広島カープの羽月隆太郎元選手が違法薬物所持で逮捕され、球団が契約解除を発表しました。バレーボール日本代表の佐藤駿一郎容疑者も大麻所持で逮捕されています。(出典:Yahoo!ニュース)
こうしたニュースを見て、こう思った人は多いはずです。「仕事の時間外、つまり私生活でやったことなのに、なぜクビになるのか」と。
社労士として、忖度なしに言います。私生活の薬物事件でも会社は社員を解雇できます。ただし、無条件ではありません。会社が「私生活だから何でも処分できる」と振りかざすのは、それはそれで間違いです。
この記事では、現役の社会保険労務士として、私生活の不祥事を理由とした解雇の法的根拠と、労働者側が押さえておくべき権利を整理します。
- 私生活の薬物事件で解雇される法的根拠
- 逮捕段階での処分の是非と就業規則の役割
- 一般労働者が知っておくべき自己防衛策
私生活の薬物事件でも解雇は可能
結論から書きます。私生活での薬物事件であっても、会社は社員を解雇できます。
理由はシンプルです。薬物事件は、会社の信用そのものを傷つけるからです。仕事中の行為かどうかは、決定打になりません。とりわけ次のケースでは、解雇が認められやすくなります。
- 会社の社会的信用が著しく損なわれる
- 業務に支障が生じる
- 就業規則に私生活上の行為についての定めがある
では、過去の裁判ではどう扱われてきたのか。
例えば、覚醒剤使用で逮捕された銀行員をめぐる事案(東京地裁・平成11年判決)では、「銀行という業種では信用の失墜が避けられない」として、解雇が有効と判断されました。お金を預かる仕事と、薬物事件。この組み合わせは、会社のダメージがあまりに大きいと見られたわけです。
つまり、薬物事件は「単なる私生活の問題」では片づかない。ここが出発点です。
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逮捕段階での処分は慎重に判断される
ただし、ここで一つ釘を刺しておきます。「逮捕された」だけの段階では、いきなりの解雇は難しいことがあります。
なぜか。逮捕は、有罪ではないからです。日本の刑事手続きには「推定無罪の原則」があり、判決が出るまでは罪が確定したことになりません。逮捕イコールクロ、ではないのです。
逮捕段階での会社の対応パターン
多くの会社は、いきなり解雇には踏み切らず、次のように段階を踏みます。
- 逮捕直後:自宅待機または出勤停止
- 起訴段階:懲戒処分(減給・停職など)
- 有罪確定後:懲戒解雇
とはいえ、薬物事件は例外的に厳しく処理されやすいのも事実です。報道され、社会的な反響が大きくなりやすいからです。だからこそ、労働者の側も「逮捕されただけだから大丈夫」と油断はできません。
一般労働者が知っておくべき自己防衛策
薬物は論外です。そこは議論の余地がありません。問題は、もっと身近なところにあります。私生活での行為を理由に、会社から不当に重い処分を受けないために、知っておくべきことがあります。
就業規則の私生活条項をチェックする
多くの会社の就業規則には、こんな条項が並んでいます。
- 「会社の信用を失墜させる行為をしてはならない」
- 「品位を保持し、会社の名誉を傷つけてはならない」
- 「法令に違反する行為をしてはならない」
一見もっともらしい。でも、よく読むと中身がない。どこまでが「信用失墜」で、どこからが「品位を欠く」のか、線引きが書かれていないからです。抽象的な条文は、会社にとって都合よく運用される余地を残します。これは労働者にとってリスクです。
SNSの使い方にも注意が必要
近年、増えているのが、私生活のSNS投稿をきっかけにした処分です。事件を起こしていなくても、たった一つの投稿で立場が危うくなることがあります。
特に危険なのは、次のような投稿です。
- 会社や同僚への誹謗中傷
- 反社会的な内容
- 機密情報の漏洩
「鍵アカだから」「友達しか見ていないから」は通用しません。SNSは「私的な場所」ではありません。スクリーンショット一枚で、いつでも公の発言に変わります。投稿する前に、それが社名と一緒に拡散されても困らないか。一度立ち止まる価値はあります。
よくある疑問 Q&A
- Q: 薬物事件で逮捕されたら必ず解雇されるのですか?
- A: 必ずではありませんが、可能性は非常に高いです。特に営業職や管理職など対外的な業務を担当している場合、会社の信用失墜を理由に解雇される可能性があります。
- Q: 私生活の行為でどこまで会社は処分できるのですか?
- A: 就業規則の定めと、会社への影響の程度によります。単なる交通違反程度では処分は困難ですが、薬物事件のように社会的影響の大きい事案では解雇も可能です。
- Q: 不当解雇だと思った場合はどうすればよいですか?
- A: まず就業規則と解雇理由を確認してください。解雇が就業規則の定めに従っているか、処分が重すぎないかを検証し、必要に応じて社労士や弁護士に相談することをお勧めします。
すぐやること 3つ
- 就業規則を確認する – 私生活上の行為に関する条項をチェック
- SNSの投稿を見直す – 会社や職業に関連した不適切な内容がないか確認
- 法令遵守を徹底する – 当たり前のことですが、違法行為は絶対に避ける
まとめ
- 私生活での薬物事件でも会社は社員を解雇できる
- 逮捕段階での処分は慎重に判断されるが、薬物事件は例外的に厳しい
- 就業規則の私生活条項とSNSの使い方に注意が必要
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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