入社1ヶ月で辞めていい?社労士が答える退職の権利

採用・試用期間

朝、玄関で靴を履く手が止まる。電車の中で「入社1ヶ月 辞めたい」と検索している。職場では笑顔を作っているのに、帰り道は毎日泣きそうだ。

結論から言います。入社1ヶ月でも辞めていい。それは法律が保障した権利です。

この記事で分かること:

  • 入社1ヶ月で退職することが法律上、完全に合法である根拠
  • 試用期間中でも辞められる具体的な理由
  • 「辞めたいと言い出せない」状況を動かす最初の一手

入社1ヶ月で辞めたいのは、おかしくない

厚生労働省のデータがある。大卒で入社1年以内に退職する人は約10〜12%だ。3年以内になると32%を超える。3人に1人が3年以内に辞めている。これが現実だ。

「こんなにすぐ辞めるなんて甘えだ」という声は聞こえてくる。でもその声は、あなたの体と心より大事じゃない。

眠れない。食欲がない。会社の前で足がすくむ。体が出しているサインだ。嘘をつかない。

【実践メモ】 今の状態を紙に書き出してほしい。「眠れない」「食べられない」「毎朝泣いている」など体と心の変化を記録する。後で専門家に相談するときの材料になる。

民法627条が「2週間で辞める権利」を守っている

正社員(期間の定めのない雇用)の退職は、申し出から2週間で成立する。民法627条第1項にそう書いてある。

就業規則に「1ヶ月前に申し出ること」と書いてある会社は多い。ただし、この規定が民法627条を上回るかどうかは争いがある。この規定を盾に退職そのものを無効にすることはできない。

退職の意思を伝えた。2週間が経過した。それで法律上の雇用契約は終わる。

引き継ぎを考えれば早めに伝えた方がスムーズなのは確かだ。でも「法律上、あなたに権利がある」という事実は変わらない。

【実践メモ】 退職の意思は書面でも伝えると確実だ。日付・氏名・退職希望日を書いた一枚で十分。「一身上の都合により」で始まれば形式は問わない。

「試用期間中は辞められない」は間違いだ

よくある誤解がある。「試用期間中だから辞めさせてもらえない」というものだ。これは違う。

試用期間とは、会社が「本採用するか判断する期間」だ。同時に労働者にとっても「この職場でやっていけるか確認する期間」でもある。雇用契約はすでに成立している。退職の権利は試用期間中も変わらずある。

労働基準法第15条第2項にはこう書いてある。求人票や面接で伝えられた労働条件と実際が違うなら、即時に労働契約を解除できる。つまり即日退職だ。

例えば「残業なしと聞いていたのに毎日2時間ある」「転勤なしのはずが初日から転居を求められた」というケースなら、この条文が使える。

【実践メモ】 入社前に受け取った求人票・雇用条件通知書は手元に残しておく。実際の働き方との違いがあれば書き出しておく。いざというときに使える。

「申し訳ない」という気持ちの正体

辞めたいのに言い出せない人の多くが、「申し訳なさ」でがんじがらめになっている。

教育してもらった。仕事を覚えていないまま去るのは無責任だ。この気持ちは、真剣に向き合ってきた証拠だ。大切にしていい。

ただ、一つだけ確認してほしい。退職の申し出は、法律上の権利の行使だ。権利を使うことは、謝罪すべきことではない。

どうしても直接言い出せないなら、退職代行という選択肢がある。自分の口で言わなくていい。それだけで踏み出せる人も多い。

【実践メモ】 退職を伝えることへの恐怖が強いなら、一人で抱え込まないでほしい。社労士・弁護士・退職代行への相談は弱さじゃない。合理的な判断だ。

よくある質問

Q. 入社1ヶ月で辞めると次の転職に響くか?

「短期離職」として職歴に残る。正直に言う。ただし体や心が壊れた状態で続けることは別のリスクだ。早期に離れる方が長期的には傷が浅い。次の面接では「合わないと自分で判断できた」をそのまま話せばいい。

Q. 「損害賠償を請求する」と言われたらどうする?

ほぼ脅しだ。退職という法律上の権利を行使したことへの損害賠償を認めた裁判例はほとんどない。裁判所は退職の自由を強く保護している。書面で請求が届いた場合は、速やかに弁護士か社労士に相談する。

Q. 試用期間中に退職しても給与は払われるか?

働いた分の給与は必ず受け取れる。試用期間中に退職しても、実際に働いた日数分の賃金は支払わなければならない。払わなければ労働基準法違反だ。未払いなら労働基準監督署に申告できる。

Q. 就業規則に「1ヶ月前申告」とあるが、守らないといけないか?

民法627条第1項により、正社員は申し出から2週間で退職できる。就業規則の「1ヶ月前」規定がこれより優先されるかは争いがある。ただし、この規定を盾に退職そのものを2週間以上引き延ばすことはできない。

今すぐやること3つ

  1. 体と心の状態を書き出す:眠れているか、食べられているか。今日の状態を言語化する。
  2. 入社前の書類を確認する:求人票・雇用条件通知書を取り出す。実際の労働条件との違いがあれば書き出しておく。
  3. 相談先を一つ調べる:退職代行・社労士・弁護士のどれか一つ、今日中に窓口を確認する。動く準備だけでいい。

まとめ

  • 入社1ヶ月で辞めたいと感じることは甘えではない。大卒の32%以上が3年以内に退職している
  • 民法627条により正社員は申し出から2週間で退職できる。試用期間中も同じ権利がある
  • 入社前の労働条件と実際が違うなら、労働基準法第15条第2項により即日退職も認められる

次のステップ

辞め方そのもので迷ったら、退職代行の種類と選び方を社労士がまとめた記事が役に立ちます。→ 退職代行とは?3種類と選び方を社労士が解説

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Daniel Hansen on Unsplash

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