「管理職だから育児短時間勤務は使えない」は違法:法律が示す正しい解釈

管理監督者





管理職でも育児短時間勤務を申請できる:管理監督者との違いと対処法

管理職だから育児短時間勤務は使えない、と会社に言われた。そんな状況で、あきらめていませんか?

結論から言います。「管理職であること」だけを理由に申請を断ることは、法律上できません。

現役の社会保険労務士として、この問題を正確に解説します。この記事を読めば、自分に権利があるかどうかを自分で判断できるようになります。育児短時間勤務制度の基本、「管理職」と「管理監督者」の違い、そして会社に断られたときの具体的な動き方を順に説明します。

育児短時間勤務制度とは:あなたの権利の確認から始めよう

記事関連画像

育児短時間勤務制度は、育児・介護休業法第23条に定められた制度です。3歳未満の子どもを育てていて育児休業をしていない人が、1日の勤務時間を原則6時間に短縮できます。この制度を整備することは、会社の「義務」です。

📌 ポイント:制度の対象外とできるのは、日雇いの方・もともと1日6時間以下勤務の方・労使協定で定めた一部の方(入社1年未満など)だけです。「管理職だから」という理由は、法律上の除外理由に含まれていません。

唯一の例外:「管理監督者」とは何か

ただし、一つだけ例外があります。労働基準法第41条に定める「管理監督者」に該当する人は、育児短時間勤務制度の義務対象外になります。育介法の施行通達(平成28年8月2日付職発0802第1号/雇児発0802第3号、最終改正:令和5年4月28日付雇均発0428第3号)でも、職場で「管理職」として取り扱われている者であっても同号の管理監督者に当たらない場合には義務の対象となることが明示されています。ここで重要なのは、「管理職」と「管理監督者」は全く別の言葉だということです。

「管理職」と「管理監督者」は別物です

記事関連画像

多くの会社では、課長・部長・マネージャーなどを「管理職」と呼びます。しかし法律が定める「管理監督者」は、もっと厳しい条件を満たす必要があります。役職の名前が「管理職」「部長」であっても、法律上の管理監督者に当たらないことはよくあります。

管理監督者と認められるための実態要件

裁判所や行政が判断する際に重視するポイントとして、会社の経営に関わる重要な意思決定に実際に参加しているかどうか、出退勤の時間や休憩を自分の判断で自由に決められるかどうか、その地位にふさわしい給与や処遇を受けているかどうかという3つが挙げられます。

⚠️ 注意:名刺に「マネージャー」「部長」と書いてあっても、それだけでは管理監督者にはなりません。実態が伴っているかどうかで判断されます。タイムカードで出退勤を管理されている管理職は、管理監督者とは認められないことが多いです。

育介法の通達でも明確に書かれていること

育児・介護休業法の施行通達でも、この点は明確に整理されています。職場で管理職として扱われていても、労基法第41条の管理監督者に当たらない場合には育児のための所定労働時間の短縮措置の義務対象となることが示されています。つまり、役職名ではなく実態で判断するということです。管理職であっても管理監督者でなければ、あなたには育児短時間勤務を申請する権利があります。

【実践メモ】

自分が管理監督者かどうか振り返ってみてください。タイムカードや勤怠システムで出退勤を管理されているか、会社の重要な経営判断(採用・予算・事業方針など)に実際に関わっているか、管理職手当があるがそれほど高い処遇を受けているわけではないか——「管理されている」「関与できていない」「処遇が見合っていない」と感じる場合、管理監督者には当たらない可能性が高いです。

会社に断られたときの対処法

記事関連画像

管理職だからという理由で申請を断られた場合、焦らず順番に動くことが大切です。

書面で申請し、記録を残す

まず、口頭ではなく書面で申請することが重要です。「申請した事実」を残すことが、あとあと大切になります。申請日・子どもの生年月日・希望する勤務時間の内容を記録しておきましょう。

✅ やること:会社に申請書の書式があればそれを使い、なければ「育児短時間勤務申請書」として自分で作成して提出しましょう。受け取ってもらえたかどうかも含め、コピーを必ず手元に残してください。

断られた理由を書面で確認する

断られた場合は、その理由を書面で出してもらうよう求めましょう。「管理職だから」という理由が書面に残れば、後の交渉材料になります。口頭で断られた場合も、日時・相手・内容をメモしておきましょう。

📌 ポイント:育児・介護休業法第10条により、育児関連の制度を申請・利用したことを理由にした不利益な扱い(降格・減給・解雇など)は禁止されています。申請したこと自体を理由に評価を下げることも違法です。

都道府県の労働局に相談する

社内で解決できない場合は、外部機関への相談が有効です。各都道府県の労働局には「雇用環境・均等部(室)」という窓口があります。育児・介護休業法に関するトラブルの相談を、無料で受け付けています。

【実践メモ】

「厚生労働省 雇用環境・均等部」で検索すると、お住まいの地域の窓口が見つかります。電話相談を受け付けているところも多いです。労働局は会社に対して助言・指導・勧告を行う権限を持っています。一人で抱え込まず、まず相談してみてください。

よくある疑問 Q&A

Q: 残業代がなく、ある程度自分で仕事の進め方を決めています。管理監督者になりますか?
A: 残業代がないことや業務の裁量があることだけでは、管理監督者と認定されるわけではありません。出退勤の自由・経営への実質的な関与・処遇の水準を総合的に判断します。判断が難しい場合は、社労士や労働局への相談をおすすめします。
Q: 申請したら評価や昇進に影響しそうで不安です。
A: 育児短時間勤務の申請・利用を理由とした不利益な扱いは、育児・介護休業法で明確に禁止されています。もし不利益な扱いをされた場合は、証拠を残した上で労働局に相談することで対処できます。
Q: 会社が「あなたは管理監督者だ」と主張しています。どう対応すればよいですか?
A: 客観的な記録を集めることが大切です。勤怠管理の記録・業務内容の記録・経営会議への参加状況などが判断材料になります。「実態として管理されているかどうか」が争点になるため、専門家への相談が有効です。
Q: 万が一管理監督者と認定されたら、育児のための短縮勤務は一切できないのですか?
A: 法律上の義務対象ではなくなりますが、会社が任意で短縮勤務を認めることは可能です。施行通達でも、管理監督者に対しても育児のための所定労働時間の短縮措置に準じた制度を導入することは仕事と子育ての両立を図る観点からむしろ望ましいとされています。任意の措置として人事部門や上長に相談してみる価値はあります。

チェックリスト

確認項目 チェック
子どもが3歳未満である
現在育児休業中ではない
タイムカード等で出退勤を管理されている
経営の重要な意思決定に実質的には参加していない
管理職手当があるが、それほど特別な高額処遇ではない
書面で申請し、コピーを手元に保管した
断られた場合、日時・内容・相手を記録した

今すぐはじめる3つのアクション

まず自分が管理監督者に当たるかどうかを確認しましょう。出退勤の自由度・経営参加の実態・処遇の水準を振り返ってください。

次に、育児短時間勤務の申請を書面で行いましょう。口頭ではなく書面で申請し、コピーを残すことで記録が残ります。

そして、断られた場合は都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」に相談してください。無料で相談でき、会社への働きかけも期待できます。

まとめ

「管理職であること」だけを理由に育児短時間勤務(育児・介護休業法23条)を断ることは認められません。制度の対象外となるのは労働基準法第41条上の「管理監督者」のみであり、管理監督者かどうかは役職名ではなく経営参加・時間裁量・処遇の実態で判断されます(施行通達:平成28年8月2日付職発0802第1号/雇児発0802第3号、最終改正:令和5年4月28日付雇均発0428第3号)。断られたときは書面で記録を残し、都道府県労働局に相談するという手段があります。管理監督者と認定された場合でも、会社が任意で短縮勤務を認めることは可能ですし、施行通達上も望ましいとされています。

管理職として責任を担いながら、子どもとの時間も守りたい。その思いは正当な権利として法律に守られています。キャリアと家族を守るために、正しい知識を使ってください。

※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。

Photo by Brett Jordan on Unsplash



タイトルとURLをコピーしました