同じ職場で、同じ仕事をしているのに、賞与や手当の額だけが正社員と違う。「無期契約だから仕方ない」と言われてきた労働者にとって、見逃せない判決が出た。
仙台高裁は、無期契約社員と正社員の賃金格差を不合理と認め、賞与・家族手当の差額約193万円の支払いを命じた。
出典:沖縄タイムスによると、青森県の50代女性が約3565万円の差額を求めて訴訟を起こし、一部が認められた。現役社労士として、この判決が現場で働く人にとって何を意味するのかを整理する。
- 無期契約社員と正社員の格差が違法とされる条件
- 今回の判決のポイントと労働者への影響
- 同じ状況で悩む労働者が取るべき行動
何が「不合理」と判断されたのか
今回の核心は一点だ。雇用形態が違うだけで、賞与と家族手当に大きな格差を設けることは不合理だ——裁判所がそう判断した。
賞与は本来、会社の業績や個人の貢献に対して支払われるものだ。同じように仕事をして同じように貢献しているなら、雇用形態で差をつける合理的な理由はない。家族手当も同じ論理だ。家族を養う必要性は、正社員であっても無期契約社員であっても変わらない。
無期契約社員は、有期契約と違って雇用期間の定めがない。雇用の安定性という点では正社員とほぼ同じだ。それでいて待遇だけが大きく異なるのは、確かに筋が通らない。
賞与・家族手当が特に問題になる理由
賞与や家族手当は「生活保障」としての性格が強い手当だ。だからこそ、雇用形態による格差が問題になりやすい。
たとえば通勤手当は、実際にかかる交通費の実費補填だから差がつく余地は小さい。一方で賞与や家族手当は、「誰に何のために払うのか」という目的が問われる。同じ業務をこなし、同じ職場に毎日来ている人間に対して、なぜ差をつけるのか。その説明ができなければ、格差は「不合理」と判断される。
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この判決が労働者にとって何を変えるか
「正社員じゃないから仕方ない」という会社側の論理が、少しずつ通じなくなってきている。この判決はその流れを示す一例だ。
193万円という金額も重要だ。泣き寝入りしてきた差額を、法的手段で取り戻せる可能性がある。実際にそれが認められた判決が出た、という事実は大きい。
ただし、すべての格差が違法になるわけではない
これは正直に言っておく必要がある。格差があれば何でも違法になるわけではない。
責任の重さが違う、転勤や異動の範囲が違う、必要な専門性が違う——そうした合理的な理由があれば、ある程度の差は認められる。重要なのは「その理由が本当に合理的か」だ。会社が「うちの制度上そうなっている」と言うだけでは足りない。
また、今回は仙台高裁の判決であり、最高裁の確定判断ではない点も頭に入れておくべきだ。
同じ状況の労働者が今日からできること
まず必要なのは、正社員との待遇差を数字で把握することだ。「なんとなく少ない気がする」ではなく、賞与・各種手当・福利厚生のそれぞれについて、いくら差があるのかを具体的に計算する。
そのうえで、その差に合理的な説明がつくかどうかを考えてみる。「なぜ私の賞与は正社員の半分なのか」と会社に問い合わせることは、決して非常識ではない。今回の判決の影響で、制度を見直す動きが出る会社もあるかもしれない。
証拠の保全は早めに動く
法的手段を取るかどうかに関わらず、手元に資料を残しておくことは損にならない。
雇用契約書・就業規則・給与明細・賞与明細、そして自分がどんな業務を担当しているかが分かるもの(業務日誌、メール、引き継ぎ資料など)を手元に確保しておこう。正社員と同等の仕事をしていることを示せる資料があると、後の対応がずっと楽になる。
よくある疑問 Q&A
- Q: 無期契約社員なら必ず正社員と同じ待遇になりますか?
- A: いいえ。合理的な理由があれば差を設けることは可能です。ただし、その理由が本当に合理的かどうかが重要です。責任の違いや転勤の有無などが考慮されます。
- Q: 今回のような訴訟を起こすにはどうすればいいですか?
- A: まずは労働基準監督署や労働局に相談することをお勧めします。その後、必要に応じて弁護士に相談してください。いきなり訴訟ではなく、まず会社との話し合いから始めることも大切です。
- Q: 過去の差額も請求できるのでしょうか?
- A: 賃金請求権の時効は原則5年(当面3年)です。時効の範囲内であれば過去の差額も請求できる可能性があります。ただし、具体的な計算や請求方法は専門家に相談してください。
すぐやること 3つ
- 正社員との待遇の違いを具体的に調べる – 賞与、手当、福利厚生の差額を計算してみましょう
- 雇用契約書と就業規則を確認する – 待遇の根拠となる規定を把握しておきましょう
- 証拠となる資料を保管する – 給与明細、業務内容がわかる資料を整理しておきましょう
まとめ
- 仙台高裁が無期契約社員と正社員の賃金格差を不合理と認め、賞与・家族手当の差額約193万円の支払いを命じた
- 無期契約社員は雇用の安定性が正社員と同水準であるため、格差の合理的な説明がより厳しく問われる
- すべての格差が違法になるわけではないが、「雇用形態が違うから当然」という理屈だけでは通じなくなりつつある
- 同じ状況の労働者はまず待遇差を数字で把握し、証拠を手元に保全したうえで専門家に相談を
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
Photo by Sebastian Pichler on Unsplash

