【大学のセクハラ問題】懲戒処分は無効とされたがハラスメントと認定!判例から学ぶ対策と対処法

「大学のゼミに入りたかっただけなのに、まさかこんなことになるなんて…」

ハラスメントは、職場だけでなく、 大学や教育機関でも発生 することがあります。今回の事例は、 大学の准教授がゼミ生に対して不適切なLINEを送った ことが問題となったものです。

ここで注目すべき点は、 准教授が懲戒処分の無効を訴えた ということ。裁判では、停職1か月の処分が 「重すぎる」 と判断され、最終的に処分は無効となりました。

しかし、「懲戒処分が無効になった=ハラスメントがなかった」 ということではありません。
裁判では、 LINEのやり取りがセクハラに該当することは認められた のです。
つまり、 ハラスメント行為は成立しているが、処分が行き過ぎていたため無効とされた という特殊なケースです。

この記事では、
✅ 准教授のLINEのどこがハラスメントに該当したのか
✅ なぜ懲戒処分が無効になったのか
✅ 大学でのハラスメント(アカデミックハラスメント)の対策
について、詳しく解説します。

教育機関でのハラスメントも、 決して見過ごされるべきではありません。
「これってセクハラ?」と感じたら、適切に対応することが大切です。

あなたは悪くない – ハラスメントに巻き込まれたときの心構え

ハラスメントを受けたとき、多くの人が 「自分の対応が良くなかったのでは?」 と考えてしまいます。今回の事例でも、被害者の女子学生は、准教授とのLINEのやり取りを 「途中で切り上げるタイミングがわからなかった」 と話していました。

しかし、 あなたは決して悪くありません。

相手が年上や上司、指導者の立場にある場合、 はっきり拒否するのが難しい場面 もあります。やんわりとした返答をしたとしても、それは 「受け入れた」ことにはなりません。

また、 「明確に拒否しなかったのだから問題ではない」 という考え方は適切ではありません。

相手との関係性によって、言いづらいことがあるのは自然なこと
その場の流れで返答しても、それが承諾を意味するわけではない
もし不快に感じたら、信頼できる相談先を頼ってよい

実際、被害者は准教授とのやり取りで 心理的な負担を感じ、相談機関に助けを求めました。
つまり、 本人が「困った」と感じた時点で、適切な対応を考えることが大切なのです。

まずは「自分が悪かったのでは」と考えすぎず、落ち着いて状況を整理してください。

東京経済大学事件 – 懲戒処分が争われたセクハラ事案

今回の事例は、大学の准教授(D)が女子学生(V)に対して不適切なLINEのやり取りを行った ことが発端となっています。D准教授が争ったのは セクハラの有無ではなく、大学による懲戒処分の妥当性 でした。

事件の概要

Vは短大から大学に転入し、D准教授のゼミを希望していました。ある日、D准教授とLINEで約7時間にわたるやり取り を行いましたが、その中で以下のようなやり取りがありました。

セクハラに関する話題 を出し、「自分もアウトかもしれない」といった発言
女性の容姿を評価する発言 をし、「かわいくないからゼミに入れない」と言及
「デートしようか?」と誘う 発言

Vは、D准教授とのやり取りを「途中でやめるタイミングを見失い」、適当に受け流す返答を続けました。しかし 深夜1時を超えた頃に不快感が強まり、ゼミを辞めたいと考えるようになった とのことです。

大学の対応とD准教授の反論

翌日、Vは 大学の人権相談室に相談 し、D准教授の言動が セクハラに該当するとして処分申立書を提出 しました。

その結果、大学は D准教授に「停職1か月」の懲戒処分 を下しました。しかし、D准教授はこの処分について 「重すぎる」として裁判を起こしました。

裁判の判断 – 懲戒処分は無効だが、セクハラは成立

東京地裁は、D准教授のLINEの内容について 「女性の立場から見れば不快感を覚える内容」 と認めました。

しかし、以下の理由から 停職1か月の懲戒処分は無効 であると判断しました。

📌 LINEのやり取りは全体的に冗談交じりであり、上下関係を利用して強制したとは認められない
📌 Vの返答もフランクであり、明確に拒絶していない
📌 D准教授には過去の懲戒歴がなく、反省の態度を示している

この判決のポイントは、「セクハラの事実は認められたが、処分が重すぎた」 という点にあります。つまり、D准教授の言動は不適切だったものの、大学の対応が厳しすぎると判断されたのです。

「懲戒処分の妥当性」と「ハラスメントの成立」は別の問題であることを、しっかり理解しておくことが重要です。

この後のブロックでは、セクハラの基準や対処法 について詳しく解説していきます。

セクハラの基準とは? – どこからがハラスメントになるのか

セクハラ問題を考える際に重要なのは、どのような行為がセクハラに該当するのか を正しく理解することです。今回の事件でも、裁判所はD准教授のLINEの発言を 「女性の立場から見て不快感を覚える内容」と認定 しました。

ここで改めて、セクハラの定義や基準 を確認しておきましょう。

セクハラとは?法律上の定義

セクシャルハラスメント(セクハラ)は、厚生労働省のガイドラインにおいて以下のように定義されています。

職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により、労働条件に不利益を与えたり、職場環境を害する行為

この定義を細かく分けると、以下の2つのタイプに分類されます。

対価型セクハラ … 「性的な関係を断ったことで不利益を受ける」ケース
環境型セクハラ … 「職場の環境を悪化させるような性的言動」

今回のケースは、「デートに誘う」「女性の容姿を評価する発言」などが 環境型セクハラに該当する可能性が高い でしょう。


どこからがセクハラになるのか?

セクハラかどうかを判断する際には、次の2つのポイントが重要です。

  1. 被害者が不快に感じたかどうか
  2. 一般的な社会常識から見て、不適切な言動だったか

裁判例でも、単に「相手が嫌がったからセクハラ」と判断されるわけではなく、 社会一般の基準 から見てどうかが重要視されます。

今回の事件では、D准教授の発言について以下の点が問題視されました。

性的な話題を持ち出した (「学長のケースって、やっちゃったの?」など)
女性の容姿を評価した (「かわいくないからゼミに入れない」など)
デートに誘った (「先生イケる感じ?」「今度、デートしよっか?」など)

特に、上司・指導者という立場の人物が、部下や学生に対して行うセクハラは「アカデミックハラスメント」の要素を含むため、より問題が大きくなる 傾向があります。

セクハラに該当しないケースとは?

一方で、どのような場合に 「セクハラには該当しない」と判断されるのか も知っておく必要があります。※下記のケースでも、セクハラとなる場合は十分ありえます。

📌 被害者が冗談として受け入れていた場合
📌 業務上の必要な指導の範囲内であった場合
📌 発言が一度きりであり、執拗な継続性がなかった場合

今回のケースでは、VがLINEのやり取りの中でフランクな返答をしていたこと や、D准教授が「しつこく誘うタイプではない」と発言していたこと が、懲戒処分を軽減する要素となりました。

ただし、これは 「セクハラではなかった」 という意味ではなく、「懲戒処分としては重すぎた」 という判断です。セクハラそのものは成立している点に注意が必要です。

セクハラ問題は「加害者の意図」ではなく「被害者がどう感じたか」が重要

今回のケースのように、「フランクな雰囲気だったから大丈夫」と思っていても、相手がストレスを感じていればセクハラと認定される可能性があります。

次のブロックでは、セクハラ被害に遭ったときの適切な対処法 について解説していきます。

セクハラ被害に遭ったらどうする?適切な対処法

セクハラ被害に遭った場合、「自分が我慢すればいい」と思い込まないこと が大切です。
特に今回のように 「軽い冗談」「フランクなやり取り」 の中でセクハラが行われるケースでは、被害者が 「これくらいなら許容すべき?」 と悩みがちです。

しかし、精神的なストレスを感じた時点で、何らかの対処をするべき です。
ここでは、適切な対応のステップ を解説します。

記録を残す(証拠を確保)

証拠があれば、後々の対応がスムーズになります。
今回の事件でも、VがLINEのやり取りを保存していた ことが、大学側の対応に影響を与えました。

スクリーンショットを保存する(LINE、メール、チャットなど)
会話を録音する(可能であれば)
日記をつける(日時、場所、内容、状況などを記録)

相談する(社内・外部の相談窓口を活用)

一人で抱え込まず、第三者に相談することが大切です。
今回の事件でも、Vは大学の相談窓口に相談したことで、適切な対応につなげることができました。

相談先の例:
職場のハラスメント相談窓口(大学の場合は人権相談室など)
労働局の「総合労働相談コーナー」(無料・匿名OK)
労働基準監督署(ハラスメントによる労災申請も可能)
弁護士・社労士(法的手続きのアドバイス)

💡 社内に相談できる窓口がない場合は?
外部の機関に相談しましょう。
「相談したことがバレたらどうしよう…」と不安に思うかもしれませんが、外部の相談機関は 秘密厳守 なので安心してください。

メンタルがつらい場合は、医師の診断を受ける

精神的に追い詰められた場合は、無理せず医師の診断を受けましょう。
今回の事件でも、Vはセクハラが原因でストレス性の急性胃炎と診断 されています。

病院やメンタルクリニックを受診する(診断書をもらう)
労災申請を検討する(精神疾患の労災認定も可能)
休職・転職を視野に入れる(自分の心と体を守ることが最優先)

💡 「会社を辞めたら負け?」
そんなことはありません!
ハラスメントが続く職場に無理して居続ける必要はありません。
自分の健康を最優先に考え、新しい環境を探すのも立派な対処法 です。

必要に応じて法的手続きを検討する

セクハラがエスカレートした場合、法的な対応も視野に入れた方がいいかもしれません。
今回のケースのように、大学や企業が適切な対応をしなかった場合、法的措置を取ることで解決に向かうケースもあります。

内容証明郵便で「セクハラの停止要求」を送る
慰謝料請求(民事訴訟)を検討する
労働審判や裁判を起こす(弁護士と相談)

💡 「訴えるのはハードルが高い…」
いきなり訴訟を起こす必要はありません。
まずは 労働局のあっせん内容証明での警告 など、段階的に対応を進めることもできます。

まずは小さな一歩から!

セクハラ被害に遭ったとき、すぐに「戦う」必要はありません。
まずは 自分の気持ちを整理し、信頼できる人に相談すること から始めてみてください。

懲戒処分の有効性はどこで判断されるのか?

今回のケースでは、D准教授のセクハラ行為が認定されたものの、停職1か月の懲戒処分は無効と判断されました。
これは、「セクハラがなかった」というわけではなく、処分の重さが妥当かどうか が問題になった事案です。

懲戒処分の適法性は「バランス」が重要

懲戒処分が有効かどうかは、行為の内容と処分の重さがバランスが取れているか で判断されます。
今回の裁判では、以下の点を考慮して、停職1か月の処分は「重すぎる」と判断 されました。

  • LINEのやり取りはフランクな雰囲気で続いていた
  • 被害者のVが明確な拒絶を示さなかった(行為者が深刻に受け止めなかった)
  • D准教授には過去の懲戒処分歴がなかった
  • 一度のやり取りであり、継続的な嫌がらせではなかった

このような事情を踏まえ、「懲戒処分としては行き過ぎ」と判断され、停職1か月の処分は無効とされました。

ただし、セクハラは「セクハラ」として認定されている

ここで大切なのは、「処分の重さ」が問題になっただけで、D准教授の言動がセクハラに該当すること自体は認められている という点です。

性的な話題を振ったこと
女性を容姿で判断する発言をしたこと
デートに誘う発言をしたこと

これらは、一般的に女性が不快に感じるに足りる発言 であり、裁判所も「セクハラには該当する」と明言しています。

セクハラは処分の軽重にかかわらず「許されない」

今回の判決は、「セクハラをしても処分されない」というものではありません。
むしろ、セクハラはセクハラとして認定されるが、処分の重さは慎重に判断される ということです。

企業や大学がハラスメントを適切に処分するためには、「何がセクハラに当たるのか」 を明確にし、適正な処分基準を設けることが求められます。

増加するアカデミックハラスメント(アカハラ)

今回の事案は、大学内で起きたセクハラ であり、「アカデミックハラスメント(アカハラ)」の側面もある ことが特徴です。

なぜアカハラは増えているのか?

アカハラとは、教授や准教授などの立場を利用し、学生に対して不当な扱いやハラスメントを行うこと を指します。
特に、近年は セクハラを伴うアカハラ が問題視されており、その背景には以下のような要因があります。

指導者と学生の「優越的な関係」
 → 教授・准教授は単位を与える立場にあり、学生は逆らいにくい
「単位をあげる」「推薦状を書く」などを利用した誘い
 → 「言うことを聞けば、単位や推薦をあげる」という圧力が生じやすい
「単位を出さない」といった脅しが使われることも
 → 学生が不利な立場に追い込まれやすい

アカハラは社会問題化している

アカハラは、「教授 vs 学生」という構図のため、被害を訴えにくい という問題があります。
しかし、近年は大学側がハラスメント防止のための相談窓口を設置するなど、対策が進んでいる ため、一人で抱え込まずに相談することが重要 です。

ハラスメントに気づいたら、あなたがすべきこと

今回の事案では、セクハラ行為そのものは認定されたものの、懲戒処分の重さが争点となりました
つまり、「セクハラに当たるかどうか」と「どの程度の処分が適切か」は別問題 ということです。

大切なのは、被害にあったあなたが「おかしい」と思ったら、その気持ちを大切にすること。
「もしかして…?」と感じたら、それはハラスメントのサインかもしれません。

あなたがすぐにできる3つの行動

証拠を残す
 → LINEやメールのスクリーンショット、録音、メモなど、記録を残しましょう。

相談する
 → 大学のハラスメント相談窓口、人事部、外部機関(労働局、社労士、弁護士)に相談できます。

無理に我慢しない
 → 心の負担が大きいときは、休むことも選択肢。あなたの心と体を最優先にしてください。

あなたは一人じゃない

今回の事案のように、加害者が「セクハラのつもりはなかった」と主張しても、被害者が不快に感じたら、それはハラスメント です。
あなたが「嫌だ」と感じたことは、決して間違いではありません。

「こんなこと、相談していいのかな…?」と迷ったら、まずは信頼できる人や専門機関に話してみることが大切 です。
あなたの気持ちを軽くするためにも、今すぐできることから一歩踏み出してみてください。

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