新卒で辞めたいのは甘え?社労士が法律で答える

労働時間

毎朝、駅のホームで電車を待ちながら、このまま乗りたくないと思っている。

先輩の顔色を読むことに全エネルギーを使い、仕事どころではない。

「でも辞めたら甘えって言われる」という声が頭を離れない。

結論から言います。甘えじゃない。辞める権利は、法律が保障している。

この記事で分かること:

  • 「甘え論」が根拠のない言説である理由
  • 新卒が辞めても問題ない法的根拠(民法627条)
  • 今日から動ける具体的な一手

「甘え」と言う人を信じてはいけない

「甘え」と言ってくる人は、あなたの職場の実態を1秒も見ていない。

厚生労働省が2023年に公表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、大学卒の3年以内離職率は約32.3%だ(2020年3月卒の実績)。3人に1人は3年以内に辞めている。

その全員が「甘え」だったとしたら、この社会の構造がおかしい。

「石の上にも3年」は江戸時代の職人が技術を磨くための教えだ。毎日の怒鳴り声や長時間残業に耐える根拠ではない。文脈が違う。

「甘え」という言葉が出てくる場面は決まっている。あなたが辞めると困る側の人間が言う。自分の利益のために使う言葉だ。あなたの体や心を心配して言っているのではない。

【実践メモ】「甘えかどうか」を判断する権限は、あなただけにある。まず辞めたい理由を紙かスマホのメモに箇条書きする。言語化するだけで、頭の中の霧が晴れる。

民法627条:辞める権利は条文に書いてある

退職は会社に許可してもらうものではない。法律上の権利だ。

民法627条はこう定めている。「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」

正社員(無期雇用)なら、2週間前に申し出れば辞められる。

就業規則に「退職は1ヶ月前に申し出ること」と書いてある会社は多い。しかし判例・通説上、退職の意思表示から2週間が経過すれば雇用関係は終了する。就業規則の1ヶ月ルールより、民法627条が優先される。

「損害賠償を請求する」と脅してくる会社もある。落ち着いてほしい。通常の退職において、労働者が会社の損害を賠償した判例はほぼ存在しない。代替人員の確保は会社側の責任だ。

さらに、労働基準法5条は強制労働の禁止を定める。「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない」と明記されている。辞めさせないために圧力をかけることは、この条文に抵触しうる。

【実践メモ】退職の意思は書面(メール可)で伝え、日付と内容を記録する。口頭だけでは「言った言わない」になる。送信履歴は消さない。

「3年は我慢しろ」は誰のための言葉か

「3年いれば何かが変わる」という主張に、根拠となるデータはない。

厚生労働省の調査では、仕事や職場に強いストレスを感じている労働者の割合は50%を超える。長期的なストレスは精神疾患リスクを高めることが医学的に示されている。体が壊れてからでは遅い。

例えばこんなケースがある。入社1年目から深夜残業が続き、「もう少し頑張れ」と言われ続けた末に適応障害を発症。3年我慢した結果、休職から退職という形になった。3年いたのに、手元に残ったのは傷だけだった。

第二新卒という採用カテゴリが存在する。入社3年以内に転職する人を指す。多くの企業がこの層を採用対象にしている。早く動くほど、選択肢は広い。

【実践メモ】「3年いないと不利」という恐怖は、転職エージェントに一度話を聞いてみると消える。無料で相談できる。辞めると決める前の情報収集でいい。

辞めるときに1つだけ確認すること

有給休暇を消化してから辞める。これだけは確認してほしい。

労働基準法39条は有給休暇の権利を保障している。入社から6ヶ月が経過し、全労働日の8割以上出勤していれば10日の有給が付与される。「退職するから有給は使えない」という会社の主張は間違いだ。

退職の意思を伝えるタイミングで、有給消化の申請も合わせて行う。給与明細か社内システムで残日数を確認し、退職日から逆算して計画する。

雇用保険の失業給付も忘れない。自己都合退職の場合、ハローワークへの申請から2ヶ月の給付制限期間がある。正当な理由のある自己都合であれば制限が短縮されるケースもある。離職票は会社から受け取る書類なので、届かない場合は請求していい。

【実践メモ】有給残日数を確認したら、「消化日数+引き継ぎ期間」から退職申出のタイミングを逆算する。この計算だけで、退職後の手元に残るお金が変わる。

よくある質問

Q. 入社数ヶ月で辞めたら転職できなくなりますか?

そんなことはない。第二新卒を採用している企業は多い。採用担当者は辞めた理由を確認するが、整理されていれば問題にならない。早く動くほど年齢的な選択肢が広い。

Q. 退職を申し出たら引き止められています

引き止めに法的拘束力はない。民法627条に基づき、申し出から2週間後に雇用関係は終了する。「考え直せ」という言葉に応じる義務はない。繰り返し言われる場合は書面で退職日を明示して記録を残す。

Q. 退職代行サービスを使ってもいいですか?

使っていい。直接言い出せない状況なら、退職代行は有効な手段だ。費用は一般的に2〜3万円程度。弁護士法人が運営するサービスなら有給交渉も対応できる。

Q. 親が反対しています

親世代は「3年は当然」という時代に働いた人たちだ。価値観が根本から違う。説得しようとしなくていい。今の自分の体と心の状態だけを、正直に伝えればいい。「限界だ」という事実は誰にも否定できない。

すぐやること3つ

  1. 辞めたい理由を箇条書きにする(体調・精神状態・職場環境・人間関係を別々に書き出す)
  2. 有給休暇の残日数を給与明細か社内システムで確認する
  3. 転職エージェントに無料相談を申し込む(辞めると決める前の情報収集でいい)

まとめ

  • 新卒で辞めたいのは甘えではない。大卒3年以内の離職率は約32%、3人に1人が辞めている
  • 民法627条により、無期雇用の労働者は2週間前の申出で退職できる
  • 有給消化と雇用保険の手続きは、辞める前に必ず確認する

次のステップ

辞め方そのもので迷ったら、退職代行の種類と選び方を社労士がまとめた記事が役に立ちます。→ 退職代行とは?3種類と選び方を社労士が解説

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

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