巨人の阿部慎之助監督が自宅で長女への暴行容疑で逮捕・釈放され、監督を辞任した。このニュースが話題になっている。
出典:Yahoo!ニュースによると、長女がChatGPTに相談し、児童相談所を通じて警察に通報されたという。
家庭内の話だ。でも、ふと思った人もいるはずだ。これがもし、自分の職場で起きたら?
上司に胸ぐらをつかまれた。突き飛ばされた。そういう場面に心当たりがある人へ。結論から言う。職場の暴力は「指導」ではなく犯罪だ。そして加害者は職を失う。現役社労士として、その理由と、あなたが今やるべきことを書く。
職場で上司が部下を投げ飛ばしたら暴行罪が成立する
職場で上司が部下の襟をつかんで投げ飛ばした。この時点で刑法第208条の暴行罪が成立する。
暴行罪は「人の身体に対して暴行を加えた者」を処罰する犯罪だ。ここを誤解している人が多い。ケガをさせていなくても成立する。突き飛ばした、胸ぐらをつかんで揺さぶった、それだけで罪になる。
そしてもう一つ、重要な点がある。暴行罪は親告罪ではない。被害者が「処罰までは望まない」と言っても、警察や検察の判断で立件されることがある。「会社の中の話だから」「上司との関係が悪くなるから」と泣き寝入りする必要はない。
「指導」では済まされない職場暴力
「指導のつもりだった」「つい熱くなった」。加害側は決まってこう言う。
通用しない。理由は一つ。指導と暴力は別物だからだ。言葉でどれだけ厳しく叱っても、それは指導の範囲に入りうる。でも体に手を出した瞬間、線を越える。
たとえば、ミスを繰り返す部下に腹を立てて机を叩く。そこまでならまだ「威圧的だ」で済むかもしれない。でも部下の体を押した、引っ張った、投げた。これはもう業務でも指導でもない。ただの暴力だ。
使用者が労働者に手を上げることは、どんな理屈をつけても許されない。熱意も愛情も、暴力の言い訳にはならない。
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懲戒解雇の可能性が高い重大な非違行為
部下に暴行を働いた上司は、懲戒解雇される可能性が高い。
懲戒解雇は、会社が下せる処分の中で最も重いものだ。退職金がもらえない。転職活動でも不利になる。つまり、一度の暴力でキャリアごと失う。それくらい重い行為として扱われる。
懲戒処分の判断基準
処分の重さは、おおむね次の要素で決まる。
- 暴行の程度(肩を軽く押した程度なら減給で済むこともあるが、投げ飛ばせば懲戒解雇が視野に入る)
- 被害者の怪我の有無(怪我があれば、より重い傷害罪が成立する)
- 過去の処分歴(初めてか、それとも常習か)
- 反省の態度(事実を認めず開き直れば、当然重くなる)
ここで誤解してほしくないことがある。重いのは「会社が加害上司に下す処分」だ。被害者であるあなたが不利になる要素は、ここに一つもない。
パワハラ防止法との関係も重要
2022年4月から、企業の規模を問わず、すべての会社にパワハラ防止措置が義務付けられた。中小企業も例外ではない。
そして身体的な攻撃は、パワハラ6類型の筆頭に挙げられている。暴力は、数あるパワハラの中でも一番分かりやすく、一番悪質なものだということだ。会社には次の対応が求められる。
- 事実関係をすぐに調査する
- 被害者を守る(加害者と引き離す配置転換など)
- 加害者を厳正に処分する
- 二度と起きないよう再発防止策をとる
会社がこれを怠ったらどうなるか。今度は会社そのものがパワハラ防止法違反として、行政指導の対象になる。「上司個人の問題」では終わらない。守らなかった会社も責任を問われる。
よくある疑問 Q&A
- Q: 会社内の出来事でも警察に通報できるの?
- A: できます。職場も社会の一部です。暴行罪に職場かどうかは関係ありません。むしろ、労働者を守るために積極的に通報すべきケースです。
- Q: 「カッとなって」という理由は情状酌量になる?
- A: 感情的になったことは犯罪の正当化理由にはなりません。むしろ、管理職としての自制心の欠如として処分が重くなる可能性があります。
- Q: 被害者が「大丈夫」と言ったら問題にならない?
- A: なりません。暴行罪は親告罪ではないため、被害者の意思に関係なく処罰される可能性があります。また、会社の懲戒処分も別途検討されます。
被害に遭った場合のすぐやること
- 安全確保と証拠保全:まず身の安全を確保する。痛みやケガがあれば、できるだけ早く病院で診断書をもらう
- 会社への報告:人事部やコンプライアンス窓口に、できるだけ早く報告する
- 専門家への相談:労働局や弁護士、社労士に相談し、次の一手を一緒に決める
まとめ
- 職場での暴行は刑法上の暴行罪が成立し、懲戒解雇の対象となる重大な非違行為
- パワハラ防止法により、会社には迅速な対応と再発防止の義務がある
- 被害を受けた場合は我慢せず、証拠を残して適切な機関に相談することが大切
※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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