売上が足りないと解雇される?あなたを守る法律の仕組みを社労士が解説!抵抗する3つの方法

就業規則

「今月も目標に届かなかった……もし解雇されたら、どうしよう」

そんな不安を抱えている方はいませんか?

結論から言います。売上目標が未達だっただけで、簡単には解雇できません。

現役の社会保険労務士として、数多くの労働相談を受けてきました。この記事では、売上未達を理由とした解雇がいつ有効・無効になるかを解説します。

  • 「売上未達解雇」の規定が無効になる条件
  • 就業規則を後から変えられた場合の対抗手段
  • 解雇通知を受けたときにすぐやること

「売上未達=解雇」の規定は、そもそも有効なのか

就業規則に「目標未達の社員は解雇する」と書いてあるとします。

でも、それだけで有効とはなりません。

就業規則が効力を持つには、「合理的な労働条件」であることが必要です。

これは労働契約法7条に定められています。

つまり、内容が合理的でない就業規則は、そもそも無効だということです。

📌 ポイント:就業規則は「合理的な内容」でなければ有効になりません。会社が一方的に作った規則でも、労働者には内容を争う権利があります。

「合理的かどうか」を判断する基準とは

鍵になるのは「その目標が現実的かどうか」です。

ほとんどの社員が通常の努力で達成できる水準なら、合理的と判断されやすくなります。

大阪地方裁判所は2022年10月27日、ある保険会社の事案で次のように判断しました。

新規獲得の保険料が一定水準を下回った営業社員を解雇する規定が問われた事件です。

裁判所は「一定の売上基準を満たせない社員の解雇規定には合理的な必要性がある」と判示しました。

つまり、達成可能な水準の目標であれば、解雇規定が有効になる場合もあるということです。

⚠️ 注意:逆に言えば、ほとんどの社員が達成できないような無理な水準を解雇事由にしている場合、その規定自体が無効になる可能性があります。

「無理な目標」は無効を主張する根拠になる

たとえば、チームの8割が3年連続で未達だった目標があったとします。

そんな水準を「達成できなければ解雇」とするのは合理的とは言えません。

規定の有効性そのものを争える可能性があります。

過去の達成率データや目標設定の根拠を記録しておくことが大切です。

【実践メモ】

部署全体の目標達成率を確認してみましょう。「自分だけが達成できていない」のか「チームのほとんどが未達の目標」なのかで、話は大きく変わります。同僚に状況を聞いて記録しておくと、後で役に立ちます。

入社後に就業規則を変えられた場合は、さらに強く守られる

ここが特に重要なポイントです。

もし「入社後に」就業規則が変更されて、売上未達が解雇事由に追加されたなら、話は別になります。

これは「不利益な労働条件の変更」にあたります。

労働契約法10条は、不利益な就業規則変更を原則として認めていません。

つまり、会社が一方的に「今日からこのルールにします」と言っても、あなたには従う義務がない可能性があります。

📌 ポイント:「入社前からいる社員」への就業規則の不利益変更は、新規採用者への適用よりもはるかに高いハードルが必要です。変更前から働いている社員は、より手厚く守られています。

不利益変更が認められるには厳しい条件がある

会社が「社員の気を引き締めたい」と言うだけでは変更できません。

「この売上水準でないと経営が成り立たない」という具体的な根拠が必要です。

また、変更前に労使間できちんと話し合いがされたかどうかも重要です。

突然の通知や一方的な変更では、変更自体が無効になる可能性があります。

⚠️ 注意:就業規則の変更通知を受けたら、すぐに「いつ変更されたか」「変更前にどんな説明があったか」を記録してください。後で争う際の重要な証拠になります。

「気を引き締めたい」だけでは変更理由にならない

「モチベーションを上げたい」「危機感を持ってほしい」は変更の理由になりません。

変更には、経営上の具体的な必要性が求められます。

変更理由が曖昧なまま通知されたなら、それは無効を主張できるチャンスです。

【実践メモ】

就業規則の変更通知を受け取ったら、その書面を必ず手元に保存してください。変更日・変更内容・事前説明の有無をメモしましょう。「説明がなかった」「突然だった」という事実が、後で重要な意味を持ちます。

就業規則が有効でも「解雇権濫用」という最後の砦がある

「規定が有効とされたらもう終わり?」と感じた方もいるかもしれません。

でも、そうではありません。

就業規則が有効でも、実際の解雇はさらに別の法律でチェックされます。

それが労働契約法16条「解雇権濫用法理」です。

つまり、「規定があっても、解雇のやり方が不当なら無効になる」ということです。

📌 ポイント:解雇権濫用法理とは「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効」という原則です。就業規則に書いてあっても、この原則で無効にできる場合があります。

「なぜ未達だったのか」が争点になる

売上が目標に届かなかった理由は何ですか?

担当エリアが突然変わって、顧客を一から開拓しなければならなかった。

会社からの研修やサポートがほとんどなかった。

体調不良で一時的にパフォーマンスが落ちていた。

こうした「個人の事情」や「会社側の対応」は、解雇の妥当性判断に影響します。

自分の状況と会社の対応の両方を記録しておくことが重要です。

会社が「解雇を避ける努力」をしたかも問われる

解雇の前に会社が試みるべきことがあります。

たとえば、部署異動・目標の見直し・業務研修の提供などです。

こうした「解雇を避ける努力」を一切せずに解雇すると、解雇権の濫用と判断されやすくなります。

何の支援もないまま解雇されたなら、十分に争う価値があります。

✅ やること:「会社からどんなサポートを受けたか・受けなかったか」を書き出してみましょう。研修の有無・面談の有無・目標修正の機会があったかどうか。これが解雇の相当性を争う材料になります。

【実践メモ】

解雇通知を受けたら、「解雇理由証明書」を書面で請求してください。会社にはこれを交付する義務があります(労働基準法22条)。理由が曖昧な解雇は、後で無効を主張しやすくなります。口頭の説明だけで納得しないことが大切です。

解雇通知を受けたらすぐにやること

「解雇します」と言われたとき、焦る気持ちはわかります。

でも、最初の行動が後の結果を大きく左右します。

冷静に、順番に動いてください。

⚠️ 注意:解雇を口頭で伝えられても、その場でサインや同意をしないでください。まず書面を請求し、内容を確認してから動きましょう。

①解雇理由証明書を書面で請求する

口頭で「解雇する」と言われただけでは不十分です。

「解雇理由証明書を交付してください」と書面で請求しましょう。

会社はこれを拒否できません(労働基準法22条)。

理由が明記された書面は、後で争う際の重要な証拠になります。

②証拠を集めて保存する

以下を手元に確保してください。

  • 過去の目標設定書・達成率の記録
  • 上司からのメール・チャット履歴
  • 就業規則(変更前・変更後の両方)
  • 雇用契約書・賃金明細

会社のシステムからデータが取り出せなくなる前に、早めに保存を。

③無料の相談窓口に連絡する

労働局・社労士・弁護士などに相談できます。

「総合労働相談コーナー」は全国のハローワーク内にあり、無料で相談できます。

一人で抱え込まず、早めに動くことが大切です。

✅ やること:まず「総合労働相談コーナー」に電話してみましょう。状況を話すだけで、次にどう動けばいいかを教えてもらえます。予約不要・無料です。

よくある疑問 Q&A

Q: 就業規則に「売上未達は解雇」と明記されていたら、もう争えませんか?
A: そんなことはありません。就業規則があっても、解雇権濫用法理(労働契約法16条)で無効になる場合があります。目標の合理性・会社のサポート状況・個人の事情が総合的に判断されます。まず専門家に相談してみてください。
Q: 入社後に就業規則が変更されていた場合はどうすればいいですか?
A: 入社後の不利益変更には厳しい条件が必要です(労働契約法10条)。変更通知の書面・説明の有無・変更前の就業規則の内容を記録してください。変更自体が無効と主張できる可能性があります。
Q: 売上が低かったのは会社のサポート不足が原因です。それを主張できますか?
A: はい、できます。研修不足・不合理な目標設定・業務環境の問題は、解雇の妥当性判断に影響します。具体的な事実をメモ・メール・証言として記録しておきましょう。
Q: 解雇予告なしに即日解雇されました。これは違法ですか?
A: 原則として、解雇は30日前の予告か、30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です(労働基準法20条)。正当な理由のない即日解雇は違法になります。すぐに労働基準監督署か専門家に相談してください。

チェックリスト

確認項目 チェック
就業規則に解雇事由として明記されているか確認した
就業規則がいつ変更されたか確認した
変更前に説明・話し合いがあったか記録した
部署全体の目標達成率を調べた
会社からのサポート内容(研修・面談等)を書き出した
解雇理由証明書を書面で請求した
雇用契約書・賃金明細・メール等を保存した
総合労働相談コーナーか専門家に相談した

すぐやること 3 つ

  1. 就業規則を手に入れる:内容・変更日・変更前後の比較を確認する
  2. 記録と書類を集める:目標設定書・メール・就業規則(変更前後)をすぐに保存する
  3. 専門家に相談する:総合労働相談コーナー(無料)か社労士・弁護士に今すぐ連絡する

まとめ

  • 売上未達を解雇事由とする就業規則は、目標の合理性によって有効・無効が変わる
  • 入社後に就業規則で不利益変更された場合は、変更自体を無効として争える可能性がある
  • 就業規則が有効でも、解雇権濫用法理(労働契約法16条)でさらに争う余地がある
  • 会社のサポート不足や不合理な目標設定は、解雇を否定する有力な材料になる
  • 解雇通知を受けたら書類を集め、一人で悩まず早めに専門家に相談することが大切

あなたの仕事・収入・生活を守るために、一人で諦めないでください。法律はあなたの側にあります。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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