休職中の試し出勤を断れる?賃金・拒否・復職基準を社労士が解説

休職・休業

「試し出勤をやれと言われたけど、給料は出るの?」

「断ったら復職できなくなるんじゃないか…」

休職中にそう不安になっているあなたへ、この記事を書きました。

結論から言います。試し出勤中でも、実際に業務を行えば賃金を請求できます。また、体調が整っていなければ断ることも検討できます。

現役の社会保険労務士として、休職中の方からこうした相談を多く受けてきました。この記事では、試し出勤にまつわる労働者の権利を、判例を交えてわかりやすく解説します。

  • 試し出勤中に賃金が発生する条件
  • 試し出勤を断ることができるケース
  • 復職前に会社と確認しておくべきこと

試し出勤とは何か?制度の正体を知ろう

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職場復帰に向けて準備する労働者のイメージ

試し出勤とは、休職中に職場復帰が可能かどうかを確認するため、試験的に出勤する取り組みのことです。

特に、うつ病や適応障害などで休職している場合に提案されることが多いです。

「少しずつ職場の雰囲気に慣れていこう」という流れで始まるケースがほとんどです。

📌 ポイント:試し出勤は法律で定められた制度ではありません。会社が独自に設けているものです。そのため、内容や条件は会社によって大きく異なります。

重要なのは、試し出勤はあくまで「休職期間中の措置」として行われる点です。

試し出勤中も、正式には「休職中」という扱いのままです。

主治医の診断書だけでは復職できないこともある

復職が認められるためには、休職前の業務をこれまでと変わらない水準でやりきれる体の状態に戻っていることが必要とされています。これが「治癒」と呼ばれる状態です。

主治医から「復職可能」と書かれた診断書が出ても、会社側が「まだ無理では」と判断するケースがあります。

その判断材料として試し出勤が使われるわけです。

⚠️ 注意:「主治医がOKと言ったから復職できるはず」とは必ずしも言えません。会社が独自の判断基準を持っている場合があるからです。

試し出勤中の賃金は出る?判例で確認しよう

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賃金・給与の支払いに関するイメージ

これが一番気になるポイントだと思います。

試し出勤中の賃金は、「実際にどんな作業をしていたか」によって判断が変わります。

賃金が発生すると判断された裁判例

名古屋高等裁判所(平成30年6月26日判決)は、試し出勤中の賃金について重要な判断を示しました。

この判決が示したポイントは何でしょうか。試し出勤であっても、会社から仕事の指示を受けて動き、その結果が会社の業務として使われているなら、それは賃金が伴うべき労働だという点です。

職場の空気に慣れるだけの段階と、実際に会社の業務として機能している段階は、法的に異なる扱いになるということです。

✅ やること:試し出勤前に「何をするか」「賃金はいくらか」を書面で確認しましょう。「業務の指示があるのに無給」は認められない可能性があります。

「試し出勤だから無給」を鵜呑みにしないで

会社が「試し出勤中は無給です」と説明してくることがあります。

職場に通うだけで特に業務がない場合は、賃金が発生しなくても法的に問題にはなりにくいです。

ただし、実際に作業を指示されているなら話は変わります。

「試し出勤だから賃金なし」という一言で済ませようとする場合は、内容をよく確認してください。

【実践メモ】

試し出勤中に「これをやっておいて」と指示を受けた場合は、日付・指示した人の名前・作業内容をメモしておきましょう。賃金をめぐるトラブルになったとき、この記録が重要な証拠になります。

試し出勤を拒否できる?会社の指示への対応

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会社の指示に対して自分の権利を考える労働者のイメージ

「試し出勤をしないと復職できない」と言われたとき、断ることはできるのでしょうか。

結論を言えば、試し出勤に応じる法律上の義務はありません。

会社にも「必ず実施する義務」はない

試し出勤は、会社にとっても「やらなければならないもの」ではありません。

つまり、会社も労働者も、どちらも強制される制度ではないのです。

ただし、会社が試し出勤を「復職判断のプロセス」に組み込んでいる場合、拒否すると復職時期が遅れることがあります。

⚠️ 注意:「試し出勤を断ったから解雇」は原則として認められません。ただし、会社との関係が難しくなるリスクはあります。主治医とも相談しながら判断しましょう。

体調が整っていないなら無理に応じない

もっとも大切なのは、あなたの体調です。

十分に回復していない状態での試し出勤は、かえって回復を遅らせることがあります。

「まだ早いかも」と感じるなら、主治医に試し出勤の開始時期を相談した上で判断してください。

✅ やること:試し出勤の前に、主治医に「今の状態で始めて大丈夫か」を確認しましょう。その意見を書面や診断書でもらえると、会社との交渉に役立ちます。

復職前に会社と確認すべきこと

会社との話し合いや書面確認のイメージ

試し出勤に応じる場合は、開始前に条件を書面で確認することが非常に重要です。

口約束だけでは「言った・言わない」のトラブルになりやすいです。

開始前に書面で確認しておきたいこと

  • いつからいつまでの予定か(開始日・終了日・延長の可能性)
  • 何をするのか(実際の業務指示の有無、具体的な作業内容)
  • お金はどうなるのか(賃金が発生するかどうか、発生する場合の金額と支払方法)
  • 何をもって「復職OK」と判断するのか(評価基準・誰が判断するか)
  • 試し出勤が終わった後、どう進むのか(正式復職までのステップ)
📌 ポイント:「詳細は追って」「臨機応変に」という説明で済まされた場合は、「書面で確認させてください」と伝えることができます。あいまいなまま始めないことが大切です。

【実践メモ】

会議室で口頭確認した場合は、その後すぐに「本日確認した内容を整理しました」とメールを送り、記録に残す方法があります。相手から返信がなくても、送付した記録自体が証拠として残ります。

よくある疑問 Q&A

Q: 試し出勤中に体調が悪化したらどうなりますか?
A: 無理して続ける必要はありません。体調の悪化は、休職が必要な状態がまだ続いているという判断材料にもなります。主治医にすぐ相談し、場合によっては試し出勤を中断することも選択肢です。
Q: 試し出勤中は無給と言われました。おかしくないですか?
A: 職場の雰囲気に慣れるだけで特に業務がない場合は、法律上の問題が生じにくい面もあります。ただし、実際に作業を指示されているなら賃金が発生します。何をしているかを記録しておくことが重要です。
Q: 試し出勤を断ったら不利益を受けますか?
A: 拒否を理由にした懲戒処分や解雇は、原則として認められません。ただし、復職判断のプロセスが長引く可能性があります。主治医の意見を踏まえながら、会社の意図を確認して判断しましょう。
Q: 試し出勤後に「まだ復職は無理」と言われたらどうなりますか?
A: すぐに退職・解雇になるわけではありません。休職期間がまだ残っているなら、引き続き休職を継続できます。期間満了後の扱いは就業規則に定められているので、今すぐ確認しておきましょう。

試し出勤のチェックリスト

確認項目 チェック
主治医から試し出勤の開始時期についてOKをもらった
試し出勤の期間・終了日を書面で確認した
作業内容(何をするか)を書面で確認した
賃金の有無・金額を書面で確認した
復職の判断基準(何をもってOKとするか)を確認した
毎日の作業内容と体調を記録するメモを用意した
就業規則の試し出勤・復職に関する条文を確認した

すぐやること 3 つ

  1. 就業規則を確認する:会社の試し出勤・復職に関するルールを確認してください。書面での条件確認を求める際の根拠にもなります。
  2. 主治医に相談する:開始時期・内容・期間について、主治医の意見を書面でもらいましょう。会社との交渉や条件確認の根拠になります。
  3. 作業内容と指示を毎日記録する:試し出勤が始まったら、日々の作業内容・指示した人の名前・日時をメモしてください。賃金トラブルになったとき、この記録が力を発揮します。

まとめ

  • 試し出勤は法律上の制度ではなく、会社が任意で設けるものです
  • 試し出勤中でも、実際に業務を行えば賃金が発生します(名古屋高裁 平成30年6月26日判決)
  • 試し出勤に応じる法律上の義務はなく、体調が整っていなければ断ることも選択肢です
  • 開始前に、期間・作業内容・賃金・復職基準を書面で確認することが重要です
  • 主治医との連携を大切にしながら、自分のペースで回復を最優先にしてください

休職中は、あなたの体と生活を守ることが何より先です。焦って無理な復職を試みる必要はありません。正当な権利と手続きを知ることで、安心して職場に戻る道が開けます。健康を取り戻し、自分らしいキャリアを続け、大切な人を守りながら働き続ける——そのための知識が、あなたにはあります。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Skytech Aviation on Unsplash

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