退職代行というサービスを調べてみた。使おうかと思った。でも「使って後悔した」という言葉が引っかかって、踏み出せないでいる。
この記事を読んでいるのは、たぶんそういう人だ。
結論から言う。退職代行を使って後悔する人は少数だ。後悔が生まれる原因のほとんどは「業者の選び方のミス」だ。そして、使わずに消耗し続けた後悔は取り返しがつかない。
- 後悔しやすい3つのパターンと、その正体
- 民法627条が保証する「辞める権利」の絶対性
- 後悔しないための業者の選び方(弁護士法72条との関係)
退職代行を使って後悔した声を解体する
後悔の声を分解すると、3つのパターンに集約される。
①「お金がもったいなかった」。退職代行の料金は、一般企業型で2万円前後、労働組合型で2〜3万円程度、弁護士型で5万〜10万円台だ。ただ、この金額で「明日から出社しなくていい」が実現した人の多くは、高くなかったと感じている。
②「会社から直接連絡が来た」。退職代行を入れても、会社が本人に電話することはある。出る義務はない。無視していい。退職代行業者に「連絡が来た」と伝えれば、窓口として対応してもらえる。
③「逃げたと自分を責めた」。これが一番多い。でも逃げることに、法律は何も言っていない。むしろ辞める権利を保証している。
後悔の中身を掘ると、多くは「本当に辞める権利があったのか」という不安に行き着く。
【実践メモ】会社からの直接連絡への対応は、退職代行業者に委ねていい。契約前に「本人への連絡を遮断する旨を会社に伝えてもらえるか」を確認しておくと、余計な消耗を防げる。
民法627条:辞める権利に会社の承認はいらない
民法627条第1項に、こうある。「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」。
2週間前に申告すれば辞められる。会社の許可はいらない。承認も不要だ。
「引き継ぎが終わるまで待て」「後任が決まるまでダメだ」——この主張に法的根拠はない。
退職は「申告」だ。「申請」ではない。申請は相手の承認が要る。申告はいらない。この違いが全てだ。
退職代行はこの申告を代わりに行うサービスだ。法的に何も問題はない。
【実践メモ】退職届を内容証明郵便で送ると、会社に届いた日付の証拠が残る。退職代行業者によってはこの手続きをサポートしてくれる場合がある。依頼前に確認しておくといい。
弁護士法72条と業者選びの失敗が後悔を生む
後悔の多くは業者の選び方にある。知っておくべき法律がある。
弁護士法72条は、弁護士でない者が法律事務を業として行うことを禁じている。一般企業が運営する退職代行は「連絡の代行」しかできない。交渉権がない。
有給消化の調整、未払い残業代の請求、退職日の変更——こういった交渉が必要な場面では、一般企業型では動けない。「交渉してもらえなかった」という後悔が生まれるのはここだ。
労働組合が運営する退職代行は、団体交渉権を持つ。有給消化や退職日の調整など、一定の交渉ができる。弁護士が運営するタイプは、法的な交渉まで対応できる。
状況に合わない業者を選ぶと後悔する。それだけの話だ。
【実践メモ】有給を消化したい、未払い残業代がある、退職日を動かしたい——このどれかに当てはまるなら、労働組合型か弁護士型を選ぶ。一般企業型は「連絡を代わりにしてほしいだけ」という場合向けだ。
「使わなかった後悔」は取り返しがつかない
退職代行を使う後悔を心配する人は多い。でも逆側も見てほしい。
言い出せないまま1年が経った。体が壊れた。眠れない日が続いた。うつ病と診断されて半年以上働けなくなった。こういう話は、労働相談の現場では珍しくない。
健康を失ってから「あのとき退職代行を使えばよかった」と後悔しても、失った時間は戻らない。
退職代行の費用は最大でも10万円程度だ。半年働けない状態になれば、失う収入はその何十倍にもなる。損得で言えば、早く辞めたほうが圧倒的に得だ。
「周りに迷惑をかける」という罪悪感はよく分かる。ただ、あなたが長期休職・離職した場合の職場への影響も、同じかそれ以上だ。
【実践メモ】心身に限界が来ているなら、退職後の「傷病手当金」も頭に入れておく。健康保険から最長1年6ヶ月支給される制度だ。受給には医師の診断書が必要なので、医療機関への受診と並行して動くといい。
よくある質問
Q. 退職代行を使うと転職で不利になる?
退職の方法は、離職票にも源泉徴収票にも記載されない。転職先が退職代行の利用を知る方法は実質的にない。採用面接で話す義務もない。
Q. 退職代行を使うと損害賠償を請求される?
実際に損害賠償が認められたケースは極めてまれだ。会社側が損害の因果関係を立証するハードルは法的にも高い。脅し文句として使われることはあるが、実際に訴訟に発展するケースはほとんどない。
Q. 退職代行を使っても有給は消化できる?
できる。有給休暇の取得は労働基準法第39条が保証する権利だ。会社が一方的に拒否することは原則として認められない。ただし交渉が必要な場面では、労働組合型か弁護士型を選ぶ必要がある。
Q. 退職代行を入れた当日から出社しなくていい?
有給残日数が2週間以上あれば、当日から有給充当という形で出社せずに退職できることが多い。有給が足りない場合も、民法627条により2週間経過後に退職が成立する。
今すぐやること3つ
- 有給残日数を確認する。給与明細や社内システムで今すぐ確認できる。この数字が退職のスケジュールを決める。
- 退職代行業者の運営母体を確認する。一般企業・労働組合・弁護士でできることが変わる。交渉が必要なら労働組合型か弁護士型を選ぶ。
- 体の状態を記録しておく。眠れない・食べられない・涙が止まらないといった症状があるなら、医療機関への受診も選択肢に入れる。傷病手当金の申請にも、受診記録が必要になる。
まとめ
- 民法627条により、2週間前の申告だけで退職できる。会社の承認は不要だ。
- 退職代行を使った後悔の多くは業者の選び方のミスに起因する。一般企業型・労働組合型・弁護士型の違いを理解して選べば防げる。
- 「使わなかった後悔」は取り返せない。体と心が限界を超えてから悔やんでも、失った時間は戻らない。
次のステップ
辞め方そのもので迷ったら、退職代行の種類と選び方を社労士がまとめた記事が役に立ちます。→ 退職代行とは?3種類と選び方を社労士が解説
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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