「陰気な印象」で内定取消し→違法|あなたの内定を守る3つの行動

採用・試用期間

「内定をもらっていたのに、突然取り消された。」

そんな状況に直面している方はいませんか。

頭が真っ白になる気持ち、よくわかります。でも、あきらめる必要はありません。

結論から言います。採用内定通知が届いた時点で、法律上は労働契約がすでに成立しています。

つまり、内定取消しは法律上「解雇」と同じ扱いです。

会社が簡単にできるものではありません。

この記事では、現役の社会保険労務士が以下の点を解説します。

  • 採用内定の法的な意味(なぜ取消しが難しいのか)
  • 取消しが合法になる場合とそうでない場合
  • 内定取消しを告げられたときの具体的な対処法

採用内定通知が届いた瞬間、労働契約は始まっている

記事関連画像

「まだ入社してないし、内定は仮のものでは?」

そう思っている方は多いと思います。

ところが、法律はそう見ていません。

内定通知=労働契約の「承諾」

あなたが求人に応募した時点で、「この会社で働きたい」という意思を示したことになります。

これは法律的に「労働契約の申込み」です。

そして、会社から届いた採用内定通知は、その申込みへの「承諾」にあたります。

申込みと承諾がそろえば、契約は成立します。民法の基本です。

📌 ポイント:最高裁は「採用内定通知の時点で、入社日を始期とする労働契約が成立する」という判断を示しています(大日本印刷事件・最高裁昭和54年7月20日判決)。内定を受けたあなたは、すでに「その会社の従業員になることが決まった人」なのです。

ただし、この労働契約には「解約権の留保」がついています。

「解約権の留保」とは、一定の条件が満たされた場合に限り、会社が契約を解消できる権利のことです。

「絶対に取り消せない」わけではありませんが、取り消しには厳しい条件があります。

【実践メモ】

内定通知書・誓約書・条件通知書・メールのやり取りなど、内定に関する書類はすべて保管してください。内定が成立したことを証明する大切な証拠になります。

内定取消しが「合法」になる条件は、実はかなり高いハードル

記事関連画像

内定取消しは、法律上「解雇」と同じです。

そのため、労働契約法16条の「解雇権濫用法理」が適用されます。

「解雇権濫用法理」とは、合理的な理由がなく、社会通念上も相当でない解雇は無効とするルールです。

取消しを正当化するには、これだけの条件が必要

最高裁の考え方によると、内定取消しが正当と認められるためには、内定を出した時点では会社が知り得なかった事情を理由とするものであり、かつそれを取消し事由とすることが客観的にも社会通念上も納得できる内容でなければなりません。

「なんとなく印象が悪い」「社風に合わない気がする」といった曖昧な理由は、このハードルを超えられません。

また、内定時点で少し調べれば分かっていたような事情も、正当な理由にはなりません。

⚠️ 注意:大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)では、会社が「当初から陰気な印象があった」という理由で内定を取り消しました。しかし裁判所はこれを認めませんでした。「印象」のような主観的な評価は、正当な取消し理由にはならないのです。

取消しが正当と判断されやすいケースとは

逆に、取消しが認められやすいケースもあります。

  • 内定後に発覚した、採用選考での重大な虚偽の申告(学歴詐称など)
  • 内定後に生じた、就労に著しく支障をきたす事情
  • 内定時点では予測不可能だった、経営上の重大な変化(ただし要件が非常に厳しい)

「経営が少し苦しくなったから」だけでは、正当な理由とは認められません。

過去には、採用を一括取り消しした会社が問題視されたケースも多くあります。

【実践メモ】

取消しの理由を口頭で告げられた場合は、その場でメモを取りましょう。可能であれば、後日「書面での理由説明」を求めることも有効です。理由が曖昧であれば、それ自体が取消しの不当性を示す材料になります。

内定取消しを告げられたら、この順番で動く

記事関連画像

突然「内定を取り消す」と言われたら、誰でも動揺します。

でも、焦る必要はありません。

冷静に、次の3ステップを踏みましょう。

ステップ①:記録をすぐに残す

取消しの通知を受けた日時・方法・告げられた理由を、できるだけ早く記録してください。

メールや書面での通知なら、必ず保管します。

口頭だった場合は、直後にメモを作成してください。

✅ やること:内定に関する書類(内定通知書・誓約書・条件通知書・メールのやり取りなど)をすべて一か所にまとめておきましょう。後から「あの書類どこやった?」とならないように。

ステップ②:会社に書面で理由を求める

取消しの理由が曖昧だった場合、会社に書面での説明を求めることができます。

「取消しの理由を書面でご説明いただけますか」と、感情的にならず、事務的に伝えましょう。

書面を求めること自体は、何ら問題のない正当な行為です。

ステップ③:無料の相談窓口に連絡する

一人で抱え込まず、早めに相談することをおすすめします。

  • 総合労働相談コーナー:各都道府県労働局に設置。無料で利用できます。
  • 労働基準監督署:労働関係のトラブル全般の相談窓口。
  • 社会保険労務士・弁護士:法的判断が必要な場合は専門家へ。
📌 ポイント:新卒者の内定取消しは国も問題視しています。厚生労働省はハローワークを通じた対応・指導を行っています。「内定取消しを受けた」と申し出ることで、就職支援を受けられる場合もあります。

「内々定」の段階で話が壊れた場合は?

「内定」の前に「内々定」をもらうことがありますよね。

では、内々定の段階で破棄された場合はどうなるでしょうか。

内々定は、正式な内定とは法的に区別されます。

そのため、内定取消しと同様の「解雇」扱いにはなりません。

ただし、「だから何をしてもいい」とはなりません。

「もうすぐ内定が出る」という期待を不当に裏切ったとして、損害賠償(不法行為)が認められた裁判例もあります。

⚠️ 注意:内々定の破棄であっても、経緯によっては法的な問題になる可能性があります。「口約束だから仕方ない」とあきらめず、状況を整理して専門家に相談することをおすすめします。

よくある疑問 Q&A

Q: 内定取消しを拒否したら、入社後に嫌がらせされませんか?
A: 正当な権利行使を理由とした不利益な扱いは、それ自体が違法です。「抗議したから」という理由で報復的な扱いをする会社は、追加の法的問題を抱えることになります。ただし、実際の職場環境が不安なら、専門家と一緒に状況を整理してみてください。
Q: 内定取消しを争うには、弁護士に頼まないとダメですか?
A: まずは無料の相談窓口(労働局・労働基準監督署など)を利用してみてください。状況によって社労士や弁護士への相談が有効な場合もあります。最初から費用を心配しすぎる必要はありません。
Q: 損害賠償はいつまでに請求できますか?
A: 不法行為による損害賠償請求の時効は、損害を知ってから3年です。時間が経つほど証拠も集めにくくなるため、早めに動くことをおすすめします。
Q: 会社都合の内定取消しなのに「自己都合」扱いにされそうです。
A: 会社側の都合による内定取消しは、自己都合退職には該当しません。雇用保険の扱いについてもハローワークに相談することで、正しい認定を受けられる場合があります。

チェックリスト:内定取消しを受けたときの確認事項

確認項目 チェック
内定通知書・誓約書・条件通知書を保管している
取消しの理由を書面または記録として残した
取消しの日時・方法・担当者名をメモした
会社に書面での理由説明を求めた(または検討した)
労働局・労働基準監督署など無料窓口を調べた
ハローワークへの就職支援相談を検討した

すぐやること 3 つ

  1. 証拠を集めて保管する:内定通知書・メール・誓約書など、関係するすべての書類を手元にまとめる。
  2. 取消しの理由と経緯を記録する:いつ・誰から・どんな理由で告げられたかをメモに残す。口頭だった場合も、直後に書き留めることで証拠になる。
  3. 無料の相談窓口に連絡する:総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)に電話またはオンラインで相談する。一人で悩まず、プロの意見を聞くことが第一歩。

まとめ

  • 採用内定通知が届いた時点で、法律上は労働契約が成立している
  • 内定取消しは「解雇」と同じ扱い。合理的な理由がなければ違法になる
  • 「印象が悪い」「なんとなく合わない」といった曖昧な理由では取り消せない
  • 内定後に判明した重大な虚偽申告などは、正当な取消し理由になりうる
  • 内々定の破棄も、状況によっては法的問題になる可能性がある
  • 取消しを受けたら「記録→理由確認→専門家相談」の順で動く

内定を取り消されるという経験は、精神的にも経済的にも大きなダメージです。

「自分が悪かったのかな」と責める必要はありません。

あなたには正当な権利があります。その権利を使う勇気が、あなたのキャリアと生活を守ります。

正しい知識を持って一歩踏み出すことが、今のこの状況から抜け出す最初の一手です。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Myznik Egor on Unsplash

タイトルとURLをコピーしました