プロ野球・巨人の阿部慎之助監督が家族のトラブルを理由に辞任を発表しました。出典:Yahoo!ニュースによると、家族の問題が球団経営に影響を与える可能性を考慮した判断とのことです。
このニュースを見て、ヒヤッとした人がいるはずだ。「うちも家族がトラブルを起こしたら、会社にいられなくなるのか」と。
では一般の労働者が家族の不祥事を理由に退職を迫られたら、応じる必要があるのでしょうか?
結論から言う。応じる必要はない。家族の問題だけを理由とした解雇は、原則として違法だ。現役の社会保険労務士として、労働契約法や身元保証法の観点から、あなたの権利を一つずつ説明する。
家族の不祥事は解雇理由になるのか?
ならない。理由はシンプルだ。労働契約法16条は、解雇に「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方を求めている。家族のトラブルは、このどちらも満たさない。
家族の行為は本人とは別人格です。あなたが働く能力と、家族が起こした問題は、まったく別の話だ。それを混ぜて解雇するのは「解雇権の濫用」に当たる可能性が高い。
たとえば、親族が金銭トラブルを起こしたからといって、本人の勤務態度や仕事の成果が落ちるわけではない。会社が「世間体が悪い」という理由だけで辞めさせようとするなら、それは法的に通らない。
例外的に解雇が認められるケース
ただし、例外はある。以下の場合は解雇が認められる余地が出てくる。
- 会社の信用に具体的な損害が発生した場合
- 業務に支障をきたす程度の影響がある場合
- 本人も問題に関与していた場合
カギは「具体的」という言葉だ。実際に取引が打ち切られた、顧客が離れたといった目に見える損害があって、初めて検討の俎上に乗る。「なんとなく評判が悪くなりそう」という風評や憶測では、解雇理由にならない。ここを会社が混同してくるケースは多い。だから線引きを知っておくことが武器になる。
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身元保証制度の限界とは?
入社時に身元保証人を立てた人も多いだろう。「保証人がいるから、家族の問題で責任を取らされるのでは」と不安になるかもしれない。でも、そうはならない。
身元保証法は、保証人の責任を厳しく制限している。身元保証の期間は、期間を定めない場合は3年、定めた場合でも最長5年です。自動で延々と続くものではない。しかも保証人が責任を負うのは、あくまで従業員本人の行為で会社に損害が出たときだけだ。
身元保証と家族の関係
ここを整理しておく。身元保証人と、トラブルを起こした家族は、必ずしも同じ人ではない。仮に身元保証人があなたの家族だったとしても、その家族自身が起こした問題で、あなたが責任を負う根拠にはならない。
会社が「身元保証人に問題があるから解雇する」と言ってきたら、それは筋違いだ。身元保証はあくまで本人の業務上の損害を担保するための制度であって、保証人の私生活を縛るものではない。法的根拠は薄い。
プライバシー権と職場への影響
もう一つ、見落とされがちな権利がある。プライバシー権だ。憲法13条で保障されたこの権利は、会社の門をくぐった瞬間に消えるものではない。職場でも生きている。
家族の問題は本来、個人のプライベートな事柄です。会社がこれを掘り起こして不利益処分の材料にするのは、プライバシー権の侵害に当たる可能性がある。本人が望んでもいないのに、家庭の事情を理由に処遇を変える。これは越権だ。
会社の配慮義務
むしろ立場は逆だ。会社の側に、従業員の人格権を尊重する義務がある。家族の問題で精神的に追い詰められている従業員に対しては、追い込むのではなく、支えるのが筋だ。
具体的には、休職制度を案内する、産業医面談につなぐ、といった対応が考えられる。圧力をかけてくる会社は、この順番を完全に取り違えている。
よくある疑問 Q&A
- Q: 家族が犯罪を起こした場合、会社に報告する義務はありますか?
- A: 就業規則に明記されていない限り、報告義務はありません。ただし、業務に直接影響がある場合は相談することをお勧めします。
- Q: 同僚から冷たい目で見られるようになりました。これも会社の責任ですか?
- A: 会社には職場環境配慮義務があります。いじめや嫌がらせがエスカレートする前に、人事部門に相談してください。
- Q: 自主退職を促されていますが、応じるべきでしょうか?
- A: 家族の問題だけを理由とした退職勧奨に応じる必要はありません。冷静に判断し、必要であれば専門家に相談してください。
すぐやること3つ
- 就業規則を確認する – 家族の問題に関する規定があるかチェック
- 証拠を記録する – 会社からの不当な扱いがあった場合は日時・内容を記録
- 専門家に相談する – 労働基準監督署や労働局の相談窓口を活用
まとめ
- 家族の問題だけを理由とした解雇は原則として違法
- 身元保証制度にも限界があり、家族の行為で自動的に解雇されることはない
- プライバシー権は職場でも保護される重要な権利
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

