「理不尽なクレームに耐えるのが仕事?」
「お客様だからといって、何を言っても許される?」
職場での カスタマーハラスメント(カスハラ) に悩んでいる方は少なくありません。前回の記事では、カスハラの実態や、被害に遭ったときの具体的な対処法、そして会社に対策を求める方法について解説しました。
「我慢し続けるしかない」なんてことはありません。
あなたの苦しみは正当なもの であり、適切な対策をとることが大切です。
しかし、カスハラは 個人の努力だけでは防ぎきれない のが現実。 職場全体での対策 こそが、被害を未然に防ぐカギになります。
そこで、今回の記事では 「カスハラを未然に防ぐ職場づくり」 に焦点を当てて、
✅ 企業が取るべき具体的な対策
✅ 労働者が安心して働ける環境の整備方法
を解説していきます。
あなたの職場も「カスハラのない環境」に変えていくことができるかもしれません。
泣き寝入りせず、 より良い職場環境を目指すためのヒント を一緒に考えていきましょう。
カスハラを未然に防ぐ職場づくり①:会社の責任と取り組みの重要性
カスハラの被害を防ぐためには、 「個人で対処する」だけでは不十分 です。
企業全体で 未然に防ぐ仕組みを作ること が、働く人々の安全を守るうえで不可欠です。
企業がカスハラ対策をする責任
2022年、厚生労働省は 「カスハラ対策の指針」 を策定し、企業に対して 労働者を保護する義務がある ことを明確にしました。
これは 「カスハラも職場のハラスメントの一種」 として位置づけられたことを意味します。
企業が適切な対策を怠り、従業員がカスハラによって 精神的苦痛を受けた場合、会社の安全配慮義務違反が問われる 可能性もあります。
そのため、企業は「被害が発生してから対処する」のではなく、 カスハラが発生しにくい環境を整えることが重要 です。
企業が取るべき3つの基本対策
カスハラを未然に防ぐために、企業が行うべき対策は主に 3つのポイント があります。
(1)企業としての「対応方針」を明確にする
→ 企業として「カスハラは許さない」というスタンスを明確にし、社内規程や就業規則に盛り込む。
(2)従業員が安心して働ける「社内体制」を整える
→ クレーム対応のルールを決め、従業員が1人で抱え込まない仕組みを作る。
(3)社外への「周知・啓発」を徹底する
→ 顧客に対して「従業員の安全を守るためのルール」を提示し、悪質なクレームは対応しないことを周知する。
カスハラを未然に防ぐ職場づくり②:具体的な制度とルールの整備
カスハラを防ぐためには、 企業が明確なルールを定め、それを徹底すること が不可欠です。
ここでは、 実際に企業が導入できる具体的な制度やルール について解説します。
カスハラ対応の「社内ガイドライン」を策定する
企業として 「どこからがカスハラか」「どのように対応するか」 を明文化し、従業員が迷わず行動できるようにします。
【ガイドラインの主な内容】
✅ カスハラの定義(例:暴言、過剰な要求、威圧的態度など)
✅ 「対応しなくてよいケース」の明確化(例:人格否定、業務外の要求など)
✅ カスハラ発生時の基本対応フロー(例:1人で対応せず、上司や専門部署へ連携)
💡 ポイント
👉 「お客様だから仕方ない」という曖昧な対応を避けるため、 具体例を交えたルールを作成 する。
👉 従業員に研修を実施 し、ルールを徹底する。
クレーム対応の「エスカレーション体制」を整備
従業員が1人でクレーム対応を抱え込まない ために、 対応の流れを明確化 します。
【エスカレーションの仕組み】
🔹 第1段階:対応マニュアルに沿って、従業員が一次対応。
🔹 第2段階:対応困難な場合は、上司または専用窓口へ報告。
🔹 第3段階:悪質なケースは、法務・総務部門と連携し、対応方針を決定。
💡 ポイント
👉 「このレベルのクレームはどこに報告すべきか」 を明確にし、迅速な対応を可能にする。
👉 専用窓口(例:カスハラ相談室) を設置し、適切な対応をサポートする。
悪質クレームに対する「対応方針」を明確にする
「悪質なクレームには対応しない」 という企業方針を明示し、従業員が毅然と対応できる環境を作ります。
【具体例】
✅ 「暴言・威圧的な言動があった場合、対応を中止する」ルールを設定
✅ 「カスハラ行為を繰り返した場合、法的措置を検討する」 ことを周知
✅ 店舗・オフィスに 「お客様へのお願い(迷惑行為への対応)」 を掲示
💡 ポイント
👉 企業として従業員を守る姿勢を示すことで、被害の抑止につながる。
👉 「お客様第一」の方針と、従業員の安全を両立させるバランスが重要。
カスハラ対策は、企業と従業員の未来を守るために不可欠
カスタマーハラスメント(カスハラ)の問題は、今や多くの企業が直面する深刻な課題となっています。
顧客対応をする現場の従業員にとって、 「お客様第一」と「従業員の尊厳」のバランス を取ることは容易ではありません。
一方で、企業側も 「どこまで対応すべきか」「線引きをどうするか」 という難題に直面しています。
しかし、 「お客様だから何を言っても許される」という考え方は、もはや時代遅れ です。
企業が従業員を守る姿勢を示し、明確なルールを設けることが、 カスハラを未然に防ぐ最も効果的な手段 となります。
📌 今後の課題:カスハラ対策は「運用」と「定着」が鍵
カスハラ対策のルールを策定しても、それが 現場で機能しなければ意味がありません。
多くの企業では、対策を打ち出しても、 「実際に現場で使えるものになっているか?」 という点で課題を抱えています。
例えば…
✅ ルールはあるが、従業員が知らない・活用できていない
✅ 管理職の理解が乏しく、部下がカスハラを我慢させられている
✅ 「お客様との関係が悪化するのでは?」と企業側が強い対応をためらう
こうした問題を解決するには、 「ルールを形骸化させない仕組み」 が必要です。
社内研修や、定期的なフィードバックの仕組みを取り入れ、 実際に運用できるルールとして定着させる ことが不可欠でしょう。
これから悩む人へ:あなたが「我慢し続ける必要」はない
カスハラの被害にあっても、 「仕事だから仕方ない」「自分がもっと上手く対応できれば…」 と、一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。
しかし、 あなたが耐えることが正しいわけではない のです。
✅ 「カスハラにあたるかもしれない」と思ったら、すぐに相談すること
✅ 会社が守ってくれない場合は、労働組合や外部の相談機関を利用する
✅ 企業側にも「毅然とした対応を取る責任」があることを知る
特に、 「カスハラを許さない」企業文化を持つことは、結果的に企業の信頼向上にもつながります。
従業員が安心して働ける環境を作ることは、サービスの質を向上させ、 「良質な顧客」との関係を築くことにもつながる のです。
まとめ:カスハラを「当たり前」にしない社会へ
カスハラは、個人の努力だけでは解決できる問題ではありません。
企業、社会全体が 「従業員の尊厳を守る」 という意識を持ち、具体的なルールを整備し、適切に運用することが不可欠です。
✔ 企業は、従業員を守るためのルールを策定し、運用する責任がある
✔ 従業員は、一人で抱え込まず、相談・報告をすることが大切
✔ 社会全体で「お客様だから何をしてもいい」という考えを変えていく必要がある
カスハラの問題に悩んでいる人は、 決して一人で抱え込まず、適切な対処を考えましょう。
そして、企業側も 「従業員の安全なくして、良いサービスは生まれない」 という視点を持ち、カスハラ対策に真剣に取り組むことが求められています。
「お客様は神様」ではなく、 「お客様も従業員も、対等な人間」 です。
働く人が安心できる環境を作るために、 企業も社会も変わるべき時が来ています。