退職金の前払い化、損する?社労士が労働者目線で解説

解雇・退職

「退職金をなくして、その分を毎月の給与に上乗せします」——こう言われたとき、あなたはどう判断しますか?

目先の手取りは確かに増える。でも老後資金が手元から消えるリスクがある。

現役の社会保険労務士として、この「退職金の前払い化」を労働者の立場から正直に解説します。

退職一時金を廃止し、毎月の給与や確定拠出年金(DC)に振り替える動きが広がっています。(出典:Yahoo!ニュース

なぜ会社は前払い化を選ぶのか

会社側にも、一定の理由はあります。

退職金の積み立てと運用は、会社にとって重い財務負担です。低金利が長く続いた環境では、積み立てた資金を運用して増やすことが難しくなりました。

加えて、終身雇用が崩れた今、「長年勤めた人に退職金」という設計が現実に合わなくなっています。転職が普通になった時代には、早めに受け取れる前払いのほうが合理的という考え方も成り立ちます。

「会社がズルをしている」と決めつけるのは早計です。ただし、労働者にとってのリスクは別の話として存在します。

📌 ポイント:前払い化は「会社がズルをしている」とは一概に言えません。ただし、労働者にとってリスクが生まれることも事実です。

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労働者が知るべき3つのリスク

リスク1:使い切ると老後資金がゼロになる

毎月の給与に上乗せされると、そのお金は生活費に流れやすいです。

退職時に「まとまったお金がある」という安心感は、前払いでは得られません。

意識的に積み立てる強い意志がない限り、定年を迎えたとき手元に何も残らない可能性があります。

リスク2:税金と社会保険料が増える

退職金には「退職所得控除」という大きな税優遇があります。勤続年数が長いほど控除額が増え、税負担が大幅に軽くなる仕組みです。

一方、給与に上乗せされると、所得税・住民税・社会保険料がそのままかかります。受け取る金額が同じでも、手元に残る額は確実に減ります。

⚠️ 注意:「月3万円上乗せします」と言われても、税・社保を引かれると実際の増加分は2万円程度になるケースが多いです。

リスク3:DC(確定拠出年金)は使い勝手に制約がある

企業型確定拠出年金(DC)への振り替えは、税優遇がある分まだマシです。

ただし、原則として60歳まで引き出せないルールがあります。生活が急に苦しくなっても取り崩せません。

また、DCは自分で運用方法を選びます。放置すると元本割れするリスクもあります。知識がないまま始めると、積み立てた資産が目減りすることがあります。

前払い化されたとき、自分でできる3つの備え

①iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

会社のDCへの上乗せがない場合、あるいは掛金が少ない場合は、自分でiDeCoに加入できます。

掛金が全額所得控除になるため、節税しながら老後資金を積み立てられます。

月額の上限は会社のDC加入状況によって変わります。まず人事・総務に確認してみましょう。

✅ やること:会社に「企業型DCへの加入・掛金額」を確認する。iDeCoとの併用可否も聞いてみましょう。

②NISA(少額投資非課税制度)で積み立てる

上乗せされた給与を老後資金に回すなら、NISAが選択肢になります。

2024年から新NISAに移行し、年間360万円まで非課税で投資できます。

老後を見据えた運用の基本は、長期・積立・分散です。短期の値動きに振り回されず、淡々と積み立て続けることが重要です。

③制度変更の内容を書面でもらう

退職金制度を変更する場合、会社は就業規則や退職金規程を正式に変更する手続きが必要です。

口頭だけで「退職金をなくします」と言われた場合は要注意です。書面での確認を求める権利があります。

📌 ポイント:退職金は労働条件のひとつです。不利益変更には合理的な理由と、原則として労働者の同意が必要です(労働契約法第10条)。

よくある疑問 Q&A

Q: 会社が一方的に退職金を廃止することはできますか?
A: 簡単にはできません。就業規則の不利益変更には「合理的な理由」が必要で、労働者への十分な説明と代替措置も求められます。前払い分が経済的に同等かどうかが重要なポイントです。
Q: DCとiDeCoは何が違いますか?
A: DCは会社が掛金を出す制度です。iDeCoは自分で掛金を出す個人型の制度です。どちらも60歳まで引き出せない点は共通ですが、掛金の上限額が異なります。
Q: 前払い化を個人で断ることはできますか?
A: 会社の制度変更の場合、個人で拒否するのは難しいことが多いです。ただし、不利益変更として争える場合があります。内容が不満なら、まず労働組合や労働相談窓口に相談することをおすすめします。

すぐやること

  1. 自分の会社の退職金制度を確認する(総務・人事に問い合わせ)
  2. iDeCo・新NISAの口座開設を検討する(老後資金の自衛手段として)
  3. 制度変更の通知があれば、必ず書面でもらう(口頭だけはNG)

次のステップ

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まとめ

  • 退職金の前払い化は、税・社保の面で労働者にとってデメリットが生じやすい
  • iDeCoやNISAを活用し、自分で老後資金を備えることが重要になっている
  • 会社から制度変更の説明を受けたら、書面確認と専門家への相談を忘れずに

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Andre Taissin on Unsplash

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