就職活動の最中、採用担当者から個人的な食事に誘われた。私的な連絡先をしつこく聞かれた。断れば不採用になるかもしれない。そう思うと身動きが取れなくなる。
就活中のセクハラは、法律で禁止された行為です。
2026年10月1日、男女雇用機会均等法に新しい条文が施行されます。就活セクハラに対する企業の対応義務が、初めて法律にはっきり書き込まれました。
この記事で押さえるのは3つです。就活セクハラとは何を指すのか。2026年施行の新法であなたの権利がどう守られるのか。そして被害を受けたとき、今すぐ何をすればいいのか。順番に見ていきます。
就活セクハラとは?どんな行為が対象になるか
就活セクハラとは、企業の社員が採用活動の場で行う性的な言動を指します。採用担当者やリクルーターは、あなたの合否を左右できる立場にいます。その力関係を背景にした不適切な言動。これが就活セクハラの本質です。
セクハラに当たりうる行為の例
たとえば、業務と関係のない食事や飲み会への繰り返しの誘い。「恋人はいるの?」といった私生活への踏み込んだ質問。SNSやメッセージでの業務外の個人的な連絡。外見や性別に絡めた発言。面談や説明会での不必要な身体的接触。こうした言動は、いずれも就活セクハラに当たりうるものです。
「断れない状況」を利用した行為は特に悪質
就活生には内定がほしいという切実な事情があります。その心理につけ込んだ言動は、それだけで悪質度が高い。相手が立場を分かったうえでやっているなら、なおさらです。
2026年新法で就活生の権利はどう変わるか
2026年10月1日、男女雇用機会均等法第13条に「就活セクハラに関する雇用管理の措置等」が新設されます。就活セクハラに対する企業の義務を、初めて法律で明確にしたものです。
企業に課される義務
新法のもとで、企業には3つの義務が課されます。1つ目は、就活セクハラが起きないよう防止体制を整えること(均等法第13条1項)。2つ目は、被害を申し出た求職者の相談を受け付け、事実確認や必要な措置を取ること(同条1項)。3つ目は、被害を訴えたことを理由に採用で不利に扱ってはならないこと(同条2項)。この3点です。
「訴えても無駄」はもう通用しない
これまで、就活中のハラスメントに対する企業の義務は曖昧でした。だから「訴えても無駄」と諦める人が多かった。新法施行後は違います。相談を放置した企業そのものが、法律違反になります。
【実践メモ】
2026年10月の施行前でも、現行の男女雇用機会均等法(第11条等)が使える場面があります。「まだ新法じゃないから」と諦めないでください。今この瞬間も、相談窓口を使う権利はあなたにあります。
被害を受けたときに取るべき行動
記録を残す(最重要)
まずやるべきは、記録です。これが一番大事。いつ・どこで・誰から・どんな言動を受けたか。事実をそのままメモします。そのとき自分がどう感じたかも一緒に書き留めておくと、後で効いてきます。
信頼できる人に話す
家族、友人、大学のキャリアセンター。信頼できる相手に打ち明けてください。一人で抱え込む必要はありません。「こんなことがあった」と第三者に伝えた事実そのものが、後から記録の一つになります。
企業の相談窓口へ申し出る
企業の人事部門や相談窓口に連絡する方法もあります。新法施行後、企業はこの相談に適切に対応する義務を負います。申し出た日時と相手の名前は、必ず控えておきましょう。
外部の相談窓口を利用する
企業への申し出が難しいとき、あるいは対応が不十分だったとき。外部機関に相談できます。均等法に関する相談・申告を無料で受け付けているのが、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。ハローワークでも就活中のトラブルの相談に乗ってくれます。大学のキャリアセンターや学生相談室なら、大学経由で企業側に連絡してもらえる場合もあります。
【実践メモ】
労働局への相談は無料です。最初は匿名でも話を聞いてもらえます。「正式に申告する前に、まず話だけ聞いてほしい」という使い方もできます。ハードルは思っているより低い。
よくある疑問
- 断ったら不採用になりそうで怖い。どうすればいいですか?
- 「選考に関係ない個人的なご連絡はお断りしています」と穏やかに返して構いません。被害申告への報復だと判断できる不採用は、新法施行後は法的に問題となります。被害の記録を残しておくことが大切です。
- 相手には悪意がなかったようだが、それでもセクハラになりますか?
- なります。セクハラの判断は「意図」ではなく「受け取り方」が基準だからです。相手が冗談のつもりでも、あなたが苦痛や不快感を感じたなら、セクハラに該当しうる。ここは揺るぎません。
- 被害を報告すると、業界全体でブラックリスト入りしませんか?
- そのような仕組みは存在しません。被害申告を理由とした採用差別は法律で禁止されています。そもそも、複数企業が連携して求職者の情報を共有すること自体が、別の法的問題を引き起こします。
- 就活セクハラは女性だけが対象ですか?
- いいえ。男性への被害も対象です。同性間のハラスメントも含まれます。性別・性的指向・ジェンダーアイデンティティに関わらず、すべての求職者が法律の保護を受けます。
チェックリスト:被害後の対応確認
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 被害の日時・場所・内容をメモした | □ |
| メッセージ・メールのスクリーンショットを保存した | □ |
| 信頼できる人(家族・友人・大学)に話した | □ |
| 企業の相談窓口に連絡するか検討した | □ |
| 都道府県労働局の連絡先を調べた | □ |
| 申し出後の企業の対応(または無対応)も記録した | □ |
今日からできること
まず、いつ・どこで・誰から・どんな言動を受けたかを、スマホのメモアプリに書き出してください。記憶は薄れます。書くなら今日です。
次に、メッセージ・通話記録・SNSのやりとりをスクリーンショットで保存します。
そのうえで、大学のキャリアセンターか都道府県労働局の無料相談に連絡してみてください。一人で抱え込まないこと。まず話を聞いてもらう。そこから始めれば十分です。
まとめ
就活セクハラの対象は、採用担当者やリクルーターによる性的な言動です。判断基準は、加害者の意図ではなく、受け取った側の苦痛・不快感。2026年10月施行の男女雇用機会均等法第13条で、企業には防止・相談対応の義務が課され、被害申告を理由とした不利益取扱いが法律で明確に禁止されます。やることはシンプルです。記録を残す。信頼できる人に相談する。そして企業窓口・労働局という順で動く。
正しい知識を持ち、記録を整えておく。それだけで、就活セクハラに対して取れる手は大きく変わります。疑問があれば、都道府県労働局や大学のキャリアセンターに相談してください。
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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