SNSに同僚の悪口や中傷動画を投稿してしまった——そういう相談が、ここ数年で明らかに増えています。「プライベートのアカウントだから大丈夫」と思っていたら、ある日突然上司に呼ばれた、というパターンが典型です。
結論を先に言います。同僚や取引先を中傷する動画を作成・拡散した場合、会社は懲戒処分を科すことができます。「個人の投稿だから無関係」とはなりません。
Yahoo!ニュースでも取り上げられているように、SNSでの中傷行為は今や社会問題です。ただ、プライベートの投稿だからといって、会社が何もできないわけではありません。
現役社会保険労務士として、どんな場合に処分が可能なのか、逆に処分が無効になるのはどんな場面かを整理します。
- SNS中傷で懲戒処分される3つのパターン
- 処分の種類と重さの判断基準
- 労働者として自分を守るためのポイント
SNS中傷で懲戒処分の対象になる3つのケース
個人アカウントへの投稿でも、次の3つに当てはまれば処分の対象になります。
ケース1:職場の人間関係を壊した場合
同僚や上司を名指しで中傷する動画を投稿し、職場に波及したケースです。「あくまで個人の発信」という言い訳は通りません。業務に支障が出たり、職場環境が悪化したりすれば、それ自体が処分の根拠になります。
同僚の悪口をSNSに投稿し続けた結果、職場での信頼関係が崩れ、懲戒処分に至った事例は実際にあります。発信した本人には「職場とは別の話」のつもりでも、受け取った側や職場全体への影響が問われます。
ケース2:会社の信用を損なった場合
取引先や顧客を名指しで批判・中傷する内容を投稿し、会社の評判が傷ついた場合です。実際に契約を失ったり、謝罪対応が必要になったりすれば、損害の大きさに応じて処分も重くなります。
営業職や顧客と直接関わる仕事の方は特に要注意です。社名や担当者名が特定できる内容なら、会社が損害を被ったと判断されやすい。
ケース3:名誉毀損や侮辱罪にあたる場合
投稿の内容が刑事罰の対象になる場合です。会社としても「知っていて放置した」という社会的責任を問われるため、処分せざるを得ない状況になります。
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懲戒処分の種類と、重さの判断基準
処分には段階があります。軽い順に並べると次のとおりです。
処分の種類(軽い順)
- 戒告・譴責:口頭または書面による注意。記録として残ります。
- 減給:給料の一部を差し引く。労働基準法による上限規制あり。
- 出勤停止:一定期間の自宅待機。給与は原則として支払われません。
- 降格:役職や等級を下げる。
- 懲戒解雇:即日解雇。退職金が出ないケースもあります。
重さを左右する3つの要素
1. 被害の大きさ
職場の雰囲気が少し悪くなった程度なら戒告・譴責どまりになることが多い。取引先との関係が壊れた、会社に具体的な損害が発生したとなれば、出勤停止以上、最悪は懲戒解雇もありえます。
2. 投稿の内容と悪質性
感情的な愚痴と、計画的に作成した中傷動画では話が違います。繰り返し投稿していた、拡散を意図的に狙っていたといった事情があれば、処分は重くなります。
3. 本人の対応と反省の度合い
発覚後すぐに投稿を削除し、上司に自ら報告・謝罪した場合と、開き直って継続した場合では結果が大きく変わります。早めに誠実に動くことが、処分を軽くする唯一の手段です。
逆に、処分が無効になるケースもある
会社が処分を科しても、要件を満たしていなければ無効になります。これは労働者にとって重要な話です。
就業規則に根拠がない場合
懲戒処分は就業規則に明記されている必要があります。「SNS利用に関する規定」がそもそも存在しない会社では、処分の根拠が揺らぎます。
処分が重すぎる場合
軽微な一言の愚痴投稿でいきなり懲戒解雇、というのは「処分の相当性」を欠くとして無効になる可能性があります。処分は行為に見合った重さである必要があります。
会社との関連性がほとんどない場合
完全にプライベートな内容で、職場とも取引先とも無関係であれば、処分は難しくなります。どれだけ「会社に関係がある」と言えるかが争点です。
不当に重い処分を受けたと感じたら、一人で抱え込まず専門家に相談することをすすめます。
よくある疑問 Q&A
- Q: 匿名アカウントでも懲戒処分されますか?
- A: 内容から本人が特定できれば処分の可能性があります。完全に匿名でも、職場の具体的な情報があれば特定されるリスクがあります。
- Q: 退職後に投稿した場合はどうなりますか?
- A: 退職後であれば懲戒処分はできません。ただし、名誉毀損などで民事・刑事責任を問われる可能性はあります。
- Q: 労働組合活動の一環として批判した場合は?
- A: 正当な労働組合活動であれば保護されます。ただし、個人的な中傷や違法行為は労働組合活動として認められません。
すぐやること3つ
- 就業規則のSNS規定を確認する:自分の会社にどんなルールがあるか、今日中に確認しておく
- 過去の投稿を見直す:問題になりそうな投稿があれば、早めに削除を検討する
- 投稿前に一晩置く:感情が高ぶっているときの投稿は必ず翌朝読み返してから判断する
まとめ
- 同僚や取引先への中傷動画は、プライベートの投稿でも懲戒処分の対象になる
- 処分の重さは被害の大きさ・悪質性・本人の対応で変わる
- 就業規則の根拠がない・処分が重すぎるケースは無効になることもある
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