「退職金がなくなって、給料に上乗せします」と言われたら、あなたはどう感じますか?
目先の手取りは増えるが、老後資金が消えるリスクがある。
現役社会保険労務士として、この動きを労働者目線で解説します。
退職一時金を廃止し、給与や確定拠出年金(DC)に上乗せする「前払い化」が広がっています。(出典:Yahoo!ニュース)
なぜ会社は前払い化するのか
会社側には、それなりの理由があります。
退職金の積み立ては、会社にとって大きな財務負担です。特に低金利が続く時代、運用が難しくなっています。
また、終身雇用が崩れた現代では「長く勤めた人に退職金」という制度設計が合わなくなりました。転職が当たり前の時代には、前払いのほうが社員にメリットがあるという考え方もあります。
会社の都合だけではなく、一定の合理性があることは知っておいてください。
労働者にとっての3つのリスク
リスク1:使ってしまうと老後資金がゼロになる
毎月の給与に上乗せされた場合、そのお金は生活費に消えやすいです。
退職時に「まとまったお金がある」という安心感は、前払いだと得られません。
自分で積み立てる強い意志がないと、老後に何も残らない可能性があります。
リスク2:税金と社会保険料が増える
退職金には「退職所得控除」という大きな税優遇があります。
つまり、退職一時金は税金がほとんどかからない仕組みです。
一方、給与に上乗せされると所得税・住民税・社会保険料がまるまるかかります。受け取る金額が同じでも、手元に残る額は減ってしまいます。
リスク3:DC(確定拠出年金)の場合は受取方法に注意が必要
企業型確定拠出年金(DC)への上乗せは、税優遇があるぶんマシです。
しかし、60歳まで原則引き出せないルールがあります。急に生活が苦しくなっても使えないリスクがあります。
また、DCは自分で運用方法を選ぶ必要があります。放置すると元本割れすることもあります。
前払い化されたとき、自分でできる3つの備え
①iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する
DCへの上乗せがない場合や、会社の掛金が少ない場合は自分でiDeCoに加入できます。
掛金が全額所得控除になるため、節税しながら老後資金を積み立てられます。
月額の上限は会社のDC加入状況によって変わります。まずは確認が必要です。
②NISA(少額投資非課税制度)を使う
上乗せされた給与を老後資金として積み立てる場合、NISAが有効です。
2024年から新しいNISAになり、年間360万円まで非課税で投資できます。
老後資金の積み立てには、長期・積立・分散投資が基本です。
③会社の説明を書面でもらう
前払い化に変更する場合、会社は労働条件を変更することになります。
就業規則や退職金規程の変更手続きが必要です。
口頭だけで「退職金をなくします」と言われた場合は要注意です。書面で確認を求める権利があります。
よくある疑問 Q&A
- Q: 会社が一方的に退職金を廃止することはできますか?
- A: 簡単にはできません。就業規則の不利益変更には「合理的な理由」が必要で、労働者への十分な説明と代替措置も求められます。前払い分が経済的に同等かどうかが重要なポイントです。
- Q: DCとiDeCoは何が違いますか?
- A: DCは会社が掛金を出す制度です。iDeCoは自分で掛金を出す個人型の制度です。どちらも60歳まで引き出せない点は共通です。税優遇があるのも同じですが、掛金の上限額が異なります。
- Q: 前払いを断ることはできますか?
- A: 会社の制度変更の場合、個人で拒否するのは難しいことが多いです。ただし、不利益変更として争える場合があります。内容が不満なら、まず労働組合や労働相談窓口に相談することをおすすめします。
すぐやること
- 自分の会社の退職金制度を確認する(総務・人事に問い合わせ)
- iDeCo・新NISAの口座開設を検討する(老後資金の自衛手段として)
- 制度変更の通知があれば、必ず書面でもらう(口頭だけはNG)
まとめ
- 退職金の前払い化は、税・社保の面で労働者にとってデメリットが生じやすい
- iDeCoやNISAを活用し、自分で老後資金を備えることが重要になっている
- 会社から制度変更の説明を受けたら、書面確認と専門家への相談を忘れずに
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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