【実践メモ】退職代行を使うことに罪悪感を持つ必要はない。労働者には退職の自由がある。その自由を行使する手段として使うだけだ。

よくある質問

Q. 退職届を受け取ってもらえない場合はどうする?

内容証明郵便で送れば、受け取りを拒否されても法的効力が発生する。申し出日の証拠が郵便局に残るため、「言った・言わない」の水掛け論にならない。

Q. 退職前に有給を消化させてもらえない?

有給休暇を取る権利は労働基準法39条で保障されている。退職前の有給消化は法的に認められており、使用者は原則として拒否できない。時季変更権は「退職後に変更する先がない」ため、退職前には行使できないと解されている。

Q. 急に辞めたら給料をもらえない?

給料は働いた分の賃金請求権として発生する。退職後でも請求できる時効は原則5年(労働基準法115条・当面3年の経過措置あり)だ。支払いを拒む行為は労働基準法24条(賃金全額払いの原則)違反にあたる可能性がある。

Q. 「損害賠償する」と言われ続けている。どこに相談すればいい?

最寄りの労働基準監督署か、都道府県の労働局総合労働相談コーナーに相談できる。無料で、匿名でもOKだ。電話番号は「都道府県名+労働局」で検索すればすぐ出る。

すぐやること3つ

  1. 自分の雇用形態(無期・有期)と契約書を確認する——有期か無期かで動き方が変わる
  2. 退職の意思を記録に残す——スマホのメモ・メール・内容証明のいずれか
  3. 「辞めます」と言える日を決める——2週間後の日付を今日決める

まとめ

  • 人手不足は経営者の問題であり、あなたが負うべき責任ではない
  • 民法627条により、2週間前の申し出で退職できる
  • 損害賠償の脅しは、通常の退職ではほぼ機能しない
  • 有給消化・賃金請求権は退職後も法律で守られている
  • 言い出せない場合は退職代行という選択肢がある

次のステップ

辞め方そのもので迷ったら、退職代行の種類と選び方を社労士がまとめた記事が役に立ちます。→ 退職代行とは?3種類と選び方を社労士が解説

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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