「副業がバレた。もしかして解雇される?」
そんな不安を感じていませんか?
結論から言います。就業規則に副業禁止の条項があっても、それだけで解雇が正当とはなりません。
現役の社会保険労務士として、副業と解雇をめぐる判例と対抗手段をわかりやすくお伝えします。
- 会社が副業を制限できる範囲とその限界
- 解雇が有効になるケース・無効になるケース
- 副業トラブルに遭ったときの具体的な対処法
副業は「本来、労働者の自由」が原則
まず、法律の大前提を押さえましょう。
労働契約で会社に縛られるのは、就業時間中だけです。
定時後の時間は、あなた自身のものです。
だから、就業規則に「副業禁止」と書いてあっても、無条件に有効とはなりません。
裁判所も、就業時間外の活動である副業を一律に禁止することは、特別な事情がない限り合理性がないという考え方を示しています(小川建設事件・東京地裁昭和57年11月19日)。
つまり、会社は副業を「全面禁止」することはできないのが原則です。
例外として副業制限が認められる4つの場面
ただし、何でもOKというわけでもありません。
以下の4つの場面では、会社が副業を制限・禁止することが認められています。
① 本業への支障がある場合
副業による疲労・体調不良が本来の業務に影響を与えるとき。
たとえば毎週末に体力を使い果たし、月曜の業務に毎回支障が出るようなケースが該当します。
② 企業秘密が漏れる恐れがある場合
副業先に会社の機密情報が流出するリスクがあるとき。
営業リストや技術情報を扱う職種では特に注意が必要です。
③ 会社の信用・名誉を損なう行為の場合
副業の内容が会社のイメージを著しく傷つけるとき。
④ 競業(同業他社での副業)の場合
ライバル会社で働くことで、自社の利益を損なうとき。
厚生労働省の「モデル就業規則」でも、この4場面にのみ副業を禁止・制限できるとされています。
さらに現在のモデル就業規則は、許可制ではなく「届出制」を採用しています。
解雇が「有効」と判断されたケースとは
実際に解雇が認められたケースを確認しましょう。
小川建設事件(東京地裁昭和57年11月19日)では、従業員が本業の終業後、毎日にわたって深夜近くまで継続的に副業を行っていたことが問題になりました。
裁判所はこう判断しました。
内容が軽い仕事であっても、連日深夜まで及ぶ副業を続ければ、翌日の業務遂行に何らかの支障が生じる可能性が高い。
余暇の過ごし方の範囲を大きく超えている。
つまり、「毎日・深夜・長時間」という継続性と負荷が、解雇を有効とした決め手になったということです。
【実践メモ】
副業の時間・頻度が「本業に影響する水準か」が重要な判断基準です。
副業を始める際は、十分な睡眠と体調管理を徹底しましょう。
届出が必要な場合は、必ず事前に手続きをしてください。
解雇が「無効」になるケース──反論の余地がある
一方、副業を理由にした解雇が無効と判断されたケースも多くあります。
「副業禁止規定はあったが、業務に具体的な支障は生じていなかった」というケースでは、懲戒事由に当たらないと判断されています(十和田運輸事件・東京地裁平成13年6月5日、平仙レース事件・浦和地裁昭和40年12月16日など)。
就業規則に「禁止」と書いてあるだけでは、解雇の正当理由にはなりません。
裁判所が問うのは「実際に会社にどんな損害・支障が生じたか」です。
政府は副業を「推進」している──時代の流れを味方に
国の方針も知っておきましょう。
現在、政府は副業・兼業を積極的に推進しています。
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業を認めることが基本姿勢とされています。
モデル就業規則も、かつての許可制から届出制に切り替わりました。
「副業を全面禁止する就業規則」は、この時代の流れにも逆行しています。
また、2020年の労災保険法改正により、複数の仕事を掛け持ちする労働者への保護も拡充されました。
複数の勤め先の賃金を合算して補償額を計算する仕組みが整いました(労災保険法8条3項)。
副業を理由に解雇されたら──今すぐできる対処法
副業を理由に解雇・懲戒処分を受けた場合は、以下の順で動いてください。
ステップ①:解雇理由書を請求する
会社に解雇の理由を書面で交付するよう請求しましょう(労働基準法22条)。
会社はこの請求を拒否できません。
ステップ②:就業規則の内容を確認する
副業禁止規定がどのように書かれているかを精読します。
「全面禁止」か「届出・許可制」か、条件の記載はどうなっているかを確認してください。
ステップ③:専門家に相談する
労働局・社会保険労務士・弁護士への相談をおすすめします。
初期相談が無料の窓口も多くあります。
【実践メモ】
「副業が唯一の理由」「業務への実害はなかった」という場合は、不当解雇として争える可能性があります。
一人で抱え込まず、まず相談してください。
よくある疑問 Q&A
- Q: 副業禁止規定がある会社で副業をするとどうなりますか?
- A: 懲戒処分(戒告・減給・解雇など)を受ける可能性があります。ただし業務への支障や実害がなければ、処分が重すぎるとして無効になるケースもあります。まず就業規則の内容を確認し、届出制であれば必ず届出をしましょう。
- Q: 副業がバレたとき、まず何をすればいいですか?
- A: 慌てず、まず就業規則の副業に関する条項を確認してください。届出が必要な場合は速やかに届け出ます。処分を告げられた場合は、書面での解雇理由の交付を請求し、専門家に相談しましょう。
- Q: 副業先で怪我をした場合、労災は使えますか?
- A: 副業先でも労災保険は適用されます。2020年の法改正により、複数の勤め先の賃金を合算して補償額を計算する制度も設けられました。副業先の収入も保障の対象になります(労災保険法8条3項)。
- Q: 会社に無断で副業をしていました。解雇は必ず有効になりますか?
- A: 無断であること自体は一つの事情ですが、それだけで解雇が有効になるわけではありません。業務への具体的な支障・会社への損害がなければ、解雇が無効と判断される可能性があります。専門家へ相談することをおすすめします。
チェックリスト
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 副業は就業時間外に行っている | □ |
| 本業に具体的な支障が生じていない | □ |
| 副業先が競合他社ではない | □ |
| 会社の機密情報を副業先で使っていない | □ |
| 届出・許可が必要な場合は手続き済み | □ |
| 副業による体調不良・睡眠不足はない | □ |
| 解雇された場合は解雇理由書を請求した | □ |
すぐやること 3 つ
- 就業規則の「副業・兼業」欄を今すぐ確認する
- 届出が必要な場合は速やかに手続きをする
- 解雇・懲戒処分を受けたら「解雇理由書」を書面で請求する
まとめ
- 副業は就業時間外の活動であり、本来は労働者の自由
- 就業規則に禁止と書いても、合理性がなければ無効になりうる
- 解雇が有効になるのは本業への支障・競業・秘密漏洩などがある場合
- 「禁止規定があるだけ」では解雇の正当理由にはならない
- 政府の副業推進の流れは、労働者にとって大きな追い風
- 解雇された場合はまず解雇理由書を請求し、専門家に相談を
副業は、あなたのキャリアと生活を自分の力で広げるための選択肢です。不当な理由で仕事も収入も奪われないよう、法律を味方につけて堂々と権利を守ってください。
※本記事は執筆時点の法令・判例に基づいて作成しています。法律は改正されることがあります。最新の情報や個別のご事情については、社会保険労務士・弁護士などの専門家にご相談ください。
Photo by Brett Jordan on Unsplash

