毎朝、スマホの求人アプリを開いては閉じる。「辞めたい」と思う気持ちより、「辞めたら家賃が払えない」という恐怖が毎回上回る。そういう人に、この記事を書く。
辞めることと、生活を守ることは両立できる。制度を知っていれば、今すぐ辞めても詰まない選択肢がある。
- 退職後に使える公的制度(失業給付・傷病手当金)の具体的な金額感
- 有給休暇を退職前に使い切る方法と法的根拠
- 民法627条で、2週間後に退職が成立する仕組み
「退職したら無収入」は思い込みだ
退職後も収入を補う制度がある。知らないと損をする。
雇用保険から出る基本手当(失業給付)は、退職前6ヶ月の平均賃金のおよそ50〜80%だ。月収22万円の人なら、11〜17万円程度が最長150〜180日支給される(被保険者期間と年齢による)。
自己都合退職でも、給付制限は原則2ヶ月だ。7日間の待機を経て、2ヶ月後には給付が始まる。無収入になる期間は、思っているより短い。
心身に不調があるなら、もう一つ手がある。在職中の健康保険から「傷病手当金」が出る。標準報酬月額の3分の2、最長1年6ヶ月だ。月収30万円なら月20万円が続く計算になる。失業給付との同時受給はできないが、順番に使うことはできる。
【実践メモ】雇用保険の被保険者期間を先に確認する。通算1年以上あれば失業給付の対象だ。マイナポータルか会社の総務窓口で調べられる。ハローワーク公式の給付額試算ツールも使える。
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有給休暇は退職前に使い切る
有給休暇は労働基準法39条で保障された権利だ。使わずに退職すると消える。買取義務は原則ない。年20日の有休が残っているなら、月収のほぼ1ヶ月分に相当する。捨てるのは損だ。
「申し出たら嫌な顔をされる」という不安はわかる。だが法律上、有給取得を拒否する権限は会社にない。時季変更権(同法39条5項)は「業務の正常な運営を妨げる場合」に限られる。退職直前には、この権限は事実上機能しない。代わりに働く人間がいないのだから、時季を変更する先がないためだ。
退職届と同時に有給申請を出して全日消化するのは、実務でも標準的な手続きだ。会社がどう思うかより、自分の権利を使うかどうかの話だ。
【実践メモ】退職届と「有給休暇取得申請書」を同じ日に提出する。退職日から残日数分を逆算して出勤最終日を決める。残日数は給与明細か就業規則で確認できる。
辞める権利は民法に書いてある
言い出しにくい気持ちはわかる。ただ、法律は明確だ。
民法627条1項:雇用期間の定めがない場合、労働者はいつでも退職の申し入れができる。申し入れから2週間で雇用契約は終了する。
会社が「引き継ぎが終わるまで辞めさせない」と言っても、法的拘束力はない。引き継ぎをする義務はある。だが完了を条件に退職を引き延ばす根拠は、会社側にない。
損害賠償を持ち出してくる会社もある。だが退職を理由に労働者が損害賠償を支払わされた判例は、ほぼ存在しない。引き継ぎをしっかりやっておけば、法的リスクはゼロに近い。脅しだと思っていい。
【実践メモ】退職の意思表示は書面(メールでも可)で残す。「〇月〇日付けで退職します」と日付を明記する。口頭だけだと「言った言わない」になる。記録が自分を守る。
退職後の社会保険、3択を知っておく
退職すると、会社が半額負担していた健康保険と厚生年金が全額自己負担になる。ここを見落とすと、想定外の出費になる。
- 任意継続:退職前の健康保険を最大2年継続。保険料は在職中の約2倍になるが、傷病手当金を継続受給できる場合もある。
- 国民健康保険:前年所得をもとに計算。収入がゼロになった翌年は割安になることが多い。
- 扶養に入る:配偶者などの扶養に入れるなら保険料ゼロで加入できる(年収130万円未満が目安)。
どれが安いかは個人差がある。退職前に必ず試算する。
【実践メモ】任意継続の申請期限は退職後20日以内(健康保険法第37条)。この期限を過ぎると国保一択になる。退職が決まったらすぐカレンダーに入れる。
よくある質問
- Q. 自己都合退職だと給付金額が減る?
- 金額は同じだ。変わるのは給付開始のタイミングだけ。会社都合は7日の待機後すぐ始まる。自己都合は7日+2ヶ月の給付制限がある。金額が減るわけではない。
- Q. 貯金がほぼゼロで辞めても大丈夫?
- 最低2ヶ月分の生活費があると動きやすいのは事実だ。ただし体や心が壊れる寸前なら、先に逃げる判断が正しい場合もある。傷病手当金(在職中の健康保険から)という選択肢もある。健康は後で取り返しがきかない。
- Q. 退職代行を使うと失業給付に影響する?
- 影響しない。退職の手続き方法は、給付の種類・金額・給付制限に一切関係ない。
- Q. 転職先が決まる前に辞めていい?
- 決まってから動くのが理想だが、限界が来ているなら後でいい。失業給付を受けながら活動した方が、精神的に余裕をもって選べる。焦って選んだ職場で同じことが起きる方が、ずっと損だ。
すぐやること3つ
- 雇用保険の被保険者期間を確認する(マイナポータルまたは総務窓口)
- 有給残日数を確認して、退職日を逆算する
- 退職の意思を書面(メール可)で準備する。日付・部署・氏名を明記
まとめ
- 失業給付は月収の50〜80%。自己都合でも2ヶ月の給付制限後に受給できる
- 有給休暇は退職前に使い切る。時季変更権は退職直前には機能しない
- 民法627条で、2週間前の申し出で退職は成立する。引き止めに法的拘束力はない
次のステップ
辞め方そのもので迷ったら、退職代行の種類と選び方を社労士がまとめた記事が役に立ちます。→ 退職代行とは?3種類と選び方を社労士が解説
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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