「退職金が廃止されるかもしれない」。そんなニュースが話題になっています。
中高年社員は強く反発し、若手は歓迎する傾向があるという、世代間で真っ二つに割れた実態が報じられています。(出典:Yahoo!ニュース)
社労士として、このニュースの「本当の意味」を解説します。感情論ではなく、法律と制度の話として聞いてください。
退職金廃止は「合法」だが、落とし穴がある
まず結論から言います。会社が退職金制度を廃止すること自体は、違法ではありません。
ただし、条件があります。
退職金制度は、就業規則や労働協約に定められていることがほとんどです。これを変えるには、労働者にとって不利益な変更になるため、原則として労働者の同意が必要です。
特に問題になりやすいのが、「既存社員と新入社員で扱いを分ける」ケースです。
新規採用者にだけ適用するなら、既存社員の既得権には触れません。一方、在籍中の社員に遡及して適用しようとすると、法的なハードルが一気に上がります。
なぜ若手は「歓迎」するのか?制度の構造的な問題
若手社員が退職金廃止を歓迎する理由は、感情的なものではありません。退職金制度が「長く勤めた人ほど有利」な設計になっているからです。
多くの退職金制度は、勤続年数に比例して支給額が大幅に増える仕組みです。転職が当たり前の時代に、この設計は若い世代には響きにくい。
代わりに求められているのが、毎月の基本給への上乗せや、確定拠出年金(DC)への移行です。これなら転職してもお金が持ち運べます。
ただし注意が必要です。「退職金廃止+基本給アップ」でも、総額が減っているケースがあります。
数字だけ見て判断せず、計算してみることが重要です。
よくある疑問 Q&A
- Q:会社から「退職金制度を変更する」と言われました。拒否できますか?
- A:個人として拒否する権利はありますが、会社が合理的な理由と代替措置を示した上で変更した場合、裁判所が変更を有効と認めることがあります。まず就業規則の変更内容を確認し、不明点は組合や社労士に相談してください。
- Q:長年勤めてきた分の退職金は守られますか?
- A:制度変更前に積み上げた分(既得部分)は、原則として保護されます。「これまでの分はゼロにする」という変更は、法的に無効になる可能性が高いです。
- Q:確定拠出年金への移行を提案されました。どう考えればいいですか?
- A:一概に悪いとは言えません。転職する可能性が高い方、投資に関心がある方にはメリットがある場合もあります。ただし運用リスクは自己負担になるため、老後の受取額が保証されない点は理解しておく必要があります。
すぐやること 3つ
- 就業規則・退職金規程を確認する。会社に請求すれば必ず開示してもらえます。
- 退職金の現時点での「積み上げ額」を把握する。人事部に確認するか、規程の計算式で試算しましょう。
- 会社から変更の説明があったら、書面で内容を保存する。口頭の説明だけで同意書にサインしないこと。
まとめ
- 退職金廃止は違法ではないが、既存社員への適用には厳格な要件がある
- 若手の「歓迎」は感情ではなく、制度設計の構造的な問題が背景にある
- 「廃止+基本給アップ」が得かどうかは必ず自分で計算して判断すること
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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