「シフト制」とだけ書かれた雇用契約書は不十分:確認すべき記載事項を社労士が解説

「日によって早上がりができる条件で採用されたけど、もらった書類には勤務時間がよくわからない書き方がされていた……」そんな経験はありませんか?

勤務時間が日によって異なる場合でも、会社は始業・終業時刻を書面で明確にする義務があります。曖昧な書き方のまま働き始めると、後から思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。この記事では、労働基準法が定める「始業・終業時刻の明示義務」の中身、勤務時間がバラバラでも認められる記載の形、書類が曖昧なままだと起こりやすいトラブルと対処のポイントを順に説明します。

「口頭で話したから大丈夫」が危ない理由

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採用面接や内定後のやり取りで、勤務時間について口頭で確認することはよくあります。でも、その合意が書面になっていないと、後から「そんな約束はしていない」と言われても反論しにくくなります。労働基準法第15条1項は、会社が労働者と雇用契約を結ぶ際に、賃金・労働時間などの主要な条件を書面で交付することを義務づけています(労基則5条4項)。この規定には罰則があり、違反した会社は30万円以下の罰金を科される可能性があります。また、労基則5条2項は「労働者に対して明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならない」とも規定しています。

📌 ポイント:書面での交付はあなたが「求める権利」ではなく、会社が「果たすべき義務」です。まだ受け取っていない場合は、今すぐ会社に交付を求めてください。

なお、パートタイム・有期雇用労働者の場合は(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律6条)、一般の労働者向けの項目に加えて、昇給の有無・退職手当の有無・賞与の有無についても明示する義務があります。受け取った書類にこれらの記載があるかどうかも確認してみてください。

勤務時間が一定でない場合、書類にはどう書かれるべきか

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「日によって長い日もあれば短い日もある」というように、勤務時間が固定されていない場合、一律の始業・終業時刻を書くことはできません。だからといって「シフト制」とだけ書いてお茶を濁すのもNGです。こうした場合に認められる記載の方法を、4つの考え方で整理します。

シフト表で事前に通知する形

どの曜日に何時間働くかが固定しにくい場合、「シフト表によって通知する」という方法が認められています。ただし重要なポイントがあります。「いつまでにシフトを通知するか」が書かれていなければなりません。「前月25日までに翌月分を通知」のように、通知期日が具体的に書かれているか確認してください。

✅ やること:書類に「シフト制」とある場合、その近くに「通知期日」が書かれているかをチェックしてください。書かれていなければ、会社に追記を求める根拠になります。

曜日ごとに始業・終業時刻を書く

勤務パターンが曜日で固定できる場合は、最もシンプルで明確な記載方法です。例えば「月・水・金:10:00〜18:00、火・木:10:00〜14:00」のように、曜日ごとに時刻を書く形です。あなたのスケジュールがある程度決まっているなら、この形で記載するよう求めるのが一番トラブルになりにくいです。

長い時間を基本にして、短い時間を例外扱いにする

標準的な勤務時間を長めに設定し、本人の申し出があれば短縮を認める形です。「原則10:00〜18:00、本人の事前申出がある場合は10:00〜14:00」のように記載します。この場合、書類の「所定時間を超える労働の有無」の欄は「なし」となります。

短い時間を基本にして、長い時間を例外扱いにする

反対に、短時間勤務を基本として、余裕のある日は長く働く形です。「原則10:00〜14:00、長時間勤務が可能な日は10:00〜18:00まで延長」のように書きます。

⚠️ 注意:この形の場合、書類の「所定時間を超える労働の有無」の欄は「あり」でなければなりません。「なし」のままでは記載不備の可能性があります。時間が延びたときの賃金の扱いも確認しておきましょう。

曖昧な書類が引き起こすトラブル事例

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「書類は後で直します」と言われたまま働き続けると、残業代が支払われない(書面に所定時間が明記されていないと残業代計算の起点が不明確になり、会社側に都合よく解釈される余地が生まれます)、シフトを大幅に削られても文句が言えない(どの程度の勤務が保証されているか書面で確認できないと、削られた分の賃金を主張するのが難しくなります)、「聞いていた条件と違う」と言っても証拠がない(口頭合意は証明が困難で、書面があってこそ「約束が違う」と主張できます)といったトラブルが起こりやすくなります。

📌 ポイント:労働条件通知書に書かれた内容は、後から会社が一方的に変更することは原則としてできません。最初にきちんと確認しておくことが、あなたの権利を守る最も確実な一手です。

よくある疑問

労働条件通知書を受け取っていません。どうすればいいですか?
会社に「労働条件通知書を書面で交付してほしい」と伝えてください。労基法15条1項・労基則5条4項上の義務ですので会社は断れません。応じない場合は、労働基準監督署への相談が有効です。
書類に「シフト制」とだけ書いてあります。これで問題ありませんか?
記載が不十分な可能性があります。少なくとも「いつまでにシフトを通知するか(通知期日)」が明記されていることが望ましいです(労基則5条1項2号)。会社に追記・再発行を求めてください。
採用後に勤務時間の条件を一方的に変えられることはありますか?
原則として、会社が一方的に変更することはできません(労働契約法9条)。変更には労働者の同意が必要です。一方的に変えられた場合は書面で異議を示し、専門家に相談することをお勧めします。
パートタイムでも労働条件通知書をもらえますか?
はい。雇用形態にかかわらず、会社には書面で労働条件を明示する義務があります(労基法15条1項)。パート・有期雇用の場合は、一般の項目に加えて昇給・退職手当・賞与の有無についても明示義務があります(パートタイム・有期雇用労働法6条)。

入社前・入社時に確認したいチェックリスト

確認項目 チェック
書面(労働条件通知書または雇用契約書)を受け取っているか
始業・終業時刻が具体的に記載されているか
勤務時間が日によって異なる場合、その基準(曜日・シフト通知期日など)が明記されているか
「所定時間を超える労働の有無」の欄が正しく記入されているか
(パート・有期の場合)昇給・退職手当・賞与の有無が記載されているか
口頭で確認した条件と書面の内容が一致しているか

今日からできること

まず、手元の労働条件通知書または雇用契約書を取り出し、始業・終業時刻の欄を確認してください。

次に、採用時に口頭で確認した条件と書面の記載が一致しているか照らし合わせてください。

そして、不明点や記載不備があれば、採用担当者に書面での確認・再発行を求めてください。

まとめ

始業・終業時刻の書面明示は、労働基準法第15条1項・労基則5条1項2号で会社に義務づけられています。勤務時間が日によって異なる場合でも、曜日ごとの記載・シフト通知期日付きのシフト制・原則時間と例外の組み合わせなど、具体的に書く方法があります。「シフト制」とだけ書かれた書類はシフト通知の期日まで確認が必要です。書類が曖昧なままだと、残業代の未払いやシフト削減などのトラブルに対抗しにくくなります。もらっていない・内容が不明な場合は、会社に交付・追記を求める権利があります(労基則5条2項)。

正しい知識を持ち、書面で条件を確認することで、勤務時間に関するトラブルを未然に防ぐことができます。疑問な点は労働基準監督署や社労士に相談してください。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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