降格させると言われた:役職の降格・等級の降格の違いと無効を主張できる条件

懲戒

突然「降格させる」と告げられたら、誰でも動揺します。特に中途採用で役職についた方は、「期待に応えられていない」という理由で降格を迫られることがあります。

降格は会社が自由にできるわけではありません。条件を満たさない降格は、無効にできる場合があります。この記事では、降格の種類とそれぞれで必要な条件、給与が下がる降格に会社が満たすべき要件、「人事権の濫用」として降格を無効にできるケースを順に説明します。

降格には2種類ある

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「降格」という言葉には、役職の降格(ポジションを下げる)と職能資格の降格(等級・グレードを下げる)という2つの意味があります。混同されやすいですが、それぞれで必要な条件がまったく違います。どちらの降格を告げられているかを、まず確認しましょう。

役職の降格(ポジションを下げる)

「部長から課長になれ」というような、肩書きを下げる降格です。役職手当がなくなるため給与が減るケースが多いですが、役職と給与の関係が就業規則に明記されていることが前提条件です。

📌 ポイント:役職を下げること自体は、会社の人事権の範囲内です。しかし給与を下げるなら、就業規則に「役職と手当の対応関係」が書かれている必要があります。書かれていなければ、給与カットは無効になる可能性があります(東京地決平成9年1月24日・判時1592号137頁)。

職能資格の降格(等級・グレードを下げる)

会社内の「資格等級」を下げる降格です。基本給に直接影響するため、役職の降格より給与への打撃が大きくなります。こちらは必ず就業規則に根拠規定が必要です。根拠規定がなければ、等級を下げること自体が無効になります。

⚠️ 注意:「等級を下げる」「グレードを落とす」と言われた場合は要注意です。就業規則に降格の根拠が記載されていなければ、その命令は無効になる可能性があります。

給与が下がる降格に必要な条件

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降格によって給与が下がる場合、会社は就業規則に根拠があることと、人事権の濫用にならないことの2点を満たさなければなりません。どちらか一方が欠けるだけで、降格命令は問題のある命令になります。

就業規則に根拠があること

役職手当の金額や適用条件が、就業規則に明記されている必要があります。この原則は裁判所の判断でも確認されており(東京地決平成9年1月24日・判時1592号137頁)、就業規則に書かれていない給与カットは、違法になり得るということです。

【実践メモ】

今すぐ会社の就業規則を確認してください。「役職手当の支給条件と金額」「降格に関する規定」が記載されているかをチェックします。就業規則は社員に閲覧させる義務が会社にあります。「見せてほしい」と言えば、会社は断れません。

人事権の濫用にならないこと

就業規則に根拠があっても、それだけでは十分ではありません。合理的な理由がなく給与が大幅に下がる降格は「人事権の濫用」として無効になります。東京高判平成17年1月19日(労判889号12頁)では、相当な根拠のない降格で給与が著しく低下した事案について、人事権の濫用として降格命令を無効と判断しました。「業績が悪かった」という漠然とした理由だけでは、裁判で通用しません。

✅ やること:降格を告げられたら、「なぜ降格させるのか、具体的な理由を書面で教えてほしい」と会社に求めましょう。口頭だけの説明は、後で「言った・言わない」の水掛け論になります。

「人事権の濫用」になるかどうかの判断基準

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裁判所が「人事権の濫用かどうか」を判断するとき、業務上の必要性(降格に合理的な理由があるか)、労働者が受ける不利益の大きさ(給与がどれだけ下がるか)、その役職にふさわしい能力が本当に不足していたかどうかなどを総合して、降格が「やりすぎ」かどうかを判断します。

📌 ポイント:「あなたには能力がない」と言われた場合、どんな業務でどんな問題があったかを会社に確認しましょう。主観的な評価だけでは、裁判で会社側が立証できないことが多いです。

中途採用者が特に注意すべきこと

中途採用で役職についた場合、採用時の取り決めが非常に重要です。採用時に「部長として採用する」と明示されていれば、その役職は労働条件の一部です。会社が一方的に変えるには、相応の理由と、場合によってはあなたの同意が必要になります。採用時の求人票・労働条件通知書・雇用契約書は必ず手元に保管してください。

【実践メモ】

採用時に受け取った雇用契約書・労働条件通知書を今すぐ確認してください。役職名が明記されているなら、それはあなたと会社が交わした約束です。もし書類が手元にない場合は、会社に「労働条件通知書の写しをください」と請求できます(労基法15条に基づく権利です)。

よくある疑問

降格を口頭で言われた。同意しなければ止められますか?
役職の降格は、条件を満たせば会社が人事権として行使できる場合があります。単純に「同意しない」だけでは止められないケースもあります。ただし、給与が下がる場合や就業規則に根拠がない場合は、異議申し立ての余地があります。まず就業規則を確認するのが先決です。
降格後に給与が大きく下がった。差額を取り戻せますか?
降格が「人事権の濫用」として無効と認められれば、差額の給与を請求できます(東京高判平成17年1月19日・労判889号12頁参照)。賃金請求権の時効は原則5年(当面3年・労基法115条)です。早めに労働基準監督署または弁護士・社会保険労務士へ相談することをお勧めします。
「パフォーマンスが低い」と言われて降格された。根拠を確認できますか?
会社が降格の根拠とする具体的な事実を、書面で求めましょう。「どの業務でどのような問題があったか」を文書で回答するよう求めることが有効です。漠然とした評価だけでは、裁判で会社側が立証できないことが多いです。
降格と同時に大幅な給与カットを告げられました。どうすればいいですか?
就業規則の降格・賃金関連の規定を確認し、根拠が不明確なら書面で異議を伝えましょう(東京地決平成9年1月24日・判時1592号137頁参照)。降格通知を受けた日時・場所・発言内容を必ず記録してください。そのうえでできるだけ早く専門家に相談することをお勧めします。

チェックリスト:降格を告げられたときの確認事項

確認項目 チェック
就業規則に降格・役職変更の根拠規定があるか
役職手当の金額と支給条件が就業規則に明記されているか
職能資格(等級)の降格規定が就業規則にあるか
採用時の雇用契約書・労働条件通知書を保管しているか
降格の理由を書面で受け取ったか(または求めたか)
降格によって給与がいくら下がるか確認したか
降格通知の日時・場所・発言内容を記録したか

今日からできること

まず、就業規則を確認してください。降格・役職手当・職能資格に関する規定を探しましょう。会社には社員に就業規則を閲覧させる義務があります(労基法106条)。

次に、採用時の書類を確認してください。雇用契約書・労働条件通知書に記載された役職・給与の内容を確認します。手元にない場合は、会社に写しを請求しましょう。

そして、降格通知の記録を残してください。いつ・誰に・どんな内容で言われたかをメモし、可能であれば書面での交付を求めましょう。

まとめ

降格には役職の降格と職能資格の降格の2種類があり、給与が下がる降格には就業規則の根拠規定が必要です(東京地決平成9年1月24日・判時1592号137頁)。合理的な根拠がなく給与が大幅に下がる降格は人事権の濫用として無効になる可能性があります(東京高判平成17年1月19日・労判889号12頁)。中途採用で役職が明示されていた場合は採用時の契約書が重要な証拠になります。まず就業規則・採用時の書類・降格通知の記録を確保することが最初の一手です。

正しい知識を持つことで、不当な降格命令に対して適切な対応を取ることができます。疑問な点は労働基準監督署・社労士・弁護士に早めに相談してください。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Samuel Costa Melo on Unsplash

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