「育休を申請したら、上司に渋い顔をされた」「職場の空気的に、言い出せない」という状況で、どうすればよいか迷っている方はいませんか。
育児休業は、申請するだけで取得できる法律上の権利です。会社の「許可」は必要ありません。
この記事では、育休を取る際の手続きと、会社に拒否されたときの対処法をわかりやすく解説します。
育児休業を取る権利がどこまで守られているか、会社に「人手不足だから無理」と言われたときの対応、そして育休後の降格・減給など不利益取扱いへの対処法を順に説明します。
育児休業は「お願い」ではなく「権利」です
育児休業は、育児介護休業法第5条に定められた労働者の権利です。申請さえすれば、会社は原則として断れません。「繁忙期だから待ってほしい」「人が足りないから難しい」という会社の都合は、法律の前では通用しません。
対象になる労働者は?
子どもが1歳になるまで取得できます(条件によって1歳6か月・2歳まで延長可)。正社員だけではありません。契約社員やパート社員でも、雇用が継続される見込みがあれば対象です。「契約だから関係ない」は会社の誤った説明です。
男性も使える「産後パパ育休」が2022年から始まりました
2022年10月から「産後パパ育休」という制度が始まりました。子どもが生まれてから8週以内に、最大28日間取得できます。通常の育休とは別枠で、2回に分割して取ることも可能です。
「人手不足だから無理」は育休拒否の理由になりません
「今は繁忙期で人が足りない」「あなたがいないと困る」といった言葉でプレッシャーをかけてくる会社があります。しかし、これらは育休拒否の正当な理由にはなりません。
育休の申請を妨害する行為はハラスメントです
育休取得を妨げる言動は、「マタハラ」「パタハラ」と呼ばれるハラスメントにあたります。2022年4月から、すべての企業にハラスメント防止措置義務が課されました。企業規模を問わず、対応が求められています。
拒否されたときの対処
まず、書面またはメールで申請しましょう。口頭ではなく、記録が残る形で申請することで「申請した事実」が証拠として残ります。次に、会社の回答を必ず記録してください。何を言われたか、日時とともにメモし、メールでのやり取りはそのまま保存しておきましょう。それでも会社が動かない場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等室」に相談することができます。無料で、秘密も守られます。
【実践メモ】
会社とのやり取りはメールやチャットで残しましょう。「言った・言わない」のトラブルを防げます。記録があるだけで、のちの交渉が格段に有利になります。
育休後の降格・減給・異動は違法になります
育休から戻ったら役職を下げられた、給料が減っていた、希望していない部署に移された——こうした「不利益取扱い」は、育児介護休業法第10条で原則として禁止されています。
最高裁の判断:育休後の降格は原則として違法
広島中央保健生活協同組合事件(最高裁・2014年10月)では、育休後に役職が変更されたことが争点になりました。最高裁は「育休取得を理由とした不利益な変更は、原則として違法だ」という考え方を示しました。育休を取ったことで役職・給与・評価が下がった場合は、会社の違法行為にあたる可能性があります。
【実践メモ】
育休に入る前に、給与明細・辞令・人事評価シートを必ず手元に保存しておきましょう。「育休前はこうだった」という比較ができる資料が、不利益取扱いを証明する鍵になります。
不利益取扱いを受けたときの相談先
都道府県労働局の雇用環境・均等室(無料・秘密厳守)、総合労働相談コーナー(全国のハローワーク内に設置)、または個別の法的アドバイスが必要な場合は社会保険労務士・弁護士に相談することができます。
よくある疑問
- 育休中に「早めに戻ってきてほしい」と会社に言われました。断れますか?
- 断れます。育休中の呼び戻しは、労働者の同意なく強制することはできません。「お願い」であれば断って問題ありません。応じるかどうかは本人が自由に決めることができます。
- 育休を取るとボーナスが大幅に減らされると言われました。これは合法ですか?
- 育休中の不就労期間分を賞与の算定から除外すること自体は、一定の範囲で認められます。ただし、育休を取得したこと自体を理由に不当に減額するのは違法です。育休前後のボーナスを比較して、明らかに不均衡な場合は相談を検討してください。
- 産後パパ育休と通常の育児休業は両方取れますか?
- 取れます。産後パパ育休(出生後8週以内・最大28日)を使った後、通常の育児休業(子どもが1歳になるまで)も取得できます。どちらもそれぞれ2回まで分割取得が可能になりました。
- 育休申請を「もう少し待ってほしい」と言われています。どうすればいいですか?
- 育休の開始日は、原則として申請した労働者が決める権利があります。会社が一方的に先延ばしにすることはできません。書面で申請し、会社の対応を記録した上で、必要なら労働局に相談してください。
育休取得前に確認しておくチェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 会社の育児休業規程を確認した | □ |
| 申請は書面またはメールで行った | □ |
| 育休前の給与・役職・評価を記録・保存した | □ |
| 会社とのやり取りをすべて記録している | □ |
| 育児休業給付金の申請手続きを調べた | □ |
| 育休後の復帰条件(部署・役職)を事前に確認した | □ |
| 相談先(労働局・社労士)を把握している | □ |
今日からできること
まず、申請は必ず書面で残しましょう。口頭ではなくメールや書面で申請し、記録を手元に保管してください。
次に、育休前の処遇をすべて記録しましょう。給与明細・辞令・評価シートを保存し「育休前の状態」を証拠として残しておくことが大切です。
困ったときは都道府県労働局の雇用環境・均等室に相談することができます。無料で相談でき、秘密も守られます。
まとめ
育児休業は育児介護休業法第5条で守られた権利であり、会社の許可は不要で申請するだけで取得できます。「人手不足だから無理」「繁忙期だから待って」は育休拒否の正当な理由にならず、育休取得を妨げる言動はハラスメントにあたります。産後パパ育休(2022年10月〜)で男性も育休を取得しやすくなりました。
育休後の降格・減給・不本意な異動などの不利益取扱いは育児介護休業法第10条・広島中央保健生活協同組合事件(最高裁2014年10月)により原則として違法です。正しい知識を持ち、申請と記録を適切に行うことで、育児休業を適切に取得することができます。困ったときは都道府県労働局や専門家に早めに相談してください。
※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
