もう限界だ。でも辞めたいわけじゃない。ただ、少しだけ休みたい。
その「休みたい」を、自分の口から会社に言い出すのが怖い。評価が下がる気がする。気まずくなるのも嫌だ。そうやって言葉を飲み込んでいるうちに、「休職代行」というサービスを見つけて、これに頼ればラクになるかもしれないと考えている人へ。
結論を先に書く。休職代行は使えるが、退職代行より法的リスクが高い。そして、その代行が代わりにやってくれることの大半は、自分でもできる。費用ゼロで。
この記事で社労士として伝えるのは、次の3点だ。
- 休職代行の仕組みと、退職代行との決定的な違い
- 使う前に知っておくべき法的リスク(非弁行為の問題)
- 自分で休職を実現する手順と、傷病手当金の受け取り方
休職代行とは?サービスの仕組み
休職代行とは、あなたの代わりに会社へ「休職したい」と伝えてくれるサービスだ。
退職代行とよく似ている。ただし、辞めるのではなく「休む」ことが目的という点が違う。
やってくれることは、だいたいこの3つだ。
- 会社への休職意思の連絡
- 診断書の出し方についてのアドバイス
- 休職届のテンプレート提供
料金の相場は1〜3万円ほど。退職代行よりやや安い傾向がある。
退職代行との3つの違い
1. 目的が違う:辞めるか、休むか
退職代行は「会社を辞める」ためのもの。休職代行は「会社に在籍したまま休む」ためのものだ。
つまり、休職代行を使った後も、あなたと会社の関係は続く。ここが最大の違いだ。
2. 交渉の範囲が違う
退職は、労働者が一方的に「辞めます」と言えば成立する(民法627条)。会社の許可はいらない。
でも休職は違う。休職は法律で会社に義務づけられた制度ではなく、就業規則で会社が独自に定めている制度だからだ。
だから、就業規則に休職制度がそもそも書かれていなければ、休職できない可能性すらある。退職とはハードルがまったく違う。
3. リスクの大きさが違う
退職代行は、辞めたら終わり。多少こじれても、もう顔を合わせることはない。
休職代行は違う。復帰後も、同じ会社で、同じ上司の下で働くことが前提だ。
赤の他人にいきなり連絡させたことで、戻ったときの空気がぎくしゃくする。これは無視できないリスクだ。
【実践メモ】
まず「辞めたいのか、休みたいのか」を自分の中ではっきりさせる。辞めたいなら退職代行のほうが確実だ。「少し休んで、これからを考えたい」なら、休職のほうが選択肢を残せる。ここを曖昧にしたまま代行に飛びつくと、後悔する。
休職代行の法的リスク:非弁行為の問題
休職代行の最大の落とし穴は、「非弁行為」に当たる可能性があることだ。
弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬をもらって法律事務を扱うことを禁じている。
ただ「休職したい」と伝言するだけなら、問題ない。問題になるのはここからだ。次のような行為は、非弁行為に該当するおそれがある。
- 休職期間について会社と交渉する
- 休職中の待遇(給与や社会保険)について会社と協議する
- 会社が休職を認めないときに反論する
もし休職代行を使うなら、選ぶべきは2種類だけだ。弁護士が運営するサービスか、労働組合が運営するサービス。この2つなら、交渉まで法的に問題なく任せられる。それ以外の民間業者は、できる範囲が「伝言」までだと思っておいたほうがいい。
自分で休職する方法:4つのステップ
ここで本音を言う。正しい手順さえ踏めば、休職代行を使わなくても休職はできる。しかも費用はかからない。
順番に見ていく。
ステップ1:心療内科を受診して診断書をもらう
まず心療内科か精神科を受診する。これが起点だ。
医師には「仕事が原因で体調を崩している」と正直に話す。我慢して軽く言うと、軽い診断書しか出ない。
「○ヶ月の休養を要する」と書かれた診断書が出れば、会社は休職を断りづらくなる。診断書は、あなたが思っている以上に強い武器だ。
ステップ2:就業規則の休職制度を確認する
次に、会社の就業規則に休職制度があるかを確認する。
見るべきポイントは3つ。
- 休職の要件(診断書は必要か)
- 休職期間の上限(3ヶ月〜1年が多い)
- 休職中の給与(無給が一般的)
【実践メモ】
就業規則が手元にない場合は、人事部に開示を求めてください。会社は就業規則を従業員に周知する義務があります(労基法106条)。「見せられない」と拒否されたら、それ自体が会社の落ち度です。拒否された日時とやりとりを記録しておきましょう。
ステップ3:上司または人事に休職を申し出る
診断書を添えて、休職を申し出る。
口頭で言いづらいなら、メールで構わない。むしろメールのほうがいい。記録が残るからだ。
書く内容は、シンプルでいい。
- 体調不良により、医師から休養を指示されたこと
- 診断書を添付すること
- 就業規則に基づき休職を申請すること
飾る必要はない。事実を淡々と書く。それで十分伝わる。
ステップ4:傷病手当金を申請する
休職中は、給与が出ないのが普通だ。ここで多くの人が「生活できない」と不安になって踏み出せない。
でも、健康保険から傷病手当金がもらえる。
支給額は、標準報酬日額の3分の2。最長で1年6ヶ月受け取れる。
たとえば月給30万円のケースなら、毎月およそ20万円が支給される計算だ。ゼロではない。ここを知らずに諦める人が多すぎる。
会社が休職を認めない場合の対処法
診断書を出しても、会社が休職を認めないことがある。残念ながら、これは珍しくない。
そのときの手は3つある。
1. 労働基準監督署に相談する
体調を崩した従業員を無理に働かせ続けることは、安全配慮義務(労契法5条)に違反するおそれがある。
労基署に相談すれば、会社に指導が入ることがある。「お上から言われる」のを嫌う会社ほど、これは効く。
2. 有給休暇を先に使う
休職が認められるまでの間、まず有給休暇で休むのも手だ。
有給は労働者の権利であって、会社のお情けではない。会社は原則として拒否できない(労基法39条)。
3. 弁護士に相談する
会社がはっきり休職を拒む場合は、弁護士に相談してほしい。
医師の診断書があるのに休ませない会社は、安全配慮義務違反として損害賠償の対象になり得る。「休ませないほうが会社にとって危ない」という構図を、会社側に理解させる必要がある。
【実践メモ】
会社とのやりとりは、すべてメールかチャットで残してください。電話で言われた場合は、直後に「先ほどの電話の内容を確認させてください」とメールを送る。これだけで、口頭の言質が文字の証拠に変わります。記録は、いざというときあなたを守る盾です。
よくある疑問 Q&A
- Q: 休職代行を使ったことは会社にバレますか?
- A: 会社に連絡するのが休職代行の仕事なので、「代行を使った」こと自体は会社に伝わります。ただし、自分で申請しても結果は同じです。大事なのは代行を使ったかどうかではなく、診断書があるかどうかです。
- Q: 休職中にクビになることはありますか?
- A: 就業規則で定められた休職期間内であれば、原則として解雇されません。ただし、休職期間が満了しても復帰できない場合は「自然退職」となる就業規則が多いです。まず自分の会社の期間を確認してください。
- Q: 休職代行の費用はいくらですか?
- A: 1〜3万円程度が相場です。ただし、この記事で紹介した「自分で休職する方法」なら費用はかかりません。かかるのは心療内科の初診料(3割負担で2,000〜3,000円程度)くらいです。
- Q: 国民健康保険でも傷病手当金はもらえますか?
- A: 原則としてもらえません。傷病手当金は会社員が加入する健康保険(協会けんぽ・健保組合)の制度です。国保にはこの制度がないため、フリーランスや自営業の方は対象外です。
チェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 心療内科・精神科を受診した | □ |
| 「休養を要する」旨の診断書を取得した | □ |
| 就業規則の休職制度を確認した | □ |
| 休職届をメールで提出した(記録あり) | □ |
| 傷病手当金の申請書を準備した | □ |
| 会社とのやりとりを記録に残した | □ |
すぐやること 3 つ
- 心療内科を予約する:最短で診断書を出してもらえるよう、症状と仕事の状況を整理しておく
- 就業規則を確認する:休職制度の有無、要件、期間上限をチェックする
- 会社とのやりとりを記録する:今日からメール・チャットの記録を保存する
まとめ
- 休職代行は「休みたい」と会社に伝えてくれるサービスだが、退職代行より法的リスク(非弁行為)が高い
- 退職代行と違い、休職後も会社との関係が続く。第三者を入れるリスクを理解しておく
- 使うなら、弁護士か労働組合が運営するサービスを選ぶ
- 診断書+メールで、自分でも休職申請はできる。費用もかからない
- 休職中は傷病手当金(給与の約2/3)を最長1年6ヶ月受け取れる
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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

