カスハラ対策2026年10月義務化|会社に何を求められるか

ハラスメント


「また来た。今日も長時間のクレーム対応が待っている…」

サービス業・医療・福祉で働く多くの人が、そんな重さを抱えて出勤している。

暴言、執拗な謝罪要求、SNSへの書き込み攻撃。「お客様だから」と泣き寝入りしてきた人も多い。

2026年10月1日から、状況が変わる。

すべての会社に、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務付けられる(労働施策総合推進法等の改正・令和7年法律第63号、令和8年10月1日施行)。

社会保険労務士として、この改正を労働者目線でわかりやすく解説する。会社が義務として行うべき対策の内容、相談後の報復を受けない権利、就活中・インターン中の学生にも適用される新ルールを順に説明する。

カスタマーハラスメントとは?まず定義を確認する

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カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客・取引先・施設利用者などからの言動のうち、社会的に見て許容の範囲を超えたものが対象だ。その言動によって、働く人の就業環境が損なわれることを指す(令和8年厚生労働省告示第51号・カスタマーハラスメント防止指針)。

📌 ポイント:電話・SNS・メールでの攻撃も対象だ。直接対面でなくても範囲に含まれる。

「すべての苦情がカスハラか?」という疑問はもっともだ。正当な苦情はカスハラに当たらない。社会通念上、行き過ぎた言動が対象になる。

どんな行為が該当するか、3つのパターンに整理する。


要求の内容そのものが理不尽なパターン

契約や取引の範囲を大きく超えた要求が典型例だ。「担当者を解雇しろ」「会社名義で謝罪文を出せ」など、企業として応じられない要求がこれに当たる。

言動の激しさが問題になるパターン

大声での怒鳴り込み、長時間の拘束、脅迫的な言葉がこれに含まれる。「毎日来てやる」「ネットに晒す」といった言動も同様だ。

繰り返し・執拗に続くパターン

一度の苦情ではなく、同じ内容を何度も繰り返して職場を疲弊させるケースだ。特定の従業員を名指しして継続的に攻撃する行為も含まれる。

⚠️ 注意:「これがカスハラかどうか」は個別の状況で異なる。一人で判断せず、相談窓口や労働局に持ち込んでほしい。

2026年10月義務化。会社は何をしなければならないか

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令和7年(2025年)6月に改正法が成立した。2026年10月1日から、すべての会社にカスハラ対策が義務付けられる。大企業だけでない。中小企業も個人事業主も例外はない。


カスハラへの対応方針の明確化

会社は「カスハラには毅然と対応し、従業員を守る」という方針を全員に示す義務がある。「お客様は神様」という職場の空気に、ルールとして抜け出す根拠ができた。

【実践メモ】

カスハラ対応方針が社内に見当たらない場合は、人事や上長に「方針について確認したい」と持ちかけてほしい。2026年10月以降は義務なので、方針がない状態は法律違反だ。

相談窓口の設置と周知

カスハラに関する相談窓口を設け、従業員に周知することが義務になる。「どこに相談すればいいかわからない」状態を放置するのは法律違反だ。

✅ やること:社内の相談窓口の場所を今すぐ確認する。2026年10月以降は設置が義務だ。窓口がない場合は人事担当者に確認してほしい。

一人で対応させない体制

悪質なカスハラには複数人での対応が求められる。管理職が介入できる仕組みを整えることも義務に含まれる。「なぜ自分だけが一人で対応しなければならないのか」という問いに、法的な根拠が生まれた。

悪質ケースには警察への通報も

危険を伴うカスハラには、警察へ通報できる体制を整える義務がある。「お客様に何かあったら困る」を理由に、従業員が泣き寝入りする必要はなくなる。

被害後の迅速な対応

カスハラが起きた場合、会社は速やかに事実確認を行う義務がある。被害を受けた従業員へのメンタルヘルス対応・再発防止も義務だ。

【実践メモ】

カスハラを受けた際は、日時・状況・相手の言動をメモに残す。スマートフォンのメモ機能で十分だ。会社への対応要請の際に根拠として役立つ。

相談したら冷遇された?それは法律違反だ

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カスハラを相談したことを理由に、不当な扱いをすることは法律で禁止された。

具体的に禁止されているのは、相談を理由とした解雇・降格・減給、不当な異動・シフト変更、職場での孤立化・無視、人事評価への不当な影響だ。

📌 ポイント:相談者本人だけでなく、事実確認に協力した同僚も保護される。「証言したら損をする」という空気を、法律が変える。

相談後に不当な扱いを受けた場合は、都道府県の労働局(総合労働相談コーナー)に相談する手段がある。

【実践メモ】

相談前後で職場の扱いが変わった場合は、「いつから・何が変わったか」を記録する。シフト・評価・上司の態度など、具体的な事実を残すことが重要だ。

就活中・インターン中も守られる。求職者セクハラも義務化

今回の改正には、もう一つ重要な内容がある。

採用面接・説明会・インターンシップ中に従業員から性的な言動を受けた場合、会社が対処する義務が生まれる。これも2026年10月1日から施行される(令和8年厚生労働省告示第52号・就活等セクハラ防止指針)。

誰が守られるのか

求人に応募した求職者だけではない。次の人たちも対象だ。

  • 企業の説明会に参加した学生
  • インターンシップの参加者
  • 看護・教育などの実習生

正式に採用されていない段階でも守られる。

どんな行為が対象か

面接中に性的な事実関係を尋ねられた場合が典型例だ。インターンシップ中に繰り返し個人的な食事に誘われた場合なども対象になる。オンライン説明会やSNSでのやり取りも含まれる。

⚠️ 注意:同性からの性的言動も対象だ。被害を受けた方の性的指向・性自認にかかわらず保護される。

会社は相談窓口の設置・事実確認・再発防止の措置が義務だ。就活中にセクハラを受けた場合は、都道府県の労働局に申し出ることができる。

【実践メモ】

就活中にセクハラを受けた場合も、日時・場所・言動の内容を詳細にメモする。内定を断った後であっても、記録は力を持つ。


よくある疑問

2026年10月以前でも、会社にカスハラ対応を求められますか?
求められる。義務化前でも、会社には労働者の安全に配慮する義務(労働契約法第5条)がある。カスハラを放置した結果、精神疾患が生じた場合に会社の責任が問われた事例もある。今の時点でも対応要請は可能だ。
カスハラの義務化は大企業だけが対象ですか?
違う。企業規模を問わず、すべての事業主が対象だ。中小企業も個人事業主も含まれる。「うちは小さいから関係ない」は通らない。
カスハラを相談したあとに配置転換されました。どうすれば?
カスハラ相談を理由とした不利益取扱いは法律違反だ。都道府県の労働局(総合労働相談コーナー)に無料で相談できる。変化の記録を持参すると対応がスムーズになる。
就活の面接で性的な質問をされました。相談できますか?
できる。採用面接での性的な質問は、求職者等へのセクシュアルハラスメントに該当し得る。2026年10月からは会社の対処義務も生まれる。まず労働局や就職支援窓口に相談してほしい。

チェックリスト:あなたの職場の状況を確認する

確認項目 チェック
会社のカスハラ対策方針が示されているか
カスハラに関する相談窓口が設置・周知されているか
カスハラ対応時に一人で対応させられていないか
カスハラを相談したことで不利益な扱いを受けていないか
カスハラを受けた日時・内容の記録を残しているか
精神的な苦痛が続く場合、専門家に相談しているか

今日からできること

カスハラ被害の記録を始める。日時・相手の言動・自分の体調変化をメモする。スマートフォンのメモ機能で十分だ。

社内の相談窓口を確認する。どこに相談すればよいか今のうちに把握しておく。2026年10月以降は設置が義務だ。窓口がない場合は人事担当者に確認してほしい。

都道府県の労働局「総合労働相談コーナー」の連絡先を今すぐ調べてスマートフォンに保存する。無料で利用できる。会社内で相談しにくい場合の選択肢として、番号を持っておくだけで違う。


まとめ

カスタマーハラスメント対策が2026年10月1日から全会社の義務になった。相談窓口の設置・毅然とした対応方針・複数人対応の体制が義務化される。カスハラを相談したことを理由とした解雇・降格・減給は法律で禁止された。就活中・インターン中の学生への従業員によるセクハラも義務化の対象になった。

カスハラは「仕事のうち」でも「仕方ないこと」でもない。制度を知ることが、最初の一歩だ。

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※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Sasun Bughdaryan on Unsplash

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