65歳以上でWワーク!雇用保険マルチジョブホルダー制度の加入条件を社労士が解説

マルチジョブホルダー制度






65歳以上でWワーク!雇用保険マルチジョブホルダー制度の加入条件と手続き

2か所の職場で働いているけれど、1か所あたりの時間が短い。「週20時間に満たないから、雇用保険には入れない」と諦めていませんか?

実は、2か所の労働時間を合算して週20時間以上になれば、65歳以上の方は雇用保険に加入できます。

現役の社会保険労務士として、この「雇用保険マルチジョブホルダー制度」の仕組みと手続きを解説します。

この記事では、マルチジョブホルダー制度の加入条件、申請の手順と会社側の義務、そして加入すると受けられる給付の種類を順に説明します。

マルチジョブホルダー制度とは

記事関連画像

通常、雇用保険に加入するには1つの職場で週20時間以上働く必要があります。ところが65歳以上の方は、別のルールが使えます。2か所の職場を合計して週20時間以上なら、雇用保険に加入できます。これが「マルチ高年齢被保険者制度」、通称マルチジョブホルダー制度です。高齢になっても複数の仕事を組み合わせて働く方を守るための制度です。

📌 ポイント:1か所だけでは週20時間に届かなくても大丈夫。2か所を足して20時間以上になればOKです。

通常の雇用保険との大きな違い

通常の雇用保険は、会社が手続きを代行します。しかしこの制度は、本人が自分で申請する仕組みです。また、加入するかどうかは本人の意思が尊重されます。希望しない場合は、加入しなくてもかまいません。

加入するための条件

記事関連画像

この制度を使うには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

65歳以上であること

この制度は65歳以上の方専用です。64歳以下の方は通常の雇用保険のルールが適用されます。

2か所の合計で週20時間以上

各職場の週の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること、そして2か所を合計すると週20時間以上になること、この両方を同時に満たす必要があります。

⚠️ 注意:1か所だけで週20時間以上働いている場合は、この制度ではなく通常の「高年齢被保険者」として扱われます。会社が資格取得届を提出する義務があります。

31日以上の雇用が続く見込みがあること

2か所ともに、31日以上雇用が続く見込みがあることが必要です。単発や超短期のアルバイトでは加入できません。

✅ やること:まず雇用契約書を2か所分確認しましょう。週の所定労働時間と雇用期間の見込みをチェックしてください。

申請の手順と会社側の義務

記事関連画像

申請先と方法

申請先は、あなたの住所を管轄するハローワークです。電子申請はできません。窓口に直接行く必要があります。代理人が申請する場合は、委任状が必要です。

⚠️ 注意:申請した日が加入日になります。それ以前に遡っての加入はできません。「いつか申請しよう」と先延ばしにすると、その分だけ損をします。

会社には証明協力の義務がある

申請には、2か所の職場それぞれから書類が必要です。会社側には証明に協力する法的義務があります。「面倒だから断る」ことは許されません。また、申請したことを理由に勤務日数を減らしたり、扱いを悪くすることも禁止されています。不利益な扱いを受けたと感じたら、遠慮なく相談してください。

📌 ポイント:会社が証明を断ったり、申請後に不当な扱いをした場合は、ハローワークや労働基準監督署に相談できます。

【実践メモ】

会社への依頼は書面で行うと記録が残り安心です。「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請を希望しています。事業主記載事項の記入をお願いしたい」と具体的に伝えましょう。言い方に迷ったら、ハローワークが案内してくれます。

3か所以上で働いている場合

加入できるのは最大2か所の職場までです。3か所以上で働いている場合は、本人が2か所を選びます。なお、場所が別でも同じ経営者の事業所は1か所とみなされます。同じ会社の2拠点で働いていても、合算の対象になりません。

申請に必要な書類

ハローワークへ持参する書類は、2か所の職場それぞれから集める必要があります。

必要な書類は以下の通りです。雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(2事業所分)、個人番号登録・変更届、被保険者資格取得時アンケート、本人確認資料(マイナンバーカード等)、そして各職場の雇用契約書・出勤簿・賃金台帳・労働者名簿(直近1カ月分×2か所分)が必要です。すべての書類を2か所の職場から揃える必要があります。

✅ やること:書類の準備には時間がかかります。決断したら、すぐに2か所の職場の担当者に声をかけておきましょう。

【実践メモ】

書類の形式はハローワークで入手できます。不安な方は事前にハローワークに電話して「マルチジョブホルダーの申請に必要なものを教えてください」と確認するだけでもOKです。窓口でのやりとりがスムーズになります。

加入すると受けられる給付

マルチジョブホルダーとして加入すると、失業給付(基本手当)、育児・介護休業給付、教育訓練給付を受けられます。ただし、失業給付と育児・介護休業給付については、2か所の職場を両方とも離れた(または両方で休業した)場合が条件です。どちらか一方だけ辞めた場合は対象外となります。教育訓練給付は、スキルアップのための講座受講費用の一部が戻ってくる制度で、65歳を超えても活用できます。

📌 ポイント:失業給付・育児介護休業給付は「2か所とも」が条件です。片方だけ辞めたときのことも、あらかじめ理解しておきましょう。

よくある疑問

会社が書類の記入を拒否した場合、どうすればいいですか?
事業主には証明に応じる義務があります。断られた場合は、ハローワークか労働基準監督署に相談してください。「申請したいが会社が協力してくれない」と伝えれば、対応方法を案内してもらえます。
加入後、一方の職場だけ辞めたらどうなりますか?
一方だけ離職した場合、残った職場での週の労働時間が20時間未満であればマルチ高年齢被保険者の資格を失います。残った職場での時間が20時間以上になる場合は、通常の高年齢被保険者に切り替わる可能性があります。ハローワークで確認することをおすすめします。
何歳まで加入できますか?
年齢の上限はありません。70歳でも80歳でも、要件を満たしていれば加入できます。働き続ける意志がある限り、制度を活用できます。
勤務先が「同一事業主かどうか」わからない場合はどうすれば?
親会社・子会社の関係や、フランチャイズ加盟店の場合など、判断が難しいケースがあります。迷ったときはハローワークに確認しましょう。事前に相談するだけなら無料です。

加入前に確認するチェックリスト

確認項目 チェック
自分は65歳以上である
2か所の職場がある(各職場は週5時間以上20時間未満)
2か所の合計労働時間が週20時間以上になる
2か所ともに31日以上の雇用が見込まれる
2か所の経営者は別々の事業主である
両方の職場に書類作成を依頼した
自分の住所地のハローワークを確認した

今日からできること

まず、2か所の雇用契約書を確認しましょう。週の所定労働時間と雇用期間を確認し、条件を満たしているかチェックしてください。

次に、両方の職場に協力を依頼しましょう。「マルチジョブホルダー制度の申請をしたい」と伝えて、書類の作成を早めに依頼しておきましょう。

そして、書類が揃ったら住所地のハローワークの窓口へ行きましょう。申請した日からしか加入できないため、準備ができたら迷わず申請してください。

まとめ

65歳以上で2か所の職場を掛け持ちする場合、各職場が週5時間以上20時間未満・合計が週20時間以上・31日以上の雇用見込みという要件を満たすことでマルチジョブホルダー制度(マルチ高年齢被保険者)に加入できます。加入は任意で、希望する場合は本人がハローワークの窓口で申請します(電子申請不可)。申請した日からしか加入できないため、条件を満たしたら早めに動くことが大切です。会社には証明協力の義務があり、申請を理由とした不利益扱いは禁止されています。加入後は失業給付・教育訓練給付などを受け取る権利が生まれます。

制度を正しく知って活用することで、複数の職場で働きながらも適切な保障を得ることができます。条件に当てはまる場合は、ハローワークに相談しながら手続きを進めてください。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Resume Genius on Unsplash


タイトルとURLをコピーしました