「同じ仕事をしているのに、自分だけ賞与がない」という状況に疑問を感じている方はいませんか。
「非正規だから賞与なし」は、法律違反になる可能性があります。
2026年にかけて同一労働同一賃金のガイドラインが改正され、非正規労働者に関する判断基準がさらに整備されました。この記事では関連する法令・改正のポイントを解説します。
同一労働同一賃金のルールと改正のポイント、賞与・退職金をゼロにしてよい条件・ダメな条件、そして今すぐ取れる具体的な行動を順に説明します。
「同一労働同一賃金」とはどんなルール?
同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇差を禁止するルールです。2020年4月から大企業に、2021年4月からは中小企業にも拡大し、現在はすべての会社が対象です。法律の根拠は「パートタイム・有期雇用労働法(パート有期法)第8条」であり、合理的な理由のない賃金・賞与の格差は違法になります。
待遇差が「不合理かどうか」は、担当している業務の内容、仕事の内容や勤務場所が変わる可能性の広さ、そのほかの個別事情、の3点を踏まえて判断されます。
「正社員確保のためだから仕方ない」は通用する?
「優秀な正社員を確保・定着させるため、正社員の待遇を手厚くしている」という説明で待遇差を正当化しようとする会社があります。しかし、改正ガイドラインではこの説明だけでは不十分とされています。各待遇について、客観的な事実に基づいた説明が必要です。「うちの会社の方針だから」という漠然とした説明は、法律上の正当な根拠になりません。
【実践メモ】
パート有期法第14条には、労働者が会社に「待遇差の理由の説明を求める権利」が定められています。会社はこれを拒否できません。可能であれば、口頭だけでなく書面での回答を依頼しましょう。
賞与・退職金がゼロ。これは違法になる?
賞与や退職金には、仕事の成果への報酬、長年の勤務への感謝、生活を支える補助など複数の目的があります。こうした目的がパートや契約社員にも当てはまるなら、「非正規には一切支給しない」という扱いは不合理と認められる可能性があります。改正ガイドラインでは、賞与・退職手当ともに「ゼロ支給」が不合理になりうることが明記されました。
過去の最高裁判決も知っておこう
学校法人大阪医科薬科大学事件(最高裁令和2年10月13日)では、有期雇用職員への賞与ゼロが当時の状況のもとでは不合理とまでは言えないと判断されました。同日のメトロコマース事件(最高裁令和2年10月13日)でも、退職金をゼロにすることを不合理と認めない判断が出ています。ただしこれらは改正前のルールが適用された時代の判決であり、改正ガイドライン適用後は待遇の目的をより丁寧に検討することが求められます。
【実践メモ】
正社員と自分の業務内容を比べた記録を残しておきましょう。日報・業務指示書・担当業務リストなど「同じ仕事をしている証拠」が、交渉や手続きで力を発揮します。
定年後に再雇用された場合も、確認が必要
長澤運輸事件(最高裁平成30年6月1日)では、定年後に再雇用された事実は待遇差の判断材料の一つになりうると示されました。再雇用後に待遇が下がること自体には一定の合理性があると認めた判断です。しかし「何でも下げてOK」という意味ではありません。改正ガイドラインでは、定年後再雇用の場合でも待遇ごとに個別の判断が必要と明記されました。「再雇用だから」の一言で、すべての待遇差が自動的に認められるわけではないのです。
改正ガイドラインで何が変わったのか
改正ガイドラインで重要な変化を整理します。
「客観的・具体的な事実」での判断が求められるようになった
法律上はこれまでもそうでしたが、ガイドラインに明記されることで会社側の主観的な言い訳が通じにくくなります。
「正社員確保のため」だけでは理由として不十分と明示
この主張一本で待遇差を正当化することは認められなくなりました。各待遇について、個別の客観的な根拠が必要です。
賞与・退職手当の考え方がガイドラインに追加された
これまで明示されていなかった賞与・退職手当についての考え方がガイドラインに書き加えられました。一切支給しないことが不合理と認められうると初めてガイドラインに盛り込まれた点は、非正規労働者にとって重要な変化です。
よくある疑問
- パートでも賞与をもらえる可能性はある?
- あります。正社員と似た業務を担っていて、賞与の目的(成果報酬・生活補助など)が自分にも当てはまるなら、ゼロ支給が不合理と認められる可能性があります。まずは就業規則と雇用契約書を確認しましょう。
- 会社に待遇差の説明を求めることはできる?
- できます。パート有期法第14条により、非正規労働者は会社に待遇差の説明を求める権利があります。会社はこれを拒否できません。
- ガイドラインが変わったら、すぐ賞与がもらえる?
- 自動的にもらえるわけではありません。ガイドラインはあくまで指針です。実際には会社との交渉や、必要に応じた法的手続きが必要になります。専門家への相談が近道です。
- 定年後再雇用で給料が激減した。これは違法?
- 一概には言えません。再雇用前後の業務内容・責任の違いなどを総合的に判断されます。大幅な減額でも合法とされることがあるため、個別の事情を専門家に相談することをお勧めします。
待遇差を確認するチェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 雇用契約書・就業規則で賞与・退職金の規定を確認した | □ |
| 正社員と自分の業務内容を比較・記録した | □ |
| 会社から待遇差の理由について説明を受けたことがある | □ |
| 相談できる窓口(労働局・社労士・弁護士)を把握している | □ |
| 自分の業務内容の変化を日々メモしている | □ |
今日からできること
まず、雇用契約書と就業規則を今すぐ確認しましょう。賞与・退職金の支給条件が書かれているはずです。「非正規には適用しない」旨の記載があれば、その根拠を会社に問い合わせてみましょう。
次に、自分の業務内容をメモに残しましょう。正社員と同じ仕事をしている場合は、日時・業務内容・指示内容などを記録しておいてください。後の交渉や手続きで証拠になります。
疑問があれば、労働局の「総合労働相談コーナー」(無料)や社会保険労務士・弁護士に相談することができます。
まとめ
同一労働同一賃金はパート有期法第8条に基づくルールで、2021年から全企業が対象です。改正ガイドラインでは、客観的・具体的な根拠なしに待遇差を正当化できないことが明確になりました。「正社員確保のため」という漠然とした理由だけでは不十分であり、賞与・退職手当のゼロ支給が不合理と認められる可能性があることも明記されています。
定年後再雇用でも待遇ごとに個別の合理的な理由が必要です。パート有期法第14条に基づき、会社に待遇差の説明を求める権利があります。正しい知識と記録をもとに、待遇差について確認することができます。必要に応じて専門家や労働局に相談してください。
※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
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