年金だけで老後は生きられる?87歳就労の現実と備え

社会保険・給付金

6月、年金支給日のスーパーに長い列ができた。
65歳以上限定の5%割引セールを目当てにした高齢者たちだ。
その中に、貯金3万円で職探しをする87歳がいた。

出典:Yahoo!ニュースが報じたこの事例が、大きな反響を呼んでいる。
年金は6月から約2%引き上げられた。
でも受給者の声は正直だ。「もうギリギリ」「年金、本当に足りない」。

年金が増えても、物価はもっと速く上がっている。これが2026年の現実だ。

現役社会保険労務士として解説する。
この話は「特殊な一人の事例」ではない。
今の働き盛りの世代にとって、明日の自分の話だ。

  • 年金だけでは足りない理由(数字で確認)
  • 高齢になっても働く場合に知っておくべき制度
  • 現役世代が今すぐできる3つの備え

年金2%アップでも「足りない」のはなぜか

2026年6月から、年金の受給額が約2%引き上げられた。
月額10.5万円の人なら、増加分は月2,000円ほどだ。
年間でも約2.4万円の増加にとどまる。

一方、食料品・光熱費・交通費はここ数年で大幅に上がった。
2%の年金増額では物価上昇に追いつかない。
この感覚は、数字を見ても正しい。

📌 ポイント:国民年金だけの場合、平均受給額は月約5.8万円(令和4年度)。厚生年金を含めても平均約14.6万円だ。一人暮らしの生活費の目安(約16万円/月)にも届かない計算になる。

87歳で貯金3万円という状況は、特別な失敗ではない。
長生きすれば貯蓄は減り続ける。
年金だけで暮らせば、いつかゼロになる日は来る。

「働きたいから働く」ではなく「働かなければ食べられない」という高齢者が増えている。
これは個人の問題ではなく、社会全体の構造的な課題だ。

⚠️ 注意:年金の受給額は、現役時代の収入・加入期間・受給開始年齢によって大きく変わる。「平均14.6万円」はあくまで参考値だ。自分の見込み額は必ず確認しよう。

高齢になっても働く場合に知っておくべき「2つの制度」

「年金をもらいながら働くと損をする」と思っている人は多い。
実は2026年4月から、制度が大きく変わった。
知っているかどうかで、受け取れるお金が変わる。

① 在職老齢年金の改正(2026年4月〜)

以前は、給料と年金の合計が月51万円を超えると年金が減額された。
2026年4月からは、この基準額が月65万円に引き上げられた。

働きながら年金を満額受け取れる範囲が、大きく広がった。
「働いたら年金が減る」という感覚は、古い情報かもしれない。
自分の状況に合わせて確認してほしい。

✅ やること:年金事務所または「ねんきんネット」で、働いた場合の年金受取シミュレーションを確認しよう。60〜65歳を控えている方は特に重要だ。

② 高年齢求職者給付金(65歳以上向け)

65歳以上で仕事を失った場合、雇用保険から給付を受けられる。
これを「高年齢求職者給付金」という。
一般の失業給付(基本手当)とは別の制度だ。

受け取るには、ハローワークで求職申込をすることが条件になる。
年金との同時受給もできる(年金の減額はない)。
65歳以上でも、雇用保険の加入期間があれば対象になる。

📌 ポイント:高年齢求職者給付金の条件は「離職前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あること」。パートやアルバイトでも雇用保険に加入していれば、期間が積み上がる。

今の現役世代へ:老後資金の「3つの備え」

「87歳で貯金3万円」は、対岸の火事ではない。
今50歳の人が87歳になるのは37年後だ。
その間に物価が上がり続ければ、今の資産の価値は大きく目減りする。

① iDeCo・NISAで「税の恩恵」を受けながら積み立てる
iDeCoは掛金が全額所得控除になる。
2024年に大幅拡充されたNISAは、非課税で長期投資ができる。
少額でも早く始めた方が有利だ。

② 年金の「繰り下げ受給」を選択肢として持つ
65歳から受け取らずに70歳まで待つと、年金は約42%増える。
75歳まで繰り下げると最大84%増になる(2022年4月法改正)。
ただし、健康状態と他の収入源とのバランスを見て判断しよう。

③ 「60代以降も稼げるスキル」を今から磨く
最強の老後資金は「長く働ける専門性」かもしれない。
資格・副業・フリーランス経験を積んでおくことが、将来の選択肢を広げる。
これ自体が、大きなリスクヘッジになる。

よくある疑問 Q&A

Q: 65歳以降も働いたら、年金が減らされますか?
A: 2026年4月から在職老齢年金の基準額が月65万円に引き上げられました。給与と年金の合計が月65万円以下なら年金は満額受け取れます。以前より働きやすい環境になっています。
Q: 高齢者でも「失業給付」はもらえますか?
A: 65歳以上の方は「高年齢求職者給付金」を受けられます。条件は、離職前1年間に雇用保険の加入期間が6ヶ月以上あること。ハローワークへの求職申込が必要で、年金と同時に受け取ることができます。
Q: 老後2,000万円問題は今どう考えればいいですか?
A: 2019年に話題になった試算ですが、その後の物価上昇を考えると2,000万円では足りない可能性もあります。大切なのは「自分の年金見込み額」と「毎月の生活費」を具体的に試算することです。必要額は人それぞれ違います。

すぐやること 3つ

  1. 「ねんきんネット」で自分の年金見込み額を確認する
    マイナポータルからアクセス可能。受給開始年齢を変えた場合のシミュレーションもできる。10分でできる。
  2. iDeCoまたはNISAの口座をまだ持っていないなら今すぐ開設する
    証券会社のオンライン口座なら手続きは数日で完了する。月5,000円からでも始められる。
  3. 会社の退職金・企業年金の制度を確認する
    自分がいくらもらえるか把握していない人は多い。人事部または就業規則で確認しよう。

まとめ

  • 年金の2%増額は物価上昇に追いつかない。87歳が働かざるを得ない状況は、構造的な問題だ。
  • 2026年4月から在職老齢年金の基準額が月65万円に引き上げ。働きながら年金を受け取りやすくなった。
  • 現役世代は「ねんきんネット確認・iDeCo/NISA活用・長く働けるスキル磨き」の3つを今すぐ始めよう。

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Towfiqu barbhuiya on Unsplash

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