退職金制度がなくなった|会社が廃止したら泣き寝入り?

労働契約・就業規則

王子ホールディングスが2026年春入社の新入社員から退職一時金を廃止すると発表しました。出典:Yahoo!ニュース

結論から言う。これは「会社の都合」だが、新入社員に限れば法律上は止められない。

退職金が消えると聞くと、損をした気分になる。でも、損か得かはそう単純ではない。社労士の立場から、このニュースの中身と、あなたが今日確認すべきことを整理する。

ニュースの要点整理

押さえるべき点は3つ。

まず、対象は2026年春入社の新入社員だけ。今いる社員の退職金はそのまま続く。ここを混同してはいけない。

次に、退職金を廃止する代わりにその分を月給に上乗せするという。一見すると改悪だが、話はそう単純ではない。後で説明する。

そして、Yahoo世論調査では81.2%が「非常に影響がある」と回答した。多くの人が不安を感じている。当然だ。退職金は老後の柱だと思われてきた。

📌 ポイント:厚労省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は74.9%。つまり約4社に1社は、もともと退職金がない。

退職金廃止の法的な仕組み

最初に、多くの人が誤解していることを言う。退職金は、法律上の義務ではない。

退職金は会社が自主的に設ける制度だ。就業規則や労働契約で「払う」と定めた場合に、はじめて支払い義務が生まれる。逆に言えば、定めがなければ会社は払わなくていい。冷たく聞こえるが、これが現実だ。

新入社員と既存社員で扱いが違う理由

なぜ新入社員だけが対象なのか。ごまかしではなく、ちゃんとした法律上の理由がある。

今いる社員の退職金を廃止するのは「不利益変更」にあたる。労働契約法9条・10条により、変更には高度の合理性が要る。会社が一方的に「やめます」では通らない。

でも新入社員は違う。入社の時点で「退職金なし」という労働条件に同意して入ってくる。最初からその条件なので、不利益変更の問題は起きない。だから新入社員から始める。会社にとって一番ハードルが低いやり方なのだ。

⚠️ 注意:既存社員の退職金廃止には、秋北バス事件などの判例により厳しい要件があります。簡単には変更できません。

労働者にとってのメリット・デメリット

では、退職金がないのは一方的に損なのか。そうとは言い切れない。冷静に見ると、得になる人もいる。

最大のメリットは、毎月の手取りが増えること。退職まで何十年も待つ必要がない。お金を今受け取れる。しかも転職しても損が出ない。退職金は長く勤めるほど有利な設計が多く、途中で辞める人ほど薄くなりがちだったからだ。

デメリットははっきりしている。自己管理の負担が増える。これまで会社が肩代わりしていた「老後資金の積み立て」を、自分でやることになる。上乗せされた給料をそのまま使い切れば、老後に何も残らない。そこは自分次第だ。

✅ やること:退職金がない場合は、iDeCoやNISAなど自助努力が重要になります。

2026年税制改正の影響も考えるべき

もうひとつ、見落とされがちな背景がある。退職金にかかる税金のルールも、見直しの流れにあるのだ。

退職金には「退職所得控除」という大きな優遇がある。勤続20年までは「40万円×勤続年数」、20年を超えた分は1年あたり70万円が、税金のかからない枠として差し引ける。長く勤めた人ほど得をする仕組みだ。

ただし近年、この優遇は「会社にとどまり続ける人ばかり優遇するのは不公平だ」という議論の対象になっている。退職金とiDeCoを近い時期に受け取る場合の通算ルールなども見直されてきた。つまり、退職金の税メリットは縮む方向にある。会社側が「退職金という形で残す魅力は下がった」と判断した可能性は十分ある。

税制は毎年のように動く。正確な適用は受け取る年のルールで確認してほしい。曖昧なまま「いくら得する」と計算しないことだ。

地方と都市部の格差への対応

経済ジャーナリストの酒井富士子氏は「転職が一般的になる中で、長期雇用を前提とした制度は形骸化している」と指摘している。

言われてみればその通りだ。一つの会社に勤め上げる人を前提にした退職金は、3回4回と転職する世代には噛み合わない。地方では終身雇用が残り、都市部では転職が当たり前。今回の動きは、その変化に企業が合わせにきた、と読むこともできる。

よくある疑問 Q&A

Q: 他の企業でも退職金廃止は広がりますか?
A: 可能性はあります。特に転職が多い業界や若い企業では同様の動きが出るかもしれません。ただし、既存社員への影響が大きいため、慎重に判断する企業が多いでしょう。
Q: 退職金がない会社に入社するのは損ですか?
A: 一概に損とは言えません。毎月の給与が高く、自分で資産運用できるなら有利な場合もあります。重要なのは総合的な労働条件を比較することです。
Q: 既存社員の退職金制度はずっと安全ですか?
A: 法的には保護されていますが、会社の経営状況によっては変更される可能性もあります。ただし、労働契約法により厳しい要件があるため、簡単には変更できません。

すぐやること 3つ

  1. 自分の会社の退職金制度を確認する – 就業規則で制度の内容を把握しましょう
  2. iDeCoやNISAを検討する – 退職金がない場合の自助努力として有効です
  3. 転職市場での退職金の傾向を調べる – 業界や企業規模による違いを理解しましょう

次のステップ

退職代行サービスの比較・選び方はこちらの記事で詳しく解説しています

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まとめ

  • 王子HDの退職金廃止は新入社員のみが対象で、法的に問題はない
  • 退職金廃止には毎月の収入増というメリットもある
  • 自己責任での資産形成がより重要になる時代の変化

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Mario Gogh on Unsplash

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