45歳以上の賃上げ1.4%|中小ミドル世代を直撃する賃金格差の実態

賃金・待遇

「賃上げ、過去最高」。ニュースでは毎日のように流れている。でも、あなたの給与明細はどうだろうか。先月の手取りは、本当に増えたか。

結論から言う。賃上げの恩恵を受けられていない人は、大勢いる。

特に中小企業で働く40代・50代は危ない。社会保険労務士として言わせてもらえば、ここが2025年の賃上げで一番割を食った層だ。最新の公式データをもとに、その格差の中身を解説する。

この記事では、「平均3.1%増」という数字の裏側、40代以上かつ中小企業が直面する格差の実態、そして自分の賃金を守るために今できる行動を、順に説明していく。

「過去最高」の陰で、実質減給になっている人たち

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厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の平均賃金は前年より3.1%増えた。過去最高の伸びだ。数字だけ見れば、たしかに景気のいい話に聞こえる。

ところが、だ。2025年の生鮮食品を除く物価上昇率も、同じく約3.1%。つまり、平均的な賃上げでは生活水準はほぼ変わらない。増えた給料は、物価の値上がりにそっくり吸い取られている。手取りが増えた実感がないのは、気のせいではない。

若い世代は上がっても、40代以上は置き去り

年齢別に賃上げ率を見ると、世代間の差がはっきり出る。20代前半は4.4%、25〜29歳は4.6%。どちらも物価上昇を上回り、実質的な賃金アップになっている。一方で45〜49歳はわずか1.4%、50〜54歳でも2.2%にとどまった(出典:厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」)。

若手は実質プラス。ミドル世代は実質マイナス。同じ会社の中で、世代によって逆の現象が起きている。

⚠️ 注意:物価上昇率3.1%を下回る賃上げは、実質的な賃金カットです。45〜49歳の多くの方は、気づかないうちに「実質減給」の状態に置かれている可能性があります。

背景はシンプルだ。企業が初任給の引き上げに資金を回し、若い人材の確保を優先している。すでに働いているミドル世代は、後回しにされやすい。会社にとっては「辞めにくい層」だからだ。経営目線で言えば合理的かもしれないが、当事者にとってはたまったものではない。

【実践メモ】

昨年と今年の給与明細を引き出して、基本給を比べてみてください。その差を昨年の基本給で割れば、自分の賃上げ率がわかります。3%未満であれば、実質的に購買力は下がっています。

会社の規模で決まる、賃上げ格差の現実

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格差は年齢だけではない。働く会社の規模でも、賃上げの恩恵は大きく分かれる。同じ調査を企業規模ごとに見ると、大企業(従業員1,000人以上)の賃上げ率は5.7%。一方、中企業(100〜999人)は1.0%、小企業(10〜99人)は2.1%にとどまった。中小はそろって物価上昇率3.1%を下回っている(出典:厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」)。

大企業だけが、独走している。

📌 ポイント:大企業の賃金を100とした場合、中企業は84.7、小企業は79.4です。さらに深刻なのは、この格差が前年よりも広がっていることです(前年:中企業88.6、小企業82.1)。

なぜ中小企業の賃上げは遅れるのか

中小企業が賃上げしにくいのには、構造的な理由がある。一つは、仕入れ価格やエネルギー費が上がっても、取引先に価格転嫁できないケースが多いこと。原価が膨らんでも売値に乗せられなければ、賃上げの原資は生まれない。もう一つは、労働組合がないことだ。大企業では春闘を通じて組合が賃上げ交渉を担う。だが組合のない会社では、その交渉役がそもそも存在しない。日本の中小企業の大半に、労働組合は置かれていないのが現実だ。声を上げる仕組みがないまま、賃金は据え置かれていく。

【実践メモ】

転職サイトや求人情報で、同じ職種・年齢・経験年数の求人給与を確認してみましょう。自分の給料が相場より低ければ、それが交渉の根拠になります。転職するかどうかは関係なく、まず相場を知ることが大切です。

中小企業×40代以上は「二重の格差」に直面する

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年齢の格差と、会社規模の格差。この二つが重なる人が、最も厳しい。小企業で働く20代前半は大企業の約88%の賃金水準だが、45〜49歳になると約75%まで落ちる。20代と比べて、格差が10ポイント以上も広がっている計算だ(出典:同調査)。長く勤めるほど報われるどころか、差が開いていく。

⚠️ 注意:小企業に勤める45〜49歳の賃上げ率は2025年はわずか0.1%でした。長く中小企業に勤めるほど、大企業との差が静かに広がり続けます。

55〜59歳で現れる毎月の賃金差

55〜59歳になると、差はもっと生々しい数字になる。大企業の55〜59歳の平均賃金は約46万6,000円。一方、小企業の同世代は約33万5,000円だ。その差は毎月13万円以上。年間にすれば150万円を超える格差になる。同じ年数、同じように汗をかいてきたはずなのに、会社の規模というだけでこれだけ開く。これを「自己責任」の一言で片づけるのは、あまりに乱暴だ(出典:厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」)。

✅ やること:今の会社に10年・20年いた場合の給与の伸びを試算してみましょう。同業・同規模の他社や大企業との差がどう変化するか、数字で確認することが第一歩です。

賃金格差の中で、あなたが今すぐ取れる行動

数字を見て、ため息で終わらせてはもったいない。動ける手は、ちゃんとある。

自分の市場価値を調べる

まずやるべきは、自分の「市場価値」を把握することだ。転職サイトや求人情報で、同じ職種・年齢・経験年数の給与を調べてみてほしい。今の給与が相場より低ければ、それがそのまま交渉の材料になる。転職する気がなくても構わない。相場を知るだけで、見える景色が変わる。

会社に賃上げを求める

賃金の交渉は、労働者の正当な権利だ。遠慮する話ではない。ただし感情論はいらない。実績とデータで話す。「物価が上がっているのに基本給は据え置きのままです」「同業他社の相場はこの水準です」。事実を根拠にすれば、説得力はぐっと増す。

📌 ポイント:正当な賃上げ交渉を理由に、会社が解雇や降格などの不利益な扱いをすることは違法です。権利の行使を恐れる必要はありません。

転職という選択肢を真剣に検討する

転職で賃金が改善するケースは、決して珍しくない。特に40代前半までなら、より規模の大きい会社や成長産業へ移って待遇が上がる可能性は十分ある。いきなり辞めろという話ではない。まずは情報を集めるところから始めればいい。

【実践メモ】

キャリアアドバイザーへの相談は、転職を決める前から利用できます。無料で使えるサービスが多いので、まず「相談だけ」という気持ちで試してみることをおすすめします。

よくある疑問

賃上げを求めたら、解雇されますか?
賃上げ交渉を理由とした解雇は、不当解雇にあたる可能性があります。正当な権利行使に対して不利益な扱いをすることは、労働契約法上も認められません。ただし、交渉の方法や内容には丁寧さが求められます。
労働組合がない会社でも賃上げを求められますか?
労働組合がなくても、個人として会社と交渉する権利は誰にでもあります。同僚と協力して話し合う形でも構いません。また、個人でも加入できる合同労組(ユニオン)を利用する方法もあります。
物価が上がっているのに給料が据え置きの場合、法的な問題はありますか?
物価上昇を理由とした賃上げ義務は法律に明記されていません。ただし、最低賃金を下回ることは違法です。また、労働条件の一方的な不利益変更は労働契約法第10条で制限されています。
転職を考えるなら、何歳頃が現実的ですか?
一般的に30代後半〜40代前半は転職市場での需要があり、選択肢が広い時期といわれます。ただし、専門スキルを持つ方は年齢を問わずチャンスがある時代になっています。早めの情報収集が重要です。

チェックリスト

確認項目 チェック
昨年と今年の基本給を比較し、自分の賃上げ率を計算した
自分の業種・会社規模での賃金相場を調べた
物価上昇率と自分の賃上げ率を比較した(実質賃金の確認)
転職サイトで同職種・同年齢の求人給与を確認した
賃上げ交渉に使える自分の実績・貢献をリストアップした
今後のキャリアプラン(現職継続・交渉・転職)を整理した

今日からできること

まずは給与明細を比べる。昨年と今年の基本給を並べて、賃上げ率を計算してほしい。3%未満なら、それは実質減給だ。

次に、求人サイトで相場を調べる。自分と同じ職種・年齢の求人票の給与を確認し、今の給与と照らし合わせる。低ければ、それがあなたの交渉カードになる。

そして最後に、次の一手を一つだけ決める。「上司に相談する」「転職サイトに登録する」「キャリア相談を予約する」。どれでもいい。一つに絞って、今週中に手をつける。動き出した人だけが、状況を変えられる。


まとめ

2025年の平均賃上げ率は3.1%。だが物価も同じ水準で上がっており、実質的な改善はほとんどない(厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査」)。45〜49歳の賃上げ率は1.4%と物価を大きく下回り、中小企業の賃上げ率は大企業の半分以下。しかもその格差は年々広がっている。中小企業×ミドル世代という「二重の格差」は、年齢が上がるほど深刻になっていく。

正しい知識を持ち、自分の市場価値を把握したうえで、賃上げ交渉や転職検討という行動をとる。それが、自分の賃金を守る現実的な道だ。賃金交渉は労働者の正当な権利であり、それを理由とした不利益な扱いは違法だ。会社に遠慮して黙っている理由は、どこにもない。

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Marcel Strauß on Unsplash

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