「106万円の壁が撤廃されるって聞いたけど、本当に損しないの?」
そう聞かれたら、正直に答えます。損するかどうかは、あなたの状況次第です。
結論から言います。106万円の壁は段階的に撤廃される方向です。でも「壁がなくなる=手取りが増える」ではない。ここを混同すると、判断を誤ります。
社会保険労務士として、労働者目線で整理します。難しい話は抜きにして、「自分はどうすればいいか」がわかるように書きました。
参考:出典:leadbrain.co.jp「106万円の壁撤廃」関連記事
「106万円の壁」とは何だったのか、3分で整理する
まず前提から確認します。
「106万円の壁」とは、パート・アルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に加入しなければならない収入ラインのことです。年収がこのラインを超えると、自分で社会保険料を払う義務が生じる。手取りが減る。だから「壁」と呼ばれてきました。
この壁のせいで、何が起きていたか。
「106万円を超えないように」と意図的に勤務時間を削るパート労働者が続出しました。本当はもっと働きたいのに、働けない。企業は人手不足に悩み、国の保険料収入も伸び悩む。誰も得しない構造でした。
壁は、労働者にとっても社会にとっても、抱えてきた課題でした。撤廃の議論が進んでいるのは、そういう背景があるからです。
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壁がなくなっても、すぐ得にはならない。正直に解説します
ここが一番の誤解ポイントです。
壁が撤廃されると、これまで「要件以下」に抑えていた働き方でも社会保険加入が必要になる場面が増えてきます。社会保険に加入すると、給与から健康保険料と厚生年金保険料が天引きされます。保険料率はおおよそ給与の15%前後。これは避けられません。
ただ、デメリットだけではありません。
社会保険に加入すると、将来もらえる年金が増えます。また、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金(最大1年6ヶ月)の対象にもなります。国民健康保険にはないメリットです。
短期の手取り減少と、長期の保障・年金増加。この両方を見た上で判断する必要があります。「損か得か」は、今の収入水準・年齢・家族構成によって変わります。
状況別・損をしない働き方の考え方
壁の撤廃後、どう動けばいいか。状況別に整理します。
パターン①:もっと稼ぎたい人
これまで「106万円を超えないように」と時間を削ってきた方にとっては、むしろ動きやすくなります。
収入総額が増えれば、保険料を引いても手取りは増えます。「本当はもっと働きたかった」という方は、時間を増やす選択肢を前向きに検討できます。
保険料の負担が始まるタイミングと、収入増加のバランスを確認しておくのが賢明です。
パターン②:今の収入・時間を維持したい人
「働き方は変えたくない」という方も多いはずです。
この場合、社会保険の加入要件(週20時間・月8万8,000円など)を下回るように勤務条件を調整できれば、これまで通りの働き方を続けられる可能性があります。ただし、法改正の内容次第でこの要件自体が変わることもあるため、最新の情報を都度確認することが必要です。
パターン③:配偶者の扶養に入り続けたい人
ここが最も注意が必要なポイントです。
「106万円の壁」と「130万円の壁」は別の制度です。混同している方が非常に多い。
130万円の壁は、配偶者の健康保険の扶養に入れるかどうかの基準です。106万円の壁が撤廃されても、130万円の壁は別途議論されています。
106万円の壁がなくなっても、年収が130万円を超えると配偶者の扶養から外れる可能性は残ります。この点は絶対に混同しないでください。
よくある疑問 Q&A
- Q:106万円の壁はいつ撤廃されるのですか?
- A:政府の方針として撤廃が検討されていますが、具体的な施行時期は審議中です。2026年以降の法改正を見据えて準備を進めることをおすすめします。最新情報は厚生労働省のサイトで確認してください。
- Q:社会保険に加入すると、すぐ損になりますか?
- A:短期的には手取りが減る場合があります。ただし、将来の年金額が増える・傷病手当金がもらえるなどのメリットもあります。一概に「損」とは言えません。
- Q:会社が社会保険に加入させてくれない場合はどうすればいいですか?
- A:加入要件を満たしているにもかかわらず会社が加入手続きをしない場合は、違法になる可能性があります。管轄の年金事務所か、社会保険労務士に相談してください。
今日やるべきこと3つ
- 今の勤務条件を書き出す:週の勤務時間・月収・会社の従業員数を確認しましょう。社会保険の加入要件に当てはまるかどうかが、まず判断の起点になります。
- 「106万円の壁」と「130万円の壁」を区別して理解する:混同すると誤った判断につながります。扶養の仕組みについて、会社の担当者や社労士に確認しておくと安心です。
- 自分の優先事項を決める:「収入を増やしたいのか」「今の時間を守りたいのか」「扶養を維持したいのか」。この3つのどれを優先するかを整理しておくと、法改正が起きても迷わずに動けます。
まとめ
- 106万円の壁は撤廃の方向だが、130万円の壁は別の問題。混同しないことが大切
- 社会保険加入で手取りは短期的に減るが、将来の年金・傷病手当金など長期の保障が充実するメリットもある
- 「損か得か」は人によって違う。自分の働き方の希望を整理してから判断するのが正解
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

