アルゼンチンの番組「Luzu TV」で誤報事件が起きました。
サッカー選手メッシの父の死去という誤情報を、生放送で流したのです。
結果として、制作スタッフ全員が即日解雇されました。スポンサー10社も契約を打ち切りました。(出典:Yahoo!ニュース)
これを見て「日本でも同じことが起きたら?」と感じた方は多いはずです。
結論から言います。日本では「ミス1つで全員即解雇」は、原則として無効です。
現役社会保険労務士として、日本の解雇ルールを労働者目線で解説します。
- 日本の解雇規制の基本(解雇権濫用法理)
- ミスで解雇が有効・無効になる条件
- 不当解雇に備えてやるべきこと
日本の解雇は「厳しいルール」で守られている
日本の労働法には、解雇権濫用法理と呼ばれるルールがあります。
「解雇権濫用法理」とは、使用者が不当に解雇権を使えないよう制限する法理のことです。
根拠は労働契約法第16条です。
解雇が有効になるには2つの条件が必要です。
①「客観的に合理的な理由」があること。
②「社会通念上相当」であること。
この2つを満たさない解雇は無効です。
アルゼンチンは日本とは異なる労働法体制をとっています。
今回の解雇が同国の法律に照らして適法かどうかは、別問題です。
ただ確かなのは、日本なら話がまったく違うということです。
ミス1つで解雇は有効か?判断の3ポイント
日本でも、ミスを理由にした解雇(懲戒解雇)は認められることがあります。
ただし、有効になるには厳しい条件があります。
①就業規則への明記
懲戒解雇には、就業規則への事前の記載が必要です。
「誤報を流したら解雇」という規定がなければ、解雇は難しくなります。
②行為の重大性と故意・過失の程度
故意(わざとやった)と過失(うっかりミス)では、扱いが違います。
今回のケースは未確認情報を検証せずに流したミスです。
日本の裁判所なら「重過失」として処分の対象にはなりえます。
ただし、それが解雇に値する重大性かどうかは別に判断されます。
③「最後の手段」の原則
これが最も重要なポイントです。
日本の裁判所は「解雇は最後の手段」という考え方を重視しています。
たとえば、初めて大きなミスをした社員を即日解雇した場合。
裁判所はほぼ確実に「解雇権の濫用」と判断します。
過去に注意・指導を繰り返してもなお改善しない、という経緯が求められます。
「1回のミス=即解雇」が認められるのは、会社の存亡にかかわる故意の重大行為などに限られます。
「全員解雇」は日本でさらに難しい
今回、Luzu TVでは制作関係者が「全員」解雇されました。
司会者から若手スタッフまで一括解雇です。
日本でこれをやると、ほぼ確実に問題になります。
解雇は個人ごとに理由と責任の程度を評価しなければなりません。
誰がどの判断をし、誰がどこまで関与したのか。
それを無視した一括解雇は「客観的合理的理由」を欠くと判断されます。
カメラマンや音声スタッフが、誤報の意思決定に関与していたとは考えにくい。
それでも「全員解雇」とするのは、日本の裁判所には通じません。
よくある疑問 Q&A
- Q: 会社に大きな損害を与えたミスなら解雇は有効になる?
- A: 損害の大きさは重要な判断要素です。ただし、それだけで解雇が有効になるわけではありません。故意か過失か、過去の指導経緯、本人の反省度合いなどを総合的に判断します。
- Q: 試用期間中のミスでも解雇は難しいの?
- A: 試用期間中でも解雇権濫用法理は適用されます。ただし、試用期間は「適性を見極める期間」という性質があります。そのため、本採用後より解雇が認められやすい面はあります。
- Q: 不当解雇を告げられたら、どこに相談すればいい?
- A: まず都道府県の労働局・労働基準監督署に相談してください。無料で対応してもらえます。状況によっては弁護士や社会保険労務士への相談も有効です。
すぐやること 3つ
- 就業規則の懲戒規定を確認する(解雇事由に何が書いてあるかチェック)
- ミスをした場合は経緯・状況をすぐメモしておく(後の交渉で役立つ)
- 解雇通知は必ず書面で受け取る(口頭だけでは証拠が残らない)
まとめ
- 日本では「ミス1つで全員即解雇」は、解雇権濫用として原則無効になる
- 懲戒解雇が有効になるには「就業規則への明記」「行為の重大性」「最後の手段」の3条件が必要
- 不当解雇を告げられたら、書面で理由を求め、労働局や専門家に相談する
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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