無期転換後の労働条件は変わる?5年超で生まれる権利と注意点を社労士が解説






無期転換権とは?5年後の労働条件・別段の定めと権利の守り方

5年間、有期契約で働いてきた。

ようやく無期転換を申し出たら、「条件が変わる」と言われた。

そんな経験をした人は少なくありません。

結論から言います。無期転換後の労働条件は、原則として変わりません。

ただし、知らないと損する「落とし穴」があります。この記事では、現役の社会保険労務士が詳しく解説します。

この記事では、無期転換権とは何かをわかりやすく整理したうえで、転換後に会社が条件を変えられる仕組みと対処法、そしてあなたの権利を守るための具体的な行動を順に説明します。

無期転換権とは?5年で手に入る「安定の権利」

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まず、基本から確認しましょう。同じ会社で有期契約を繰り返し、通算5年を超えた時点で「無期転換権」が発生します。この権利を使うと、期間の定めのない雇用に切り替わります。つまり、「いつ契約が切れるかわからない」という不安から解放されます。

📌 ポイント:無期転換権は、契約期間中に行使する必要があります。契約満了後では間に合わない場合があります。更新のタイミングで早めに申し出ましょう。

「転換=正社員」ではない

ここは誤解しやすいポイントです。無期転換とは、「契約期間をなくす」手続きです。自動的に正社員になれるわけではありません。給与・勤務時間・業務内容は、別途の取り決めがなければ転換前と変わらないのが原則です。

2024年4月から「明示義務」が生まれた

令和6年4月1日施行の改正(改正労働基準法施行規則5条等)により、会社に新しい義務が加わりました。無期転換権が発生する更新のタイミングで、無期転換を申し込む権利があること、および無期転換後の労働条件(変わる点があればその具体的な内容)を書面で示す必要があります。この説明を受けていない場合、会社は法令違反の状態です。

✅ やること:無期転換のタイミングが近い人は、会社から書面による説明を受けているか確認してください。書面がない場合は、交付を求めましょう。

【実践メモ】

通算期間のカウントは「同じ会社との契約」が対象です。部署が変わっても、契約形態が変わっても、同じ会社ならすべて合算されます。まず自分の通算期間を確認しましょう。雇用契約書を並べれば計算できます。

転換後の労働条件は「原則そのまま」が法律の答え

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無期転換したら給与は下がるのか?勤務時間は変わるのか?答えは「原則、変わらない」です。これは労働契約法18条1項に明確に定められています。

📌 ポイント:無期転換後の労働条件は、転換申込み時点の有期契約と「契約期間以外は同一」とされています(労働契約法18条1項)。これはあなたを守る法律上の原則です。

たとえば、月給23万円で働いていたなら、転換後も23万円が維持されます。週4日勤務だったなら、転換後も週4日のままです。これは法律で守られた権利です。

例外「別段の定め」に注意

ただし、例外があります。それが「別段の定め」という仕組みです。就業規則や雇用契約書に「転換後は定期的に条件を変更できる」と書かれていれば、変更が認められます。なお、この「別段の定め」を設けることは、労働契約法施行通達(平成24年8月10日基発0810第2号)でも差し支えないと明記されています。この仕組みを使われると、転換後に給与や勤務時間が変わる可能性があります。

⚠️ 注意:「別段の定め」があっても、内容が合理的でなければ無効です。一方的に大幅な条件引き下げを迫られた場合は、専門家に相談することをお勧めします。

【実践メモ】

転換前に、就業規則に「別段の定め」があるか確認しましょう。就業規則はあなたが閲覧を求められる書類です。もし変更条項があった場合は、その内容が合理的かどうか、社労士や弁護士に確認するのが安心です。

会社に条件を変えられたときの対抗手段

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「別段の定め」を理由に条件を変えてきた場合、泣き寝入りする必要はありません。変更には合理的な理由が必要です。以下の視点で、変更の妥当性を確認しましょう。

変更が有効かどうか確認する視点

労働条件の不利益変更は、法律上の制限を受けます。変更に合理的な理由があるか(業務量の変化・経営状況など)、変更内容が過度に不利益でないか(大幅な給与削減・著しい条件悪化は問題)、そして事前に十分な説明があったか(一方的な変更は原則無効)という点を確認してください。

✅ やること:条件変更を告知されたら、まず書面で内容を受け取りましょう。その場ですぐにサインする必要はありません。内容を確認する時間を求めることは、あなたの権利です。

証拠を残すことが交渉力になる

会社とのやり取りは、必ず記録に残しましょう。メールや書面で変更の理由を求めると、後で証拠になります。口頭だけの説明は、後から「言った・言わない」のトラブルになりやすいです。

【実践メモ】

条件変更の話し合いは、できればメールで進めましょう。メールの履歴はそのまま証拠になります。口頭で話し合いが行われた場合は、その後に内容を確認するメールを自分から送っておくと安心です。「本日のお話しの確認です。〇〇という内容でよろしかったでしょうか」という形で記録に残せます。

転換を有利に進めるための事前準備

無期転換は、準備した人が得をします。事前に動いておくだけで、大きく状況が変わります。

転換前に確認しておくこと

まず自分の通算契約期間が5年を超えているかを確認してください。次に、会社から転換後の労働条件を書面で受け取っているか確認します。就業規則に「別段の定め」があるかどうかも調べておきましょう。そして、転換後の条件が現在と比べてどう変わるのかを把握しておくことが大切です。

📌 ポイント:令和6年4月以降、会社は無期転換権が発生する更新タイミングで転換後の条件を明示する義務があります。この説明を受けていない場合は、会社に請求できます。

転換のタイミングで条件交渉ができる

「会社の提示をそのまま受け入れるしかない」と思っていませんか?転換のタイミングで条件を交渉することは可能です。正社員と同じ業務をしているのに待遇が違う場合は、特に交渉の余地があります。同一労働同一賃金の観点から、根拠を持って話し合うことができます。

✅ やること:交渉前に、正社員の労働条件と自分の条件を比較しておきましょう。業務内容・責任の重さが同等であれば、同一労働同一賃金の原則を根拠に待遇改善を求めることができます。

【実践メモ】

交渉に不安がある場合は、まず総合労働相談コーナー(無料)に相談することもできます。都道府県労働局に設置されており、予約不要で相談できます。専門家のアドバイスをもらってから交渉に臨むと、自信を持って話し合いができます。

よくある疑問

5年経ったら自動的に無期転換されますか?
いいえ、自動的には転換されません。あなた自身が「無期転換を希望します」と申し出る必要があります。申し出のタイミングは、5年を超えた後の契約期間中です。期間満了後では間に合わない場合があるので、更新前に動きましょう。
無期転換したら、給与が下がることはありますか?
原則として、転換前と同じ条件が維持されます(労働契約法18条1項)。ただし、就業規則に「別段の定め」がある場合は変更の可能性があります。転換前に就業規則を確認し、変更がある場合はその内容と理由を書面で求めましょう。
無期転換後に解雇されることはありますか?
無期転換後は、正社員と同様に解雇権濫用法理が適用されます。「合理的な理由がなければ解雇できない」というルールです。有期契約の「期間満了による雇い止め」とは異なり、より強い解雇保護を受けることになります。
会社が無期転換を拒否することはできますか?
できません。あなたが申し出た場合、会社は拒否できないのが法律の原則です。もし拒否された場合は、労働局や社労士・弁護士に相談しましょう。

チェックリスト:無期転換前に確認すること

確認項目 チェック
通算契約期間が5年を超えているか確認した
会社から無期転換権の説明(書面)を受けた
転換後の労働条件が書面で明示されている
就業規則に「別段の定め」があるか確認した
条件変更がある場合、その理由を書面で確認した
不明点があれば専門家(社労士・弁護士)に相談した

今日からできること

まず、自分の通算契約期間を計算しましょう。雇用契約書を並べて通算期間を出し、5年を超えていれば無期転換権が発生しています。

次に、就業規則の「別段の定め」を確認してください。無期転換後の条件に関する条項があるか、人事に確認しましょう。就業規則はあなたが閲覧を求められる書類です。

そして、転換後の条件を書面で受け取ることを求めてください。令和6年4月以降、会社には転換後の条件を明示する義務があります。口頭だけの説明の場合は、書面の交付を求めましょう。

まとめ

同じ会社での通算勤務が5年を超えると無期転換権が発生し、転換後の労働条件は労働契約法18条1項により原則として転換前と同一です。「別段の定め」がある場合のみ条件変更が認められる可能性がありますが、合理的な理由のない一方的な引き下げは無効です。令和6年4月以降は転換後の条件を書面で明示してもらえる権利があります。条件に疑問があれば、すぐにサインせず専門家に相談してください。

正しい知識を持つことで、無期転換権を有効に活かし、安定した雇用を守ることができます。就業規則の確認や書面の受け取りなど、できることから早めに動いておきましょう。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。


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