滋賀県草津市の工事現場で、セメントによる労災死亡事故が起きました。出典:Yahoo!ニュースによれば、作業員2名がセメントをかぶって亡くなったとのことです。
結論を先に言います。労災で家族を亡くした遺族は、労災保険から給付を受けられます。さらに会社に安全配慮義務違反があれば、損害賠償も請求できます。これは二者択一ではありません。両方を取りにいけます。
現役の社労士として、建設業の労災事故で遺族が手にできる権利と、その手続きを順に解説します。会社や元請けに遠慮する必要は一切ありません。
労災保険の遺族補償給付とは
労災で亡くなったとき、遺族が受けられる給付は大きく2つです。
遺族補償年金
亡くなった方の賃金をもとに、毎年年金が支給されます。一度きりではありません。要件を満たす限り、継続して支払われます。
受け取れる人には順位があります。上から順に権利が回ります。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 18歳未満の子など
- 60歳以上または障害のある父母
- 18歳未満または障害のある孫
- 60歳以上または障害のある祖父母
- 18歳未満または障害のある兄弟姉妹
事実婚のパートナーも対象になる点は、見落とされがちです。籍が入っていないからと諦める必要はありません。
遺族補償一時金
年金を受け取れる遺族がいない場合に支給されるのが、この一時金です。
給付基礎日額の1,000日分が、一括で支払われます。たとえば給付基礎日額が1万円なら、1,000万円が一度に支給される計算です。まとまった額です。
安全配慮義務違反による損害賠償
労災保険とは別枠で、会社そのものへ損害賠償を請求する道があります。ここを知らずに泣き寝入りする遺族は少なくありません。
安全配慮義務とは
会社は、働く人の命と体を危険から守る義務を負っています。これは契約書に書いていなくても当然に発生する義務です。法律がそう定めています。
建設現場で特に問われるのは、次のような点です。
- 適切な保護具を支給し、着用を指導していたか
- 危険作業の手順書を作り、教育していたか
- 安全設備を設置し、点検していたか
- 新しく現場に入る人へ安全教育をしていたか
これらのどれか一つでも欠けていれば、会社の落ち度を問える可能性があります。
つまり労災給付は「会社が悪いかどうか」を問わずに出ます。一方、損害賠償は「会社の落ち度」を遺族側が示す必要がある。ここが両者の決定的な違いです。だからこそ、証拠が物を言います。
損害賠償の内容
請求できる損害には、次のものが含まれます。
- 逸失利益(亡くならなければ将来得られたはずの収入)
- 精神的損害(慰謝料)
- 葬儀費用
- 弁護士費用
逸失利益は、亡くなった方の年齢や収入によっては数千万円規模になることもあります。労災給付だけでは到底カバーされない金額です。だから損害賠償を諦めてはいけません。
よくある疑問Q&A
- Q: 労災保険と損害賠償、両方もらえますか?
- A: はい。ただし、労災保険の給付額は損害賠償額から差し引かれます(調整あり)。
- Q: 元請け・下請けどちらに責任がありますか?
- A: 建設現場では元請けが統括安全衛生責任者を選任し、現場全体の安全管理義務を負います。下請けにも直接雇用している労働者への安全配慮義務があります。
- Q: 家族が労災申請を拒まれた場合は?
- A: 会社が協力しなくても、遺族が直接労働基準監督署に申請できます。必要書類は監督署で相談してください。
すぐやること3つ
- 労働基準監督署に相談 – 遺族補償給付の申請手続きを確認
- 事故現場・状況の記録保全 – 写真、証人の証言、安全管理体制の資料を収集
- 社労士・弁護士への相談 – 損害賠償請求の可能性を検討
順番を間違えないでください。記録保全は早いほど有利です。現場は時間とともに片付けられ、証言の記憶も薄れていきます。
まとめ
- 労災死亡事故では遺族補償年金・一時金が支給される
- 会社の安全配慮義務違反があれば損害賠償請求も可能
- 建設現場では元請けの統括安全衛生責任が重要なポイント
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