【徹底解説】どうしたら会社をやめられる?会社から退職できない悩みを解消する具体的な対策

「もう限界…」そう思って退職を申し出たのに、会社から「君が辞めたら誰が仕事をやるんだ?」「損害が出たら責任を取れるのか」と圧をかけられたら、どうしますか?実は、こうした会社の対応は法律違反の可能性があります。退職は労働者の権利であり、どんな理由があっても辞める自由は保障されています。

今回の記事では、実際に私が社労士として相談を受けた事例をもとに、「退職の自由」について詳しく解説します。長時間労働や低賃金に悩み、心身ともに追い詰められている方は少なくありません。そして、退職を阻む会社の態度に不安や恐怖を感じる人もいるでしょう。しかし、知識を持つことで、必ず前に進む力が湧いてきます。

この記事を読むことで、あなたは退職に関する法律の基礎を知り、会社とどう向き合うべきかがわかるようになります。あなたの人生を守るために、一歩を踏み出すきっかけをつかんでみませんか?

労働者には「辞める自由」がある!どんな理由でも会社を去れる権利

労働者から「会社から辞めさせられる」という相談はよくありますが、「会社が辞めさせてくれない」というのは稀なケースです。結論から言うと、労働者には「辞める自由」がきちんと法律で守られています

たとえどんな理由であっても、「この会社は自分に合わない」と思えば、縁を切ることができます。会社に対して拘束されることはありません。これは労働者に認められた当然の権利なのです。

辞める自由、つまり「退職の自由」が認められている背景には、憲法で守られている「職業選択の自由(憲法第22条)」や「奴隷的拘束の禁止(憲法第18条)」があります。これらの基本的な人権によって、労働者は自分の意思で働く会社を選べるし、もし合わなければ辞めることができる権利が守られているんです。

「退職の種類」を徹底解説!会社との縁が切れるタイミングとは?

退職と一言で言っても、その方法にはいくつか種類があります。

  • 辞職
    労働者が自分の意思で一方的に会社との契約を解消することです。いわゆる「会社を辞めます」と言って実行する形ですね。
  • 解雇
    会社が一方的に労働者との契約を解消することを指します。ただし、解雇には厳しいルールがあり、会社が自由にできるものではありません。
  • 合意解約
    労働者と会社が話し合い、双方の同意で契約を解消する方法です。労働者から申し出る場合は「依願退職」、会社から申し出る場合は「退職勧奨」と呼ばれることが多いです。

これらすべてに共通しているのは、「労働契約が解消される」という点です。つまり、退職のタイミングで会社との縁が切れ、そこからはお互いに義務を負わなくなります。

退職の場面では、まず会社に退職の相談をするのが一般的です。会社が引き留めることはあるかもしれませんが、法的な拘束力はなく、最終的には退職を認めざるを得ません。そのため、多くの場合、話し合いによる退職(合意解約)が行われます。

しかし、今回のように会社が話し合いに応じず、承諾を得られない場合は、退職届を提出し、一方的に辞職することが可能です。重要なのは、どの方法を選んでも「退職の効果は法律上発生する」という点です。退職届を出せば、その後は法律上、自由な道を歩むことができるのです。

退職の効力が発生するタイミングとは?正社員と契約社員で違うポイントを解説!」

退職届を出したけど、「具体的にはいつ会社と縁が切れるのか?」という疑問を抱く方も多いでしょう。実は、正社員(期間の定めがない雇用)と契約社員(期間の定めがある雇用)では、退職の効力が発生するタイミングに違いがあります。
※法律の部分は飛ばして読んでも理解できるように説明しています。

正社員(期間の定めがない雇用)の場合

正社員の場合、退職の自由は民法第627条第1項で保障されています。

民法
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

つまり、正社員が退職を申し出た場合、そこから2週間後には労働契約が終了し、会社との縁が切れる仕組みです。ここで重要なのは、「退職の理由に関係なく、2週間の予告期間さえ守ればいつでも辞められる」ということ。これが労働者に認められた退職の自由です。

ここで、ある疑問を持たれた方もいるかもしれません。「私の会社の就業規則では、『退職届は1ヶ月前に提出すること』となっている」と思われた方がいるかもしれません。確かに、就業規則でそのような定めをしている会社も存在します。ですが、その場合でも退職の意思表示が効力を持つタイミングには影響があるのか、については別のポイントで考えるべきです。詳しくは、こちらのブログ記事で解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。

ちなみに、この条文には主語が「当事者」となっているため、一見すると会社も労働者を自由に解雇できるように思えます。しかし、実際にはそう簡単にはいきません。
会社が労働者を解雇するには、民法ではなく労働基準法や労働契約法、また判例によって厳しく制限されています。これは、労働者が経済的・社会的に弱い立場にあることから、解雇に正当な理由が求められるためです。
※別のブログで詳細に説明する予定です。

契約社員(期間の定めがある雇用)の場合

アルバイトやパートなど、期間が決まっている場合、正社員とは少し違ったルールが適用されます。この場合、契約期間中の労働契約には原則として拘束力があります。これは、契約期間を守ることが雇用関係の基本的なルールだからです。

民法
(やむを得ない事由による雇用の解除)
628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

法律上、期間の途中で辞職できるのは「やむを得ない事由」がある場合に限られます。では、「やむを得ない事由」とは具体的にどのような場合を指すのでしょうか?

  • 賃金未払い:給料が支払われない場合。
  • 職場の問題:深刻なパワハラや劣悪な労働環境がある場合。
  • 健康問題:病気や怪我、または家族の介護が必要な場合。
  • 学業との両立が難しい場合:特に学生アルバイトの場合、本業である学業に支障が出るような状況。

上記のような理由があれば、契約期間の途中でも辞職することができます。ただし、これらの事由は柔軟に解釈されることが多いため、自分の状況が「やむを得ない事由」に該当するか迷った場合は、専門家に相談するのが安心です。

ちなみに、この条文は正社員にも適用されるので、上記のような「やむを得ない事由」がある場合には、2週間の期間を経過しなくても、直ちに辞職できます。

契約社員の例外

3年という期間を定めて雇用契約を結んだ場合、3年間の間に上記のような理由がなければ辞職できないのでしょうか?実は、そうではありません。労働基準法によれば、この場合、契約開始日から1年が経過すれば、労働者は「やむを得ない事由」がなくても退職を申し出ることができるとされています。つまり、1年が経過すれば、正社員と同じ扱いとなり、退職の自由が認められることになります。
ただし、このルールは専門職労働者や60歳以上の労働者を対象とする契約には適用されないため、その点は注意が必要です。

労働基準法
137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

知っておきたい「損害賠償」のリスク

契約期間中に「やむを得ない事由」が認められないまま、労働者から一方的に辞職した場合、会社が損害賠償を請求する可能性があります。労働者が経済的な負担を負うリスクもありますので、注意が必要です。ただ実際、損害賠償が認められるためには、労働者の辞職と会社の損害の間に相当な因果関係があること等が必要で、実際に損害賠償が認められることは稀だと思います。

労働条件が契約と違う場合は即時退職が可能

労働基準法第15条には、契約時に決めた労働条件が実際と違う場合、すぐに契約を解除できるというルールがあります。これは、労働者を守るための大事なルールで、正社員でも契約社員でも使えます。もしも「思っていた働き方と違った…」と思ったときには、この規定を活用して、無理なく契約を終わらせることができます。

あなたの働き方を守る!強制労働禁止のルールとメリット解説

退職の自由が認められている理由、それは「不当な人身拘束を防ぐため」です。働くかどうか、そして辞めるかどうかは、あくまで労働者自身が決めるべきことであり、これを無理やり縛りつける行為は認められません。たとえ最初に労働契約を自分の意思で結んだ場合でも、その後に「退職したい」「休みたい」という意思が尊重される必要があり、この権利を守ることで、労働者は不当な圧力や拘束から解放され、自由な選択ができるようになります。この趣旨を明確に示しているのが、労働基準法第5条「強制労働の禁止」です。

労働基準法
5条
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

この法律は、労働者の身体的・精神的な自由を守ることを目的としています。たとえば、以下のようなケースが該当します:

  • 暴力や脅迫で労働を強いる
  • 長期の契約を理由に退職を阻む
  • 「退職したら損害賠償を請求する」と脅す

これらはすべて、労働基準法第5条が禁止する行為です。

強制労働が認められた場合のペナルティ

このルールに違反した場合は、「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」という厳しい罰則が科されます。つまり、やりたい放題の会社も、この法律には逆らえないということです。

精神的な圧力も「強制労働」に該当する?

法律の中で問題になるのは、「精神的・身体的な自由を不当に拘束する手段」って具体的にどんな状況なの?という点です。これには、明らかな暴力や脅しだけでなく、精神的な圧力も含まれます。たとえば、「辞めたら他の社員に迷惑がかかるぞ」と繰り返し責め立てたり、「辞めるなんて無責任だ」と心理的なプレッシャーをかける行為もアウトです。また、労働者が自由に退職できないようにする契約内容も「拘束」として問題視されます。

・「精神又は身体の自由を拘束する手段」とは、精神の作用又は身体の行動が何らかのかたちで妨げられる状態を生じさせる方法をいう。
・「不当」とは、本条の目的に照らし、かつ、個々の場合において、具体的にその諸条件をも考慮し、社会通念上是認し難き程度の手段の意であり、したがって、必ずしも「不法』なもののみに限られない。
・「労働者の意思に反して労働を強制してはならない」とは、最初は自由意思により労働契約を締結したが、その労働者が離職又は休業を希望するのにその意思を抑圧して労働を強制することも含まれる。

厚労省労基法コンメンタール

強制労働に当たれば労働基準監督署が動きます

今回の会社の対応も、「精神的な圧力」を通じて退職を阻んでいるように見えます。このような行為は、単なる不当ではなく、労働基準法第5条に違反する可能性が高いと言えます。

労基法違反は、労働記基準監督署マターとなっています。上記のように労基法違反には罰則があり、監督署には警察と同じような権力が与えられていますので、まずは相談しましょう。

【重要】辞職の意思を明確に伝えること

実は今回のケースには、少し特殊な事情がありました。それは、まだ明確に会社へ退職の意思を伝えていない可能性があるという点です。相談者の話を聞くと、辞めたいとは思っているが、会社の精神的な圧があって「退職したい」とはっきり明言していないようなのです。

このような場合、会社側から「任意で引き続き勤務してもらっているだけであり、退職の意思表示は受けていない。したがって強制労働にはあたらない」という反論をされるリスクがあります。

そのため、まずは退職の意思を明確に会社に伝えることが重要です。

  • 書面やメールを使い、退職の意思を文書化する
  • 音声録音を活用し、口頭で意思を伝えた際の記録を残す

上記のような、何らかの証拠を残せる形で退職の意思を明確に伝えることで、権利をしっかりと主張できる準備が整います。

まとめ

退職は労働者に認められた大切な権利であり、どんな理由であっても自分の意思で会社を辞める自由があります。会社が退職を阻む行為は法律違反に該当する場合があり、労働基準監督署に相談することで解決を図ることができます。

今回のケースのような会社と縁を切るためには、まずは退職の意思をしっかり固め、それを明確に会社へ伝えることです。その上で、万が一会社から不当な圧力を受けた場合は、労働基準監督署や専門家に相談することで、安心して次のステージに進めるでしょう。あなたの人生を守るため、勇気を持って一歩踏み出してみてください!

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