精神疾患の労災申請と審査請求|認定されなかったときの対処法を社労士が解説

うつ病・精神疾患

仕事のストレスが原因でうつ病になり、労災申請をしたものの認められなかった。そのような状況でどうすればよいか、情報を探している方はいますか。

精神疾患も労災として認定される可能性があります。
認定されなかった場合でも、「審査請求」という手続きで対処することができます。

この記事では、パート有期法・認定基準に基づいて次のことを解説します。

精神疾患が労災と認められる条件、申請に必要な証拠と手順、そして不支給決定が出たときの審査請求の流れを順に説明します。

精神疾患が労災と認められるとはどういうことか

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労災とは、仕事が原因で起きた病気やケガのことです。

骨折や切り傷はイメージしやすいですが、うつ病や適応障害なども同じように労災の対象になります。

ただし、条件があります。

国は「心理的負荷による精神障害の認定基準」(平成23年12月26日付け基発1226第1号)を定めています。仕事上のストレスが一定の強さ以上であること、そのストレスが病気の原因であることを確認するものです。

📌 ポイント:精神疾患の労災認定は、対象疾患であること、業務による強いストレスがあったこと、業務以外の原因が主ではないこと、の3点が柱になります。

精神疾患による労災は立派な業務災害です。正しい手続きを踏むことで、補償を受けられる可能性があります。

申請前にそろえる証拠:何が必要か

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労災申請では、「業務と病気のつながり」を証明することが核心です。

ここでは、集めておくべき証拠を具体的に紹介します。

業務の記録

仕事がどれほど過酷だったかを示す資料が必要です。残業時間がわかるタイムカードやパソコンのログ、上司からの強い叱責や暴言が残るメール・チャットの履歴、業務量の異常な増加を示す指示書・メモ、パワハラや嫌がらせを記録した日誌(日付・場所・発言内容を具体的に)などが有効です。

✅ やること:今日からでも、職場での出来事を日記形式でメモしてください。「いつ・どこで・誰が・何をした・自分の状態」を書き残すだけで、後から大きな証拠になります。

医療機関の受診記録

精神科や心療内科に受診し、診断書をもらうことが非常に重要です。

「受診していないから証明できない」という状況を避けるため、症状が出たら早めに医療機関を受診してください。

「仕事が原因で症状が出た」と医師に伝え、その内容が診断書や診療録に記録されるよう意識しましょう。

⚠️ 注意:精神科への受診歴がない場合、「業務で精神的に強いストレスを受けた」という主張の裏付けが弱くなります。辛い状態が続いているなら、受診をためらわないでください。

職場の状況を示す第三者の証言

同僚や元上司など、職場の状況を知っている人の証言も力になります。

できれば書面(陳述書など)の形で記録しておきましょう。

【実践メモ】

証拠は「多すぎる」ということはありません。メール・チャット・日誌・タイムカード・医療記録、使えるものはすべてとっておきましょう。申請前に社会保険労務士に相談すると、何が有効な証拠かアドバイスをもらえます。

労災申請の手順

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精神疾患の労災申請は、次の流れで進めます。

医療機関で診断を受ける

まず精神科か心療内科を受診し、診断名と症状の経過を記録してもらいます。

「業務上のストレスが関係している」と医師に伝えることが大切です。

労働基準監督署に相談する

最寄りの労働基準監督署に行き、精神疾患の労災申請について相談します。

担当者が申請書類と手続きを説明してくれます。

請求書類を作成して提出する

「療養補償給付たる療養の給付請求書」などの書類に記入します。

業務とのつながりを説明する「業務の詳細」欄は、具体的に・事実に基づいて書きましょう。

調査に協力する

労働基準監督署が職場や医療機関に確認調査を行います。

聞かれたことには正直に、事実を答えてください。

決定通知を受け取る

調査が終わると、「支給」または「不支給」の決定通知が届きます。

不支給になっても、そこで終わりではありません。

【実践メモ】

申請書類の「業務の詳細」は、曖昧に書くと認定率が下がります。「いつ・どんな出来事があり・自分の状態がどう変わったか」を時系列で具体的に書くのが鉄則です。難しければ、社会保険労務士に代行を依頼することもできます。

不支給になったら:審査請求で対処する方法

「不支給決定」が届いたとき、多くの人が「もう終わった」と思ってしまいます。

しかし、決定に納得できないなら、審査請求という手段があります。

審査請求とは何か

審査請求とは、行政の決定に対して不服を申し立てる手続きです。

労災の場合は、都道府県の労働局にある「労働者災害補償保険審査官」に申し立てます。

審査官が改めて内容を調べ、最初の決定が正しかったかどうかを判断します。

📌 ポイント:審査請求は、不支給決定を知った日の翌日から3か月以内に行わなければなりません。期限を過ぎると申し立てできなくなるので、決定通知が届いたら早めに動きましょう。

審査請求で対処できるポイント

「最初の審査で証拠が十分に評価されなかった」「手続きに不備があった」などのケースでは、審査請求で元の決定が取り消されることがあります。

審査請求では、初回申請で出せなかった証拠を新たに追加することもできます。まずは専門家に相談することをおすすめします。

審査請求でも認められなかったら

審査請求・再審査請求(労働保険審査会)はいずれも行政機関による内部的な判断です。裁判所はこれとは独立した判断を行います。再審査請求が棄却された場合でも、裁決書の送達を受けた日の翌日から6か月以内に裁判所への行政訴訟を提起することができます(行政事件訴訟法第14条)。行政段階での棄却が裁判所でも同じ結果になるとは限りません。段階を追って対処する仕組みが整っているので、一度の決定で判断を止める必要はありません。

【実践メモ】

審査請求書には、「なぜ最初の決定が適切でないか」を具体的に書く必要があります。不支給の理由をよく読み、何が問題になったかを把握した上で、反論となる証拠を追加しましょう。社会保険労務士や弁護士のサポートを借りると、書類の精度が上がります。

よくある疑問

精神科を受診していないと労災申請できませんか?
申請自体はできますが、認定のハードルは上がります。精神疾患の状態を証明するためには、医療機関の診断が重要な根拠になります。症状が続いているなら、早めに受診することをおすすめします。
会社が「労災ではない」と言っています。申請できますか?
できます。労災申請は会社の許可がなくても、労働者が自分で労働基準監督署に行えます。会社が申請書に押印しない場合でも、その旨を申し出れば監督署が対応してくれます。
退職後でも申請できますか?
できます。労災請求権の時効は原則として5年(当面は3年が適用される場合もあり)です。退職していても、在職中の業務が原因なら申請対象になります。
審査請求は自分でできますか?
手続き自体は自分で行えます。ただし、書類の内容が結果を左右するため、社会保険労務士や弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

チェックリスト:申請前に確認しよう

確認項目 チェック
精神科・心療内科で診断を受けた
業務上のストレスを医師に伝えた
タイムカードや残業記録を保存している
上司からの言動・メールなどを保存している
職場の状況を日誌に記録している
最寄りの労働基準監督署の場所を調べた
不支給の場合の審査請求期限(3か月)を把握している
社会保険労務士または弁護士に相談した(または予定している)

今日からできること

まず、医療機関に連絡して受診の予約を入れましょう。症状が続いているなら、精神科・心療内科を受診してください。受診記録は後から重要な証拠になります。

次に、業務記録をまとめましょう。メール・チャット・タイムカードなど、仕事の状況を示すものをすべて手元にそろえてください。会社のシステムにアクセスできなくなる前に保存しておくことが重要です。

申請の進め方や証拠の評価について疑問があれば、労働基準監督署か専門家に相談することができます。初回相談が無料の社会保険労務士・弁護士事務所もあります。一人で判断しようとせず、まず話を聞いてもらうところから始めてみてください。

まとめ

仕事が原因の精神疾患(うつ病・適応障害など)は労災認定の対象になります。認定のカギは「業務の記録」と「医療機関の受診記録」です。不支給決定が出ても、審査請求・再審査請求・行政訴訟と対処する手段があり、審査請求の期限は決定を知った翌日から3か月です。

行政段階での判断が裁判所でも同じ結果になるとは限らないため、一度の決定で判断を止める必要はありません。正しい知識を持ち、専門家に相談しながら適切な手続きを進めることで、必要な補償を求めることができます。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by John Vid on Unsplash

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