会議中、上司がため息をつきながら書類を乱暴に置く。質問しても無言。部屋の空気が凍りついて、誰も話しかけられない——そういう職場、想像できますか。
最近、この「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」という言葉が注目を集めています。Yahoo!ニュースの報道では、警視庁のエリート幹部・警視正が部下への不機嫌な態度を繰り返したとして処分を受けたことが話題になりました。
「フキハラは法律違反になるのか」「自分が受けている被害はどう対処すればいいのか」——現役社労士として、この問いに正面から答えます。
フキハラの法的な立ち位置——「違法でない」とは言い切れない理由
結論から言います。フキハラを直接罰する法律は、現時点で存在しません。
ただし、「だから何をしても許される」という話にはならない。ここが重要です。
パワハラと認定されるには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上の必要性・相当性を超えていること
- 労働者の就業環境が害されていること
上司が黙って資料を放り投げる。返事をしない。ため息を何度も繰り返す。こういった行為が続いて、「怖くて仕事の相談ができない」「上司の顔色を伺いながらでないと動けない」という状態になれば、3番目の要件を満たす可能性があります。
ただし、機嫌が悪い日が1〜2回あっただけでパワハラになるわけではありません。「継続性・反復性」と「業務への具体的な支障」がポイントになります。
被害を受けたらすること——証拠の残し方と相談先
「これはフキハラではないか」と感じたとき、まず動いてほしいことが3つあります。
記録をつける——これが一番大事
日時・場所・何があったか・周囲にいた人を、その日のうちに記録してください。
スマートフォンのメモアプリで十分です。「〇月〇日 午後2時、会議室で上司が書類を床に向けて投げた。その場にいたのは〇〇さんと△△さん」——このくらい具体的に残しておくと、後になって力を発揮します。
「不機嫌な態度」は証拠化しにくいハラスメントです。だからこそ、積み重ねが大事になる。1件では弱くても、10件・20件と記録が増えれば話は変わります。
録音は「できる範囲で」検討する
自分が会話の当事者として参加している場合の録音は、一般的に違法にはなりません。ただし、会社のルールや職場の状況によっては別の問題になることもあります。可能な範囲で、慎重に判断してください。
相談先を事前に知っておく
一人で抱え込まないことが大切です。動く前に、選択肢を頭に入れておきましょう。
- 会社の相談窓口・人事部門:まず内部で相談する選択肢
- 総合労働相談コーナー:各都道府県の労働局に設置。無料・予約不要
- みんなの人権110番(法務局):電話相談(0570-003-110)
- 社会保険労務士・弁護士への相談:法的対応を検討するとき
よくある疑問 Q&A
- Q: 上司がため息ばかりついている。これもフキハラになりますか?
- A: ため息1回でフキハラとは言えません。ただし、特定の部下に向けて繰り返し行われ、その部下が萎縮して業務に支障が出ているなら、パワハラの要件を検討できる状況になります。まずは記録をつけることが先決です。
- Q: 上司ではなく同僚の不機嫌な態度でも問題になりますか?
- A: パワハラの定義には「優越的な関係」が必要です。同僚間の場合、この要件を満たすかどうかは状況によります。ただし、会社はすべての従業員に対して職場環境配慮義務を負っています。同僚間でも深刻な場合は会社に相談する価値があります。
- Q: 会社に相談したら逆に不利になりませんか?
- A: 相談したことを理由に不利益な扱い(降格・異動・嫌がらせ等)をすることは、法律上禁止されています。ただし、心配な場合は社外の相談窓口(労働局など)に先に相談するのも選択肢です。
すぐやること
- 今日から記録をつける:日時・場所・内容・同席者をメモに残す
- 相談窓口を調べておく:最寄りの総合労働相談コーナーの場所を確認する
- 信頼できる同僚に状況を話しておく:後から証人になってもらえる可能性がある
まとめ
- フキハラ単体を直接罰する法律はないが、パワハラの要件を満たせば違法となりうる
- 継続性・業務への支障・職場環境の悪化がキーポイント
- 証拠は「日時・場所・内容・同席者」を記録するところから始める
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