「来年65歳になるけど、給料から引かれる保険料って変わるの?」
定年延長や再雇用でシニアになっても働き続ける方は多いです。
手取りがどう変わるかは、大切な問題です。
結論からいいます。65歳になると介護保険料の給与天引きがなくなります。70歳になると厚生年金保険料の支払いも終わります。
現役の社会保険労務士として、年齢ごとの変化をわかりやすく整理します。
- 65歳で給料の天引きが変わる保険の仕組み
- 70歳で厚生年金保険料の支払いが終わる理由
- 年齢が変わっても変わらない保険料の種類
まず整理しよう:4種類の社会保険料
給与から天引きされる主な社会保険は4種類あります。「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」です。このうち年齢によって変化するのは、介護保険と厚生年金の2つだけです。
65歳を迎えたとき:介護保険料の天引きが終わる
40歳から64歳の間、介護保険料は毎月給与から天引きされています。65歳という節目で、この仕組みが再編されます。
給与からの控除はなくなりますが、保険料の負担そのものが消えるわけではありません。65歳以上は介護保険の第1号被保険者となり、保険料の収め先が市区町村に移るのです。
65歳以降の介護保険料、どうやって払うの?
原則として、年金から自動的に天引きされます。年金の受給額が少ない場合は、口座振替や納付書での支払いになります。自分から特別な手続きをする必要はありません。市区町村が自動的に手続きを進めてくれます。
【実践メモ】
介護保険料の天引きが終わった後も、年金から引かれる保険料の金額は市区町村によって異なります。気になる場合は、お住まいの市区町村の窓口または電話で「65歳以降の介護保険料の額と支払い方法」を確認しておきましょう。老後の家計管理に役立ちます。
70歳を迎えたとき:厚生年金保険料の支払いが終わる
厚生年金制度には、加入対象となる年齢の上限が定められています。70歳がその境界線です。この年齢に達すると被保険者としての資格が終了し、それ以降は保険料を納める義務も生じません。
70歳以降も会社員として働いたらどうなる?
保険料の支払いはなくなっても、会社員として働き続けられます。「70歳以上被用者」という区分になります。この区分の人は、引き続き働いた実績が将来の年金額の計算に反映されます。保険料を払わなくても、年金の受取額が増える仕組みが続くという点は覚えておきましょう。
【実践メモ】
70歳を過ぎても厚生年金保険料が引かれている場合は、会社側の処理ミスが疑われます。過払いとなった保険料は、会社に申し出ることで返還してもらえます。給与明細は少なくとも1年分は手元に保管しておきましょう。
年齢が変わっても変わらないもの:雇用保険と健康保険
雇用保険:65歳以上でも全員が対象
2020年4月という節目を境に、雇用保険料の取り扱いが一本化されました。それ以前には年齢による免除の仕組みが存在しましたが、現在はその区別がなくなり、年齢を問わずすべての被保険者が雇用保険料を納める制度になっています。
健康保険:75歳まで年齢による変化なし
健康保険料には年齢による免除制度がありません。会社の健康保険に加入している間は、何歳になっても保険料がかかります。75歳になると「後期高齢者医療制度」に移行します。その時点で健康保険の被保険者資格がなくなり、保険料の仕組みが変わります。
年齢ごとの変化を一覧で確認しよう
ここまでの内容を、シンプルな表にまとめます。
| 保険の種類 | 変化のタイミング | 内容 |
|---|---|---|
| 介護保険料 | 65歳 | 給与天引きが終わる(市区町村・年金天引きへ切替) |
| 厚生年金保険料 | 70歳 | 支払い義務がなくなる(手取りが増える) |
| 雇用保険料 | 変化なし | 年齢問わず継続(2020年4月以降) |
| 健康保険料 | 75歳まで変化なし | 75歳で後期高齢者医療制度に移行 |
65歳と70歳のタイミングで、給与の手取りは少し増えます。ただし介護保険料は「払わなくてよくなった」わけではありません。「払い方が変わった」だけで、保険料の負担はその後も続きます。
よくある疑問 Q&A
- Q: 65歳を過ぎても介護保険料が給与から引かれています。どうすればいいですか?
- A: 会社側の処理ミスの可能性があります。総務・人事担当に誕生日と現在の引き落とし状況を伝え、確認を求めてください。過払い分がある場合は返還を求める権利があります。
- Q: 70歳以降も会社員として働けますか?厚生年金はどうなりますか?
- A: 70歳以降も会社員として働けます。厚生年金の「被保険者」にはなれなくなりますが、「70歳以上被用者」として引き続き年金額の計算に働いた実績が反映されます。保険料の支払い義務はなくなります。
- Q: 65歳を超えても雇用保険料が引かれています。これは正しいですか?
- A: 正しい処理です。2020年4月以降、65歳以上の労働者にも雇用保険料が適用されています。65歳以上の方は「高年齢被保険者」として、退職時に高年齢求職者給付金を受け取る権利があります。
- Q: 健康保険料はいつ終わりますか?
- A: 75歳になると後期高齢者医療制度に移行します。それまでは年齢による保険料の免除はなく、会社の健康保険に加入している間は保険料の支払いが続きます。
チェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 65歳の誕生日翌月の給与明細で介護保険料がゼロになっているか | □ |
| 70歳の誕生日翌月の給与明細で厚生年金保険料がゼロになっているか | □ |
| 雇用保険料は65歳以降も継続して天引きされているか(正常な状態) | □ |
| 健康保険料は75歳になるまで継続して天引きされているか(正常な状態) | □ |
| 65歳以降の介護保険料が年金から引かれているか確認したか(年金受給者の場合) | □ |
すぐやること 3 つ
- 65歳・70歳・75歳の誕生日をカレンダーにメモしておく。それぞれのタイミングで保険料の変化が起きます。事前に把握しておくと安心です。
- 各節目の翌月に給与明細を必ず確認する。保険料の変化が正しく反映されているかを自分でチェックしてください。会社任せにせず、自分の目で確かめましょう。
- おかしいと思ったらすぐ総務・人事に問い合わせる。過払いがあった場合は返還を求める権利があります。遠慮せずに確認してください。
まとめ
- 65歳になると、介護保険料の給与天引きがなくなる(市区町村・年金天引きへ切替)
- 70歳になると、厚生年金保険料の支払い義務がなくなる
- 雇用保険料は2020年4月以降、65歳以上でも全員が支払う
- 健康保険料は75歳になるまで、年齢による変化はない
- 節目の翌月に給与明細を確認し、処理ミスがないかチェックすることが大切
老後も安心して働き続けるために、社会保険の仕組みを正しく理解しておきましょう。手取りとお金の流れを自分でつかんでおくことが、老後の生活を守る第一歩です。
※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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