台風・大雪で会社が休業になったら休業手当はもらえる?会社の義務と対処法を解説

台風が近づいた前日の夜、スマホに通知が届きました。

「明日は全社休業です。出勤は不要ですが、この日の賃金は支給しません」

こんなメッセージを受け取って、「えっ、それって許されるの?」と思いませんでしたか。

結論を先にお伝えします。会社の判断で休業にした場合は、少なくとも休業手当を受け取る権利があります。

この記事では、天災による休業で給料・休業手当をもらえる条件、「不可抗力だから払わない」という主張への対処法、休業手当が払われなかったときに取れる行動を順に説明します。

天災で会社が休業になったとき、状況別の扱い

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天災による休業といっても、状況によって扱いが変わります。まず状況ごとの考え方を確認しましょう。

物理的に出社できない場合

大雪で交通機関が完全にストップした、または地震で会社の建物が損壊して働ける状態ではない。このような状況は「不可抗力」にあたる可能性があります。不可抗力と認められた場合、会社は賃金も休業手当も支払う義務を負いません。

⚠️ 注意:不可抗力と認められるには、厳しい条件があります。「台風が来た」というだけで自動的に不可抗力になるわけではありません。詳しくは後述します。

会社が「安全のために」休業を決めた場合

実際には通勤できる状況でも、会社が「従業員の安全を守るため」と判断して休業にするケースがあります。この場合、会社は全額の賃金を払わなくてよい可能性があります。しかし、休業手当(平均賃金の60%以上)は必ず支払わなければなりません。安全のための判断は会社の裁量ですが、その日の最低限の補償は法律で義務付けられています。

「不可抗力だから一切払わない」と会社が主張する場合

会社が「天災だから不可抗力、賃金も休業手当も払わない」と主張する場合があります。しかし、不可抗力の認定はとても厳しく、多くのケースで少なくとも休業手当の支払い義務が生じます。

【実践メモ】

会社から「天災だから無給」と言われたら、まず「その日、電車は動いていたか」「自分は出社しようと思えばできたか」を確認してください。判断に迷う場合は、労働基準監督署や社労士への相談をお勧めします。

休業手当とは?労働者を守る大切な権利

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「休業手当」とは、労働基準法26条に定められた権利です。会社の都合で働けなくなったとき、最低限の生活を守るための仕組みです。同条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。ここでいう「使用者の責めに帰すべき事由」とは、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営・管理上の障害も含まれます。

「平均賃金の60%以上」とは、具体的にいくら?

平均賃金とは、直近3カ月の賃金総額を暦日数で割った金額です。たとえば、月給21万円の方で考えると、3カ月の賃金合計は63万円。これを90日で割ると1日あたり約7,000円になります。この7,000円の60%以上、つまり4,200円以上が1日分の休業手当として支払われなければなりません。

「合意があっても払わなくていい」はウソ

たとえ会社と「休業手当は払わない」という合意をしていても、その合意は無効です。労働基準法26条は強行法規です。つまり、法律の最低基準を下回る合意は認められないということです。「入社時に同意書に署名した」「就業規則にそう書いてある」という理由は通用しません。また、違反した会社には罰則(労基法120条1号)と付加金(労基法114条)が科される可能性があります。

✅ やること:「休業手当は払わない」と言われても、即座に諦めないでください。労働基準法違反の可能性があります。

「不可抗力だから払わない」は本当に通用するのか

会社が「天災だから不可抗力」と主張する場面は少なくありません。しかし、不可抗力として賃金・休業手当を免れるには、かなり高いハードルがあります。

不可抗力と認められるための条件

行政解釈によると、不可抗力と認められるには、まず原因が会社の外部から発生した事故であること、そして事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、この両方を同時に満たす必要があるとされています(厚生労働省労働基準局編『令和3年版 労働基準法(上)』379頁(労務行政))。

台風・地震・大雪などは最初の条件を満たすことが多いですが、問題は2つ目の条件です。「台風が来た」「大雪だった」というだけでは足りません。「交通機関が完全に遮断されて物理的に通勤不可能だった」「建物が損壊して就業不可能だった」など、客観的に不可能な状況が必要です。

⚠️ 注意:「台風が来そうだったから念のため休業にした」「大雪が予想されたので安全のため休みにした」という場合、2つ目の条件を満たせない可能性が高いです。この場合、少なくとも休業手当は支払う義務があります。

安全への配慮は評価すべきだが、コストを労働者に押し付けてはいけない

会社が従業員の安全を考えて自主的に休業することは、歓迎すべき判断です。ただ、その判断によって生じる経済的損失を労働者に全て負わせるのは別の問題です。出社できる状況なのに会社の判断で休業にした場合、休業手当の支払いは会社の義務です。「安全のため休みにした」という事実と、「だから給料は払わなくていい」という結論は、切り離して考える必要があります。

【実践メモ】

会社が休業を決めた日について、「その日、電車・バスは運行していたか?」「自分は出社しようと思えば出社できたか?」を確認しましょう。どちらもYESであれば、会社の主体的な判断による休業であり、休業手当を請求できる可能性が高いです。

休業手当が払われなかったときの対処法

「休業手当を払ってほしい」と会社に伝えても、応じてもらえない場合はどうすればいいでしょうか。

証拠を残す・集める

まず、記録を確保しましょう。会社からの休業連絡(メール・チャット・LINEなど)のスクリーンショット、給与明細を手元に保管してください。「いつ、どんな理由で休業の指示が出たか」が後の請求で重要な根拠になります。

会社にメールや書面で請求する

口頭だけでなく、記録が残る形で請求しましょう。「労働基準法26条に基づき、〇月〇日の休業手当の支払いを請求します」と明記することが大切です。記録が残ることで、会社も無視しにくくなります。

労働基準監督署に相談する

会社が応じない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談してください。相談は無料です。場合によっては会社への是正指導が行われます。「自分一人では言いにくい」という場合でも、行政機関を通じることで動きやすくなります。

✅ やること:「厚生労働省 総合労働相談コーナー」は全国の労働局に設置されており、電話でも相談できます。まず一本電話してみるだけでも状況が変わることがあります。

よくある疑問

台風で休業になった場合、給料は全額もらえますか?
交通機関の完全遮断や建物の損壊など、物理的に出社不可能で不可抗力と認められた場合は、賃金も休業手当も会社の支払義務はありません。ただし、会社の判断による休業なら、少なくとも平均賃金の60%以上の休業手当を受け取れます。
パート・アルバイトでも休業手当はもらえますか?
はい、もらえます。パートやアルバイトも雇用されている労働者であれば、労働基準法26条の適用を受けます。雇用形態は関係ありません。
「休業手当は払わない」という合意書にサインしてしまいました。無効になりますか?
はい、無効です。労働基準法26条は強行法規であり、これを下回る合意は法律上認められません。合意の内容にかかわらず、会社の支払義務は消えません。
休業手当を請求できる期限はありますか?
賃金請求権の時効は原則5年(当面の間は3年)です(労基法115条)。後から気づいた場合でも、時効の範囲内であれば請求できる可能性があります。早めに相談することをお勧めします。

チェックリスト:休業手当を請求できるか確認しよう

確認項目 チェック
会社から「休業」の指示があった(メール・チャット等で確認できる)
休業日、電車・バスなど交通機関は一部でも運行していた
自分は出社しようと思えばできた状況だった
休業の理由が「会社の判断・安全配慮」によるものだった
給与明細に「休業手当」の記載がない
会社から「不可抗力だから払わない」と言われた

複数に当てはまる場合は、休業手当を請求できる可能性が高いです。

今すぐできること

まず、休業の証拠を保存してください。会社からの連絡(メール・LINE・チャット)と、休業日の交通機関の運行状況を保管してください。

次に、給与明細を確認してください。休業手当が支払われているかどうかを確認してください。明細の発行を会社が拒否することは認められていません。

そして、納得できなければ相談することをお勧めします。「総合労働相談コーナー(厚生労働省)」または最寄りの「労働基準監督署」に電話・訪問相談できます。相談は無料です。

まとめ

天災による休業でも、会社の判断で休業にした場合は休業手当(平均賃金の60%以上)の支払い義務があります(労基法26条)。「不可抗力だから払わない」が通用するのは、物理的に出社不可能だったなど、行政解釈が示す2つの要件を同時に満たすごく限られた状況のみです(厚生労働省労働基準局編『令和3年版 労働基準法(上)』379頁(労務行政))。休業手当の支払い義務は強行法規であり、どんな合意があっても会社は免れられません(労基法120条1号・114条)。パート・アルバイトを含む、すべての雇用労働者に同じ権利があります。

正しい知識を持つことで、天災時の休業においても自分の収入を守るための適切な対応が取れます。払ってもらえない場合は、証拠を集めて書面で請求し、それでも応じなければ労働基準監督署に相談してください。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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