パーソル総合研究所の調査で、「静かな退職」が急増していることがわかりました。辞めないのに、心は職場を離れている。そんな働き方が、いま広がっています。
結論から言う。これは労働者と会社、どちらにとっても放置できない問題だ。
現役の社労士として、なぜこれが起きているのか、そして何をすればいいのかを解説します。
出典:Yahoo!ニュースによると、10年間の調査で「仕事を通じた成長が重要」と考える正社員が初めて7割を下回りました。特に女性・シニア層で無気力型が急増している一方、男性20代には下げ止まりの兆しも見られるとのことです。
「静かな退職」とは何か?その実態を解説
静かな退職とは、会社を正式に辞めるわけではないものの、仕事への意欲を失った状態のことです。
具体的には、こんな行動が表れます。
- 最低限の業務しか行わない
- 新しいスキルの習得に関心を示さない
- 同僚とのコミュニケーションを避ける
- 残業や追加業務を極力断る
つまり、体は会社にあっても、気持ちはもう外を向いている。そういう状態です。
調査結果から見えてくる深刻な実態
今回の調査で、社労士として一番引っかかったのはここです。
女性・シニア層で無気力型が急増している。
これを「最近の若い人は」式の世代論で片付けるのは間違いだ。本人のやる気の問題ではない。
能力があっても活かす場が与えられない職場の構造。評価制度のゆがみ。そこに原因があると考えるほうが自然です。
一方で、男性20代には下げ止まりの兆しがあるという。これは興味深い。厳しい就職難をくぐっていない世代が、改めて「成長したい」という気持ちを持ち始めているのかもしれません。
なぜ「静かな退職」が生まれるのか?5つの原因
これまで多くの職場を見てきました。その経験から、主な原因を5つに絞ります。
1. 成長機会の不平等
昇進や昇格のチャンスが、特定の層にだけ偏っている。これが最大の要因です。
たとえば、同じ成果を出していても、女性やシニアというだけで重要なポジションの候補から外される。そんなケースは今も珍しくありません。
頑張っても道が開けないとわかれば、意欲が削がれる。当然の反応です。
2. 評価制度の不透明さ
何を、どう頑張れば評価されるのか。それが見えない。
こうなると人は「だったら最低限でいい」と判断します。サボりではなく、合理的な自己防衛です。
評価基準があいまいな職場ほど、静かな退職は生まれやすい。
3. 過度な業務負荷
慢性的な人手不足で、一人あたりの仕事量が膨らんでいます。
疲れ切った人が、自分を守るために手を抜く。意欲の問題ではなく、これ以上は無理だという体のサインです。
4. コミュニケーション不足
リモートワークが広がり、同僚との何気ない雑談が減りました。
「困っているのに誰にも言えない」。その孤立感が、静かな退職を後押ししているケースも多い。
5. 将来への不安
終身雇用という前提が崩れ、会社への帰属意識が薄れています。
「この会社で頑張っても、見返りがあるとは思えない」。そう感じる人が確実に増えています。
労働者ができる対策と会社への要求
では、もし自分が静かな退職に陥っていたら、どうすればいいのか。
まずは自分の状況を客観視する
いまの仕事への向き合い方を、一度立ち止まって振り返ってください。
次のチェック項目に当てはまるものが多いほど、静かな退職の状態に近いと言えます。
- 新しい業務を避けている
- 会議で発言しなくなった
- 同僚との雑談を避けている
- スキルアップの勉強をしていない
- 転職を考えることが増えた
会社への建設的な要求
原因が職場側にあるなら、まずは会社に改善を求める。これが先です。いきなり辞める前に、できることがあります。
面談では、こんな点を確認してください。
- 昇進・昇格の条件は何か
- どのようなスキルが評価されるのか
- 研修制度や学習支援はあるか
- 業務配分は適切か
自分でできる意欲回復の方法
会社が動くのを待たず、自分の側から状況を変える方法もあります。
おすすめは、小さな成功体験を積み重ねること。いきなり大きく変えようとしなくていい。
たとえば、毎日の業務に改善点を一つだけ見つける。
同僚に「助かった、ありがとう」とひと言かける。
こういう小さな行動の積み重ねが、消えかけた意欲を取り戻すきっかけになります。とはいえ、それでも何も変わらないなら、職場そのものに見切りをつける判断も間違いではありません。
よくある疑問 Q&A
- Q: 静かな退職は法的に問題ありますか?
- A: 最低限の業務を行っている限り、法的な問題はありません。ただし、明らかなサボタージュは懲戒処分の対象になる可能性があります。
- Q: 会社から改善要求された場合はどう対応すべきですか?
- A: まず具体的な改善点を聞き、現実的に対応可能かを判断しましょう。不当な要求であれば、労働組合や社労士に相談することをお勧めします。
- Q: 転職を考える目安はありますか?
- A: 改善への努力を3か月続けても状況が変わらない場合は、転職を検討する時期かもしれません。ただし、感情的にならず冷静に判断することが大切です。
すぐやること 3つ
- 現在の仕事への取り組み方を客観視する – チェックリストで自分の状態を確認
- 上司との面談を申し込む – 評価基準や成長機会について具体的に質問
- 小さな改善行動を始める – 毎日一つずつ仕事の質を上げる取り組みを実践
まとめ
- 静かな退職は労働者・会社双方にとって深刻な問題
- 成長機会の不平等や評価制度の不透明さが主な原因
- まずは建設的な対話で改善を求めることが重要
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